研究課題/領域番号 |
21K08950
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55050:麻酔科学関連
|
研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
杉浦 健之 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (20295611)
|
研究分担者 |
太田 晴子 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (90534751)
近藤 真前 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 認知行動療法センター, 室長 (30625223)
酒井 美枝 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (80813120)
藤掛 数馬 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (00791162)
仙頭 佳起 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (80527416)
植木 美乃 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (40467478)
植木 孝俊 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (60317328)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | 体性感覚 / 脳血流 / 慢性疼痛 / 近赤外分光法 / 内受容感覚 / 注意 |
研究開始時の研究の概要 |
ぼんやり見ていると気がつかないが、集中すると細かな模様も細部まで見え、普段には感じていない心臓の拍動が、意識すると心拍も感じられる。慢性痛患者では、同様にわずかな体の変化を、腰など、様々な部位に、不快な感覚・情動体験(=疼痛)として感じているのではないかと考えた。そして、その背景には、感覚情報処理障害のような中枢神経機能変容機序が関与していると仮定した。本研究では、脳血流量の変化を指標とした慢性疼痛患者の脳機能評価を行うことを目的とし、器質的原因が同定できない慢性一次性疼痛における脳内感覚受容・認知の変容基盤の解明から、臨床現場で診断補助に活用できる検査方法の確立につながることを期待する。
|
研究実績の概要 |
本研究では、体性感覚や内受容感覚に注意が向いている際に現れる脳血流量の変化を指標とした脳機能検査の確立を目的としている。タスクとして脊髄のwind-up現象のような痛みの伝導増強機能を評価するとされるtemporal summation(TS)、下行性疼痛制御機能を評価するとされるcentral pain modulation(CPM)の評価を行なってきたが、より侵襲度の少ない触覚検査をタスクに用いることを検討した。18名の健常人(22-30歳、男性13名、女性8名)で、閉眼・意識を指先に集中した状態で触覚閾値を単独で測定したところ、中央値で左2.44N、右2.36Nであった。引き続き、触覚閾値測定を行う際、注意を向ける状況でNIRSを用いた脳血流量の変化を捉える実験を開始している。 一方、慢性疼痛患者における研究結果に与える影響を調査するため、外来を受診した患者の検査結果を評価した。2021年1月から27ヶ月の間に、いたみセンターへ紹介のあった患者のうち、ICD-11慢性疼痛の診断分類を行ったところ、慢性一次性筋骨格系疼痛の患者は最も多く54名、慢性二次性筋骨格系疼痛は41名であった。臨床研究を行うに際には、十分な患者数が見込まれ、患者対象として適切と考えられる。患者背景として、痛みに対する認知の指標となる痛み破局化スケールを調べたところ、慢性一次性筋骨格系疼痛の患者で34.7(7~52)、慢性二次性筋骨格系疼痛の患者で33.4(14~51)と、器質的要因の有無に関わらず、同程度に高い値を示していることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
痛み感覚・体性感覚検査として、定量的感覚検査のtemporal summation(TS)、central pain modulation(CPM)の評価を行なったところ、健常人におけるTS検査では、先行研究と同様の結果が得られた。しかしながら、CPM検査では、痛み強度の軽減が確認できる割合が少なかった。ピンプリックによる刺激方法で行っていることが異なる結果となっているかもしれない。刺激方法を変更して、再度測定を行う必要があったため、本年度は対象への負担を軽減する目的で、定量的感覚検査にはvon Frey Hairを用いた触覚閾値の測定を用いることを検討した。 前頭前野NIRS測定・評価に関しては、タスク(痛み・触刺激)を与える前段階にあり、まだ安定した計測結果が得られていない。測定機器の設定調整やプローブの変更などを検討するなど、測定を行う工夫を行った。健常人で、安定した結果が得られるように、機器設定や条件変更を加えてさらに検討が必要である。安定した計測ができるように、繰り返し測定を行なうことで測定信頼度を上げる訓練も行っている。 いたみセンターには、継続して年間100名以上の慢性疼痛患者が紹介されている。最近の受診記録から、慢性筋骨格系疼痛(一次性と二次性)の患者が最も多く受診することが確認でき、研究対象として適切な患者群と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
感覚検査(体性感覚検査)では、被験者への負担を考え、定量的感覚検査は触覚検査に変更し、概ね適切な刺激となると考えられる。脳波とNIRSの同時測定による研究では、負の相関が見られるとの報告が出されたため、NIRSのデータ単独でも十分評価できる可能性がある。そのほか、研究セットアップは問題なく、前頭前野NIRS (Near-Infrared Spectroscopy、近赤外分光法)を測定できているが、安定した信頼のおけるデータを獲得することが課題となっている。NIRS測定と結果評価に関しては、共同研修者、学外の専門家、学内で先行して研究を実施している研究者とのミーティングを開き、正確な測定を行うための注意点や結果評価方法について討論する。 慢性疼痛患者の背景調査で、精神疾患の併存が一般外来と比較しても多く含まれることが分かったが、うつ病やADHDの患者では、前頭野の血流に変化があると報告されている。注意が向いた場合の脳内反応記録を行う研究であるが、ICD-11による慢性痛患者の背景分類と同時に、精神科疾患併存の影響を考慮した評価が必要であると考えられた。また、今後は慢性痛の患者における、中枢性感作の評価も加えて評価する必要があるか検討を加えていく。
|