研究課題/領域番号 |
21K08922
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55050:麻酔科学関連
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
甲斐 慎一 京都大学, 医学研究科, 講師 (30770177)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | 筋萎縮 / 吸入麻酔薬 / 敗血症 / ICU-AW |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、吸入麻酔薬が敗血症における筋萎縮に及ぼす影響を低酸素誘導性因子(HIF-1)活性化とミトコンドリア機能に焦点を当て解明することを目的とする。敗血症における全身炎症は重症患者にみられる筋力低下を特徴とする疾患(ICU-AW)を引き起こす。敗血症患者の筋組織ではHIF-1が活性化しており、ミトコンドリアを介したエネルギー産生を低下させる。申請者らの検討では、ICUで主に使用される静脈麻酔薬で認めないHIF-1活性化の抑制作用を、吸入麻酔薬で組織や培養細胞で認めた。吸入麻酔薬が敗血症における筋萎縮を軽減することが明らかになれば、ICU-AWの予防方法の確立に役立つことが期待できる。
|
研究実績の概要 |
吸入麻酔薬が敗血症における筋萎縮に及ぼす影響を検討するため、マウス由来筋芽細胞C2C12細胞を用いたin vitro実験から開始した。吸入麻酔薬であるセボフルラン(1-3%)およびイソフルラン(1-3%)をC2C12細胞に曝露させ骨格筋量の変化を検鏡にて細胞の直径を観察したところ、吸入麻酔薬の暴露は、C2C12細胞の直径を小さくした。これに対して、筋萎縮に関連する各種シグナル伝達経路の評価を行った。 蛋白合成経路を確認するため、AkT, mTOR, S6K蛋白の発現量およびリン酸化についてWestern blotting法を用いて解析した。吸入麻酔薬の暴露は、S6K蛋白のリン酸化を抑制するなど蛋白合成を抑制する働きを示した。蛋白合成の抑制に関しては、AMPKの活性化が関与していると考え検討を進めている。 また、蛋白分解経路を評価するためにユビキチンプロテアソーム経路の代表的なリガーゼであるAtrogin-1とMuRFの発現についてqPRとWestrn blottin法を用いてmRNAおよび蛋白を解析した。吸入麻酔薬の暴露はこれらの発現量を増加させており、蛋白分解も亢進している可能性が示された。そのため、この経路の検討を継続する一方でオートファジー経路など他の蛋白分解に関わる経路についても解析範囲を広げている。 in vitro実験においては、LPS刺激等において吸入麻酔薬はIl-6 mRNAの発現量を抑制するなどの結果は示せているが、筋萎縮に影響している結果は見られていない。今後は吸入麻酔薬による直接的な作用をin vitro実験で検討するとともにマウスを用いたin vivo実験を通して敗血症モデルに対する影響についても確認していく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
in vitro実験において、敗血症モデルとしてLPSを用いたが吸入麻酔薬を曝露させても筋萎縮に対する影響を観察することができなかった。これについては、LPS刺激では不十分であった可能性がある。現在、in vitro実験において敗血症を模するための代替案を検討しつつ、マウスを用いたin vivo実験での検討を準備中である。 既に吸入麻酔薬の暴露がC2C12細胞に影響を与えるという実験結果は示せており、マウスにおける実験系の確立とその検討を進める予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
in vitro実験については、既に吸入麻酔薬の影響を示せており今後もその機序の解明に注力していく。しかし、in vitro実験においては敗血症モデルとしてLPS刺激を用いたが効果が不十分と考えている。今後については、敗血症を模する他の方法を検討しつつ、マウスを用いた実験を開始していく。評価方法については、既に確立済みであり適した実験モデルを作成後随時解析を進めていく予定である。
|