研究課題/領域番号 |
21K08807
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55020:消化器外科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
緑川 泰 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 病院 総合外科部, 部長 (10292905)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 肝細胞癌 / WNTパスウェイ / ベータカテニン / E-カドヘリン / 細胞悪性度 / 多段階発がん / 次世代シーケンサー |
研究開始時の研究の概要 |
早期肝がんで既にCTNNB1などのドライバー変異が高頻度に認められる一方で、WNT下流遺伝子の発現は変化せず、WNTパスウェイではbetaカテニンの変異に加えてCDH1のプロモータ領域のメチル化による発現低下がbetaカテニンの核移行に必要であることを報告した。本研究ではbetaカテニンの変異を含む肝がん細胞株と野生型細胞株にそれぞれCDH1を過剰発現、ノックアウトすることによりbetaカテニンの核移行の変化が生じ、その結果下流遺伝子が活性化するかどうかを観察する。さらに細胞増殖能・遊走能・浸潤能などへの影響を明らかにし、WNTパスウェイ活性化のためのセカンドヒットを探求する。
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研究実績の概要 |
本研究開始後から一昨年度までにベータカテニンの遺伝子異常の有無を5種類の細胞株でシーケンサーにより確認し、以後の実験を行った。 ベータカテニンmut:HepG2, Hep3B, PLC/PRF/5, HLE ベータカテニンWT: Huh7, SH-Hep1 pCDH-EF1-T2A-Puro(レンチウィルスベクター)を用いてCDH1を安定的に発現する細胞を作成し(免疫染色によりE-カドヘリンの膜への局在及びベータカテニンの核への移行を確認済)、これらの細胞(ベータカテニンWT: Huh7, SH-Hep1)を用いてエクソン3が欠失するCTNNB1 mut(HepG2よりサブクローニング)をトランスフェクションした。逆にこれらのDNA導入した細胞株(ベータカテニンmut:HepG2, Hep3B, PLC/PRF/5, HLE)についてsiRNAによりCDH1をノックダウンすることによりカテニンの核への移行を免疫染色法にて確認した。 上記で作成した肝がん細胞について、今年度中にRNAシーケンスによりWNT下流遺伝子の発現レベルの変化、WNTパスウェイの活性化を確認する予定である。解析にはパスウェイ解析を行い、単なる発現変化のみでは確認できないいkey moleculeを同定する。さらに、上記で作成した細胞株についてそれぞれカドヘリン発現の有無で細胞 殖能、細胞遊走能、細胞浸潤能などを比較し、ベータカテニンとE-カドヘリンが肝がん細胞の増殖において占める役割などを同定し、ベータカテニンの変異があるにもかかわらず下流遺伝子の活性化が認められない状況について過去のシーケンスデータとの整合性を探求してゆく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナの流行により海外渡航が制限されたため、国際学会への出席が予定通りに行われず情報交換や試薬および細胞の提供などが遅れたため。また、勤務する病院がコロナ患者対応をしていたため、臨床業務に時間が割かれ、細胞培養やシーケンスなど、まとまった時間を要する実験の遂行に支障があり、研究遂行が当初の計画通りには進行しなかった。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに作成したベクター 細胞株について、シーケンスや局在を確認し、2024年度以降の実験に使用可能である状態である。今後は臨床検体を用いた次世代シーケンサーの結果について、そのメカニズムを解明する実験を行い、ベータカテニンの変異に加えてE-カドヘリンの異常がセカンドヒットとして必要であるかどうか、さらに実際にWNT 路の活性化が起こることにより細胞が悪性化し進行度の遅い早期肝がんから進行度の早い古典的肝癌へと ステップワイズに進展してゆくかどうかについて、肝癌細胞を用いて実験をおこない、in vitroと実際の生体内で起きている肝がん進展のメカニズムの解明を行うとともに、その研究課程で明らかになるゲノム変化に着目して新規の肝がんに対する分子標的治療へと臨床応用への可能性を探求してゆく。
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