研究課題/領域番号 |
21K08831
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55030:心臓血管外科学関連
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
柴田 怜 久留米大学, 医学部, 助教 (40899697)
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研究分担者 |
青木 浩樹 久留米大学, 付置研究所, 教授 (60322244)
古荘 文 久留米大学, 医学部, 助教 (80597427)
田山 栄基 久留米大学, 医学部, 教授 (90281542)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 免疫グロブリン / フィブリン / B細胞 / アディポネクチン / 大動脈解離 / 炎症 / 血液凝固系 / 免疫複合体 |
研究開始時の研究の概要 |
大動脈解離は大動脈壁の破壊が突然起こり急速に進行する疾患である。しばしば突然死を起こし、致命率が高い急性期を乗り切っても長期的には半数の症例で大動脈壁破壊に伴う合併症が起こる。 申請者らは解離病態解明を目指した研究を進める中で、解離に先立って血液凝固系で作られるタンパク質(フィブリン)が免疫系を活性化し大動脈壁を破壊する可能性が示された。 本研究では、フィブリン沈着と免疫系活性化の関連を明らかにし、解離病態における組織破壊のメカニズムを解明する。本研究の実施により大動脈解離病態の活動性を診断する指標が得られると期待される。さらに治療的な応用も可能になると期待される。
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研究実績の概要 |
申請者らは大動脈解離病態の解析を進める中で、解離モデルマウスにおいて解離刺激を加えたマウス大動脈組織の解離易発症部位では発症に先立ってフィブリンおよび免疫グロブリンが沈着することを見出した。B細胞欠損マウスでは野生型マウスと比較して大動脈解離は軽症である一方、B細胞欠損マウスに投与した外因性免疫グロブリンは大動脈壁に沈着し解離は重症化した。これらのことから免疫グロブリンが解離促進要因であることが示された。 免疫グロブリンによる解離増悪のメカニズムを探索するためにトランスクリプトーム解析を行った。B細胞欠損マウスへの外因性免疫グロブリン投与は急性炎症応答に関わる遺伝子群が全般的に亢進していることが明らかになり、解離発症前から組織破壊が亢進することが示唆された。予想外なことに、解離刺激により脂肪酸代謝に関わる遺伝子群の発現が低下していることが示された。中でも血管保護因子として知られるアディポネクチンの低下が顕著であった。解離刺激後の大動脈組織の解析によりフィブリン及び免疫グロブリンとともに補体C3が沈着すること、またB細胞欠損マウスへの外因性免疫グロブリン投与は血中アディポネクチンを低下させることを見出した。傍大動脈脂肪組織のトランスクリプトーム解析では解離刺激によりT細胞の減少やマクロファージの増加を示唆する免疫応答が起こると同時に、本来の脂肪組織機能である脂肪代謝が抑制されることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
免疫グロブリン依存性の大動脈解離病態について、補体系の関与を示唆するデータを得た。また、解離病態に脂肪組織由来の血管保護因子アディポネクチンが関与する可能性、および傍大動脈脂肪組織が免疫応答の場になっているという予想外の病態を示すデータを得た。また免疫組織染色において、解離を発症した野生型マウスの大動脈組織では、解離刺激を与えていない野生型マウスと比較して、アディポネクチンが有意に減少していることが分かった。これはウエスタンブロットでも同様の結果を認めた。
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今後の研究の推進方策 |
これまで得た知見から解離刺激により大動脈組織で免疫グロブリンおよび補体系が関与する組織破壊応答が起こると同時に、脂肪組織の変調を介して血管保護因子の低下が起こると考えられた。今後は、大動脈組織と傍大動脈脂肪組織を1つのシステムとして捉え、免疫グロブリンを介する組織障害応答および脂肪組織が関与する組織保護応答の関連を検討する。とくに代表的なアディポサイトカインであるアディポネクチンとレプチンの機能解析を切り口として、脂肪組織と大動脈組織の相互作用の観点から解離病態の全体像に迫る。
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