研究課題/領域番号 |
21K08988
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55050:麻酔科学関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
奥田 洋明 金沢大学, 医学系, 准教授 (40453162)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 末梢神経系グリア細胞 / 疼痛 / 慢性痛 / 末梢グリア細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
痛みの原因となる疾患や傷害が治癒したにも関わらず、その後も痛みが続く状態は慢性痛と呼ばれ、成人の罹患率は1割を超える。現在、様々な治療薬が用いられているが、薬剤抵抗性や副作用などを示す患者が多く、その後、抑うつなどを引き起こして症状が複雑化することが問題となる。このような背景として、慢性痛の発症要因が多岐にわたり、その機序に関しても不明な点が多いことがあげられる。申請者は、慢性痛の動物モデルを用いて、神経障害時における末梢神経系グリア細胞の活動と痛み関連行動の相関およびグリア細胞における遺伝子発現変化を解析することにより、神経障害から慢性痛への移行や維持の新たなメカニズムの解明を目指す。
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研究実績の概要 |
Gfap-CreマウスとDREADD法を組み合わせて末梢神経系グリア細胞を特異的に活性化もしくは抑制したときの疼痛関連行動の変化を解析する予定であったが、Gfap-Creマウスの繁殖が出来なかった。従って、末梢神経系グリア細胞と感覚神経細胞との相互作用に関与する因子に焦点を当てて探索を行った結果、Hedgehog(Hh)シグナルが疼痛に関与していることが示唆された。神経因性疼痛モデル(SNT)作製後、末梢神経系グリア細胞においてHhシグナルのリガンドの一つであるsonic hedgehog(Shh)の発現の増加が認められ、一方、受容体の一つであるpatched1は感覚神経に発現していることが認められた。Hhシグナルの疼痛への関与を調べるため、SNTマウスにHhシグナルの阻害剤であるvismodegibを髄腔内投与したところ、濃度依存的に痛覚関連行動が抑制された。また逆に、naiveマウスにHhシグナルの活性化剤であるSAGを投与したところ、痛覚関連行動が誘発された。Shhの感覚神経への作用を初代培養細胞を用いて検討した結果、vismodegibの処置により感覚神経からのATPの放出及び感覚神経の自発活動の頻度が抑制された。以上の結果より、神経損傷後において末梢神経系グリア細胞でShhの発現が誘発され、感覚神経に作用してATPの放出を促しており、その結果、持続的な疼痛が起こっていることが示唆された。末梢神経系グリア細胞と感覚神経のHhシグナルを介した相互作用が疼痛の遷延化に関与していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Gfap-Creマウスの繁殖が出来なかったが、別のアプローチにより慢性疼痛時において末梢神経系グリア細胞と感覚神経との相互作用に関与する因子の一つを同定することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
Hhシグナルが末梢神経系グリア細胞と感覚神経系の相互作用の因子として機能し、疼痛を惹起していることが示唆されたが、どのような因子や環境が末梢神経系グリア細胞においてShhの発現を上昇させるのかは不明である。また、Shhは主にGFAPおよびs100b陽性のグリア細胞で発現上昇しているが、これら細胞がどのような性質を持つのか明らかではない。今後としては、第一に、どのような因子がグリア細胞においてShhの発現を誘導するのか、初代培養を用いて検討する。特に損傷後の感覚神経もしくはマクロファージなどの免疫細胞から分泌される因子を中心に検討を進める。
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