研究課題/領域番号 |
21K08851
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55030:心臓血管外科学関連
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
橋本 洋平 久留米大学, 医学部, 助教 (10811086)
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研究分担者 |
西田 憲史 久留米大学, 医学部, 助教 (50624508)
青木 浩樹 久留米大学, 付置研究所, 教授 (60322244)
田山 栄基 久留米大学, 医学部, 教授 (90281542)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 大動脈解離 / 炎症応答 / 炎症細胞 / 平滑筋細胞 / Syk / T reg / Treg |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は解離病態におけるTreg細胞の役割を明らかにし,Treg細胞の制御メカニズムをSykに着目して解明することである。近年の研究で、解離病態における組織破壊メカニズムは解明されつつある。しかし炎症応答の恒常性破綻メカニズムは未開拓の分野である。Treg細胞は、過度な炎症を抑制して生体の恒常性を保っている。本研究では、免疫制御分子SykがTreg細胞活性を維持し解離を抑制するとの独自の知見に基づき着想された。研究成果を解離病態に位置付けることで、Treg細胞を中心とした生体恒常性の破綻機構が解明される。さらにSykとTreg細胞の関連が明らかになることで生命現象に新たな視点が得られる。
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研究実績の概要 |
大動脈解離の病態を解明するために大動脈解離のマウスモデルを開発し種々の分子介入を加えてトランスクリプトーム解析を行った。得られたデータセットから解離刺激により発現が変化する遺伝子群として解離関連遺伝子群を定義した。ベイズ推計により解離関連遺伝子群相互の制御関係を推定したところ、複数のサブネットワークが相互に関連する制御構造が示された。各サブネットワークのアノテーション解析から、細胞増殖、炎症応答、細胞運動、形態形成、感覚器官に関わる遺伝子群の相互制御が解離の病態形成に関わることが示された。炎症応答における重要なシグナル伝達分子であるSykの阻害薬を解離モデルマウスに投与したところ解離の重症化、大動脈破裂による突然死の増加を認めた。Syk阻害薬を投与すると全身の炎症応答は減弱するが大動脈局所の炎症応答は亢進するというパラドキシカルな応答を示した。Syk阻害薬を投与した大動脈組織ではFoxp3の発現が減弱しており、制御性T細胞に代表される抗炎症応答が減弱していることが示唆された。これらの知見からSykは大動脈組織の抗炎症応答を制御する可能性が示唆された。 Sykが抗炎症応答を制御するメカニズムを検討するために、炎症細胞の主体であるマクロファージ特異的にSykの遺伝子を欠損するマウスを作成した。また大動脈組織の主成分である平滑筋細胞特異的にSykの遺伝子を欠損するマウスを作成した。マクロファージ特異的Sykノックアウトでは解離病態に変化を認めなかったが、平滑筋特異的SykノックアウトではSyk阻害薬と同様に解離病態の増悪を認めた。これらの知見から、平滑筋細胞のSykが抗炎症応答を制御する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス大動脈モデルにおける組織解析およびトランスクリプトーム解析からSykが全身と大動脈局所では、それぞれ炎症促進、炎症抑制という異なる役割を果たすことが示唆された。組織特異的ノックアウトの手法を使うことで炎症シグナル分子Sykが血管平滑筋細胞において大動脈壁の抗炎症応答を制御するという新たな知見を得た。
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今後の研究の推進方策 |
組織特異的Sykノックアウトが大動脈解離病態に及ぼす影響をトランスクリプトーム解析で把握する予定である。得られたトランスクリプトームのデータを申請者らが有するデータセットに追加して解析を進め、解離関連遺伝子群の発現制御ネットワークをさらに精緻化する予定である。大動脈組織および大動脈周辺組織の空間トランスクリプトーム解析を活性化Sykの局在と関連付け解離病態の包括的な理解を目指す。
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