研究課題
基盤研究(C)
ステントグラフト内挿術は大動脈瘤に対する低侵襲な治療法であるが遠隔期に瘤径が拡大する症例が散見される。我々はステントグラフト留置後追加手術時の検体の病理学的解析によって、壁の菲薄化を特徴とした瘤壁の構造変化を「stent-graft induced aortopathy(SGIA)」として報告してきたが、その詳細な病理学的背景は明らかになっていない。本研究では、位相差X線CT法によって大動脈瘤壁の密度解析や分子構造解析を行い、病理組織学的解析と符合させることでSGIAの詳細を示し、ステントグラフト留置という侵襲に対する生体反応を病理学的に明らかにしたい。
ステントグラフト内挿術(EVAR)は大動脈瘤に対する低侵襲な治療法として普及したが、遠隔期に瘤径が拡大する症例が散見され大動脈瘤破裂により失う症例もある。エンドリークがないにも関わらずEVAR後に瘤径拡大する症例を認めるが本研究で位相差X線CTを用いて解析するとEVAR後の大動脈壁は菲薄化しており密度も有意に低下していた。EVAR後に拡大した瘤壁の病理解析を行うとvaso vasorumが大動脈内膜側へ進展している事からステントグラフト挿入によって大動脈内膜側からの瘤壁への血流供給が遮断される事によって生じた虚血性変化が瘤径拡大の原因の一因になっていると考えられた。
ステントグラフト内挿術(EVAR)は大動脈瘤に対する低侵襲な治療法として普及したが遠隔期に瘤径拡大する症例が散見される。本研究によってエンドリークがなくてもEVAR後に瘤径拡大する症例の原因はステントグラフト挿入により引き起こされる大動脈壁の虚血が原因になっており、そのEVAR後の大動脈壁の構造変化をstet-graft induced aortopathy(SGIA)として提唱した。今後EVAR後の瘤壁の虚血性変化を強くきたす症例やその要因の検討ができればEVARの適応を検討する際に有用な判断材料になると考えられる。
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Journal fo Vascular Surgery - Vascular Science
巻: 4 ページ: 1-11
10.1016/j.jvssci.2023.100123