研究課題/領域番号 |
21K08987
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55050:麻酔科学関連
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
戸部 賢 群馬大学, 医学部附属病院, 講師 (90400770)
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研究分担者 |
須藤 貴史 群馬大学, 医学部附属病院, 講師 (60739621)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 徐放薬 / 局所麻酔薬 / 温度応答性 / 術後痛管理 / 術後痛 / 周術期管理 |
研究開始時の研究の概要 |
医用工学的手法であるDrug Delivery Systemを応用して、生体内分解材料を用いて長時間作用型鎮痛薬を作成し、単回投与で術後痛管理できる安全かつ強力な鎮痛方法を臨床応用できることを目的とする。薬剤としては局所麻酔薬やそれ以外の鎮痛薬を徐放化し、それらを組み合わせることでより少ない副作用で最大の効果を生み出し、安全で質の高い術後管理をできるようにしたい。
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研究実績の概要 |
これまではリドカインを用いたシート状の徐放薬の作成とそれを用いた動物実験・臨床研究を行ってきた。今後より臨床使用をイメージしやすい形を考えたときに注射可能な製剤化というものが挙げられて、それを目的として共同研究先を変更して徐放薬作成を行ってきた。関西大学化学生命工学部の大矢教授らのグループの持つ温度応答性ポリマーを用いてレボブピバカイン徐放薬作成に着手した。試作を重ねて、2日間程度ゆっくりレボブピバカインを放出し続ける徐放薬作成に成功した。徐放薬は室温においては液体で注射するのに適した剤型であり、体温程度になるとゲル化して投与部位周囲にとどまるのに都合の良い形態変化をするようなものができた。次にこれを用いた動物実験を計画した。ラットを用いて足底を1cmほど切開する術後痛モデルを用いてレボブピバカイン徐放薬の長時間効果と副作用の有無を検討した。手術直前にラットの坐骨神経周囲にレボブピバカイン徐放薬を投与し機械的刺激に対する逃避閾値を測定し、ポリマーのみ投与、臨床使用のレボブピバカインと比較検討した。さらに運動麻痺の持続時間を測定し、また投与部位周囲の病理組織学的評価を行い副作用の確認試験とした。結果としては、レボブピバカイン徐放薬群において長時間の鎮痛効果を確認でき、また目立った副作用は認めなかったが、病理学的には炎症細胞の浸潤を認めた。これらの結果を持って、海外の学会発表を行い、現在論文を投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レボブピバカイン徐放薬作成から動物実験に関してはおおむね順調に進展していると思われる。論文投稿後の査読者とのやり取りの中で追加実験を要する場面もあったが、それらを行うことで論文自体はブラッシュアップされて良いものになった部分も大きい。ただこれらの投稿作業が難航しており、いまだ論文アクセプトに繋がっていない点に関しては少し遅れている部分と言え、残念なところではある。特に病理学的評価の部分においては、炎症細胞浸潤範囲を定量化するような術があるようで、それらは想定していなかった部分であるが、そのようなことを今後考えつつさらなる研究のクオリティアップに変換していくようにする必要があるかもしれない。共同研究者である関西大学の先生ならびに当院病理学教室の先生には非常に高いサポートをいただきその部分は研究の推進力になっており、だいぶスピードアップさせていただいている部分と認識している。当院で担当しているタスクのところで若干の時間の浪費が惜しいところではあり、これから改善していくべき課題となる。
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今後の研究の推進方策 |
まずは今回行った温度応答性ポリマーを用いたレボブピバカイン徐放薬を使用した動物実験の結果をまとめて早くに論文としてアクセプトを勝ち取ることである。今後の計画も既に関西大学の大矢教授と打ち合わせを行っており、先方でさらに徐放期間を長めに薬剤の内包量を多めにアレンジした徐放薬作成に取り掛かっていただいている。薬剤作成ができた段階で同じようなラットの実験系かさらなる大動物での評価を行っていきたいと考えている。またステロイドやα2アゴニストを併用して薬剤の効果延長を検討し、単会投与で数日間の鎮痛効果を得られるように考えていきたい。またポリマーに対する生体反応として投与部位周囲の酸性化や炎症細胞の浸潤などを認めるため、それらを適切に評価する手法を検討し、かつそれらの反応を抑えられる対策についての議論も始める必要がある。炎症制御の意味合いからもステロイドの同時投与はいくつかの問題を解決してくれる可能性がある。一方で創部の感染などにも懸念点が残るためさらなる検討が必要になることは間違いない。 これらを同時に進行しつつ、超音波ガイド下で手術創部を支配する神経周囲に単回投与で数日間の術後鎮痛全てをまかなえるような安全で効果的かつ簡便な鎮痛方法の開発へ繋げていくことを目標とする。
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