研究課題/領域番号 |
21K08795
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55020:消化器外科学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
小嶋 克彦 信州大学, 学術研究院医学系, 講師 (80345743)
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研究分担者 |
竹下 敏一 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (60212023)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | S100A10 / 転移浸潤 / 細胞骨格 / ナノボディ / 細胞遊走 / 転移 / 胆管癌 / 腫瘍微小環境 |
研究開始時の研究の概要 |
胆管癌幹細胞にて発現亢進している分子としてS100A10を我々は発見した。次いで、同遺伝子産物が「造腫瘍性」とともに胆管癌の「細胞運動能」獲得に寄与することを見出している。そこで本研究では、①胆管癌のin vivoでの「浸潤転移」におけるS100A10の役割②浸潤転移に先立つ上皮間葉転換におけるS100A10の関与③分泌型S100A10が腫瘍微小環境に与える影響④S100A10を標的としたがん治療法の開発の可能性の4点に焦点を当てる。これらのアプローチによりS100A10による胆管癌悪性化に関する研究を展開し、胆管癌の革新的治療に資する基盤を構築する。
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研究実績の概要 |
S100A10の機能解析を行うにあたり、これまで主に遺伝子ノックアウトやノックダウンによる発現抑制を阻害手法として用いてきた。今年度において、がん治療薬剤としての将来的な応用を考慮し、ヒトS100A10を標的とした阻害ナノボディ抗体の取得を目指した。ナノボディ変異体を表面に発現する酵母ライブラリーに対し、蛍光ラベルした組換えS100A10蛋白質を作用させ、結合複合体をFACSにより選択濃縮した。選択5サイクル目のプールには、特に2種のクローンが濃縮されており、これらを抗S100A10高親和性ナノボディ抗体候補とした。続いて、これらをレンチウイルスベクターにより細胞内導入したところ、ナノボディ抗体を発現した大腸がん由来HCT116細胞では、ビメンチンフィラメントが細胞質内に拡がることができず、核周辺に凝集している様子が観察された。これは、ビメンチンの発現そのものが抑制される表現型を示すS100A10ノックアウト細胞の場合と異なるものであった。また、多核化した細胞の増加が観察されたことから、S100A10阻害による細胞分裂への影響が示唆された。一方、ナノボディ抗体転移阻害の評価を明確なものにするために既存の盲腸-肝転移マウスモデル系の高効率化を企画した。盲腸移植後に肝転移したマウス大腸がん由来CT26細胞を繰り返し盲腸移植することで高転移性細胞株の樹立を試みた。しかし、これまでのところ、移植の繰り返しは、移植部位での造腫瘍性さえ喪失させる結果となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒトS100A10に対する機能阻害性ナノボディ抗体を取得することができた。胆管癌、大腸癌に対する新規治療法へ向けた技術基盤としてのS100A10阻害剤の開発は、本研究の中心的課題のひとつとして掲げたものであり、これを達成することができた。盲腸-肝転移マウスモデルで使用する予定であった高転移性CT26細胞の樹立はできていないが、既存の細胞株を用いたマウスモデルでも十分評価可能である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度得られたナノボディ抗体のAAV発現系や細胞膜透過性ペプチド融合型の構築により、抗腫瘍薬剤としての展開を目指した研究を行う。S100A10がヒト、マウス間でアミノ酸配列が同一であることから、マウスがん細胞で観察されるナノボディ抗体の抗腫瘍作用、転移阻害作用は、ヒトがん細胞においても同様に発揮されることが期待できる。
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