研究課題/領域番号 |
21K08995
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55050:麻酔科学関連
|
研究機関 | 三重大学 (2022) 岡山大学 (2021) |
研究代表者 |
賀来 隆治 三重大学, 医学系研究科, 教授 (50444659)
|
研究分担者 |
松岡 義和 岡山大学, 大学病院, 助教 (20509434)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
|
キーワード | 慢性疼痛 / グルタミン酸トランスポーター / 術後遷延痛 / 慢性痛 / 下行性疼痛抑制系 |
研究開始時の研究の概要 |
手術後に傷が癒えたにも関わらず長期間遷延する痛みは、生活の質を低下させる大きな要因であることが以前から知られているが、その詳細な病態の解明、痛みに対する有効な予防・治療法の開発は未だ不十分である。高齢化社会において手術を受ける患者数は増加しており、術後遷延痛を予防し、治療法の開発につながる病態解明が急務である。グルタミン酸トランスポーター1(GLT-1)はシナプス間のグルタミン酸の調節、つまり神経の興奮性に重要な役割を果たすため、その異常が慢性痛の病態に深く関与している。本研究では術後痛モデルラットを用いて脊髄GLT-1と術後遷延痛の関連を明らかにし、その病態の一部を解明することを目的とする。
|
研究実績の概要 |
Glutamate transporter-1(GLT-1) はアストロサイト特異的グルタミン酸トランスポーターであり、シナプス間隙のグルタミン酸濃度の恒常性を保つ。GLT-1 と慢性痛の関連として、in vitroで Primary astrocyte にα1受容体作動薬を投与すると用量依存性にGLT-1 発現が抑制すること、in vivoでmodified Spared Nerve Injury(SNI)モデルラッ トの両側脊髄でGLT-1 の発現が低下すること、両側脊髄でノルアドレナリンが一過性に増加すること、健側でも疼痛閾値の低下 (mirror image pain, MIP) が生じることが報告されている。 我々は昨年度、MIPの機序として脊髄アストロサイトの GLT-1 発現とアドレナリン受容体の関係を検討した結果、in vitroでは、ノルアドレナリン3μM投与下にフェントラミンを投与すると、GLT-1 発現は完全に回復したが、α1A, α1D 受容体阻害剤投与では、部分的な回復にとどまった。in vivoでは、モデル作成3日目に両足底の疼痛閾値低下を認め、α1受容体阻害剤200μg投与群では患側疼痛閾値の変化を認めなかったが、10日目の健側疼痛閾値は改善した。以上の結果を、Acta Med Okayama 2022 Vol.76, No3, pp.255-63に報告した。 その後、Spinal Nerve Ligation(SNL)モデルに対しても同様の実験を行い、脊髄における神経伝達物質であるBrain-derived neurotrophic factor(BDNF)の変化について検討を加えた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動物実験として、2つのラット術後痛モデルにおける脊髄GLT-1発現の変化、ノルアドレナリン量の定量およびアドレナリンα受容体阻害剤による術後遷延痛の変化を検討することを目的としている。足底筋膜切開による術後痛モデル(Brennanモデル)では術後5日で疼痛域値は回復するが、皮膚/筋肉切開および開創 (skin/muscle incision and retraction, SMIRモデル)では術後約3週間にわたり疼痛閾値の低下を示す。昨年度はこれらのモデルを用いた結果について学術論文として報告することが出来た。今年度はさらに慢性疼痛のモデルであるSNLラットについて同様の検討を行い、別の神経伝達物質であるBDNFの変化について検討を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度は慢性疼痛モデルに対して、アドレナリンα受容体阻害剤の効果を検討する予定である。ノルアドレナリン量の定量に加えて、神経伝達物質であるBDNFの発現変化について、タンパク質レベルのみならず、mRNAレベルでのより詳細な発現変化について検討する。また同モデルにおいて、長時間作用性局所麻酔薬ロピバカインの投与による遷延性疼痛の変化の検討、ならびに上記の生化学的分析を行う。 これらの結果について、学会発表ならびに論文作成を行う予定である。
|