研究課題/領域番号 |
21K08805
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55020:消化器外科学関連
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
春木 孝一郎 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (60720894)
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研究分担者 |
須田 亙 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 副チームリーダー (20590847)
田中 真二 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (30253420)
池上 徹 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (80432938)
古川 賢英 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (80624973)
白井 祥睦 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (10785364)
恩田 真二 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (10459620)
阿部 恭平 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (30751292)
後町 武志 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (40338893)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 膵臓癌 / 肝癌 / 腸内細菌 / オートファジー / ライソゾーム / 化学療法抵抗性 / 癌微小環境 / 腫瘍免疫 |
研究開始時の研究の概要 |
膵臓癌における化学療法抵抗性の改善は未解決の大きな課題である。近年、腸内細菌叢が悪性腫瘍の治療抵抗性に関係していると報告されているが、その分子メカニズムは未だ不明である。本研究では細胞質内に侵入した病原性細菌を捕獲、分解する生体防御機構の役割を担うオートファジーに着目し、膵臓癌において腫瘍内の腸内細菌が化学療法抵抗性に関与する分子メカニズムを解明し、腸内細菌をターゲットとした新規治療法開発を目指す。
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研究実績の概要 |
難治性消化器癌における腫瘍内腸内細菌とオートファジーの関係に着目した。膵臓癌において腫瘍内の腸内細菌の多様性、構成が予後と関係すると報告され、膵臓癌の進行や治療抵抗性において腸内細菌が何らかの影響を与えている可能性が強く示唆される. 一方で、オートファジーには細胞質内に侵入した病原性細菌を捕獲、分解する生体防御機構の役割もあることが報告されており、腫瘍内腸内細菌によりオートファジー活性が変化する可能性がある。まず膵臓癌切除検体を用いて、オートファジーのマーカーであるBeclin 1とLC3Bに関して免疫組織学的染色を行い、オートファジー活性を評価した。オートファジー活性は分布(Proportion score)、および強度(Intensity score)で評価した。生存解析ではBeclin 1、LC3B共に予後との有意な関係は示さなかったことから、オートファジー単独ではなく、オートファジーの誘導に関わる種々の因子との相互作用で癌微小環境において腫瘍の進展や抗癌剤耐性などに寄与している可能性が示唆された。また膵臓癌細胞株(PANC-1、MiaPaCa2)を用いて抗癌剤投与によるオートファジー活性の変化を確認した。塩酸ゲムシタビンを投与したPANC-1に対してマイクロアレイ解析を行い、オートファジー関連遺伝子や複数のライソゾーム酵素の遺伝子が発現上昇していることを同定した。さらに塩酸ゲムシタビン濃度依存的にオートファジー/ライソゾーム酵素が活性化することをLC3、SQSTM1/p62、酸性αグルコシダーゼ(GAA)のWestern blottingで確認した。GAA遺伝子の抑制により塩酸ゲムシタビンによる抗腫瘍効果が増強された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膵臓癌細胞株(PANC-1、MiaPaCa2)を用いて、塩酸ゲムシタビン投与による遺伝子変化をマイクロアレイ解析で同定した。その結果塩酸ゲムシタビン投与によりオートファジー関連遺伝子や複数のライソゾーム酵素の遺伝子が発現上昇していることが分かった。さらに、塩酸ゲムシタビンを様々な濃度で膵臓癌細胞株(PANC-1、MiaPaCa2)に投与し、LC3およびSQSTM1/p62、GAAのWestern blottingを行ったところ、塩酸ゲムシタビンは濃度依存的にLC3亢進、p62分解、すなわちオートファジーを亢進させ、ライソゾーム酵素を活性化させることを確認した。オートファジーの本体であるライソゾーム酵素(GAA)を阻害することで塩酸ゲムシタビンの細胞増殖抑制効果が増強し、アポトーシスが誘導されることが分かり、オートファジー/ライソゾーム酵素は膵臓癌における増殖・進展、抗癌剤耐性に関与していることが分かった。膵臓癌切除検体を用いて、Beclin 1とLC3Bの免疫組織学的染色でオートファジー活性を評価したが、予後との関係は認めなかった。
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今後の研究の推進方策 |
膵臓癌切除検体から腫瘍および正常膵のDNAを抽出し、組織内の腸内細菌の網羅的解析を16S rRNA解析を用いて行い、正常膵をコントロールとして腫瘍内に多く存在する腸内細菌を同定する。同定された腸内細菌は同一検体から抽出したDNAを用いたリアルタイムPCRで妥当性の検討を行う。さらに同定された腸内細菌と膵臓癌細胞株(PANC-1、MiaPaCa2)を共培養し、特にオートファジー活性に着目しマイクロアレイ解析を行う。この結果と抗癌剤投与によるマイクロアレイ解析を統合解析することで、腸内細菌がオートファジーを介した抗癌剤耐性に関わる標的遺伝子を同定する。さらに難治性癌である肝細胞癌における腫瘍内腸内細菌の同定も行い膵臓癌と比較する。
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