研究実績の概要 |
悪性腫瘍などの病変部に光線を照射する光線力学療法(photodynamic therapy: PDT)は, 腫瘍組織に対する低侵襲治療の一種であり, 腫瘍細胞へ特異的な集積性を持つ光感受性物質を励起することで実現できる. 日本では, 5-アミノレブリン酸(5-ALA)を用いた光線力学診断(photodynamic diagnosis: PDD)が, 脳腫瘍(2013年), 膀胱癌(2017年)に薬事承認されているが, 5-ALAを用いたPDTに関しては未認可である. 5-ALAはヘムの前駆体であり, 腫瘍細胞では光感受性物質であるプロトポルフィリンⅨ(PpⅨ)がヘムに代謝されずに蓄積することが報告されている. ALA-PDTが普及しない理由の1つに, 使用する波長によっては散乱減衰が大きく, 組織深達度が小さくなり細胞毒性が低いことが考えられる. 本研究では, 瞬間的に高度な光子密度と光強度の状況下で, 2つの光子が同時に分子に吸収され励起を起こす2光子励起現象に着目し, 2光子励起を利用したALA-PDTの確立を目的として, 高エネルギーパルスレーザーの照射システムを構築した. 5-ALA投与により赤色可視光線(波長630 nm連続波レーザー)を照射した際のPDTによる殺細胞効果が確認されている胃癌細胞株(MNK45, MKN45P, MKN7, NUGC-4)を用いて,2光子励起励起によるPDT/PDDの効果の検証を行った.その結果,波長1040 nm フェムト秒パルスレーザーの照射により,PpIXの2光子励起蛍光が観察され,PDD/PDTの効果が得られる可能性が示唆された.
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