研究課題/領域番号 |
21K09003
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55050:麻酔科学関連
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
青江 知彦 帝京大学, 医学部, 教授 (90311612)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | オピオイド受容体 / 小胞体ストレス / 痛覚過敏 / オピオイド耐性 / オピオイド / 化学シャペロン / 細胞内情報伝達 |
研究開始時の研究の概要 |
MOP細胞内情報伝達系とUPR細胞内情報伝達系にKDEL受容体を介したcrosstalkが存在するかどうかを検討する。輸送変異KDEL受容体D193NはGaqとSrcとの会合が欠損している。MOP発現培養神経細胞でKDEL受容体遺伝子をゲノム編集によってD193N変異体に変換するとMOP刺激でSrcの活性化が起こらなくなることが予想される。また、我々が作成したKDEL配列の欠損した変異BiPノックインマウスとD193N変異KDEL受容体トランスジェニックマウスでは、MOP 刺激でもSrcの活性化が起こり難く、オピオイド耐性や痛覚過敏が起こり難い事が予想される。
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研究実績の概要 |
オピオイド受容体 (MOP) は7回膜貫通型の複雑な構造を持ち、その立体構造の形成、細胞表面への輸送には小胞体機能が深く関与している。小胞体機能不全によって細胞内情報伝達の変化が生じ、MOP発現神経細胞のオピオイド刺激による細胞内情報伝達も影響を受ける可能性がある。小胞体機能を補完する小胞体化学シャペロンの投与は、小胞体ストレス反応の抑制、細胞内情報伝達の正常化、小胞体での機能的なMOPの立体構造の形成、細胞表面への輸送の促進を通じて, MOP発現神経細胞が関与する上行性痛覚伝達系と下行性疼痛抑制系の機能不全を解消して、オピオイド耐性や痛覚過敏を改善する可能性がある。本研究と並行して、実際にオピオイド投与によってオピオイド耐性や痛覚過敏が臨床的に観察されるかどうかを、倫理委員会の承認後にRCT臨床研究として行なっている。臨床的には通常の全身麻酔に投与する量のオピオイド投与によって、手術終了直後からオピオイド誘発性痛覚過敏が観察された。手術後の疼痛には手術侵襲に加えて、手術中に投与されたオピオイド製剤による、オピオイド誘発性痛覚過敏が関与していることが示唆された。本研究ではさらに、オピ オイドによる痛覚過敏の分子機構を培養細胞と遺伝子変異マウスを用いて、次世代シークエンサー技術による遺伝子解析やタンパク質のウエスタンブロットなどの分子生物学的解析を行なっている。野生型培養細胞SH-SY5Y細胞では、オピオイド受容体刺激による小胞体ストレス関連タンパク質の変化が観察されている。 また、野生型マウスでは、小胞体化学シャペロンの投与によって、オピオイドによる痛覚過敏が緩和される結果を得ている。今後培養細胞や小胞体分子シャペロン遺伝子変異マウスを用いて、 オピオイドによる痛覚過敏や耐性形成が実小胞体機能とどのように関連するのかをさらに検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
培養細胞での実験 ヒトKDEL受容体遺伝子は3種類報告されているが、主にKDELR1遺伝子由来の受容体が機能を担ってい る。CRISPER/Cas9システムによるゲノム編集によってKDEL受容体第7 膜貫通領域にある193番目のアミノ酸D (aspartic acid) をコードしているDNAを”GAT ”か ら”AAT ”に1塩基置換して、アミノ酸DをN (asparagine)に変異させた安定細胞株を作成する。KDEL receptor 1 Double Nickase Plasmidを利用する。 SH-SY5Y細胞はMOPを発現するヒト neuroblastomaである。SH-SY5Y 細胞とD193N変異SH-SY5Y細胞を培養し,刺激実験を行う。現在遺伝子導入によって変異細胞を昨年度から作成中であるが、手技的に難しく、熟練を要する。 マウスでの解析 野生型マウス (C57BL/6、10 週齢)に種々の薬剤を投与してオピオイド痛覚過敏形成を検討した。次に変異BiPノックインマウスでの痛覚過敏形成を昨年度に引き続き検討している。遺伝子変異マウスは自家繁殖しており、週齢、オスメスを揃えて必要数を確保するのに時間を要する。 また、COVID-19の流行により、実験環境、勤務状況、物品供給が円滑に進まず、様々な制約があった。
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今後の研究の推進方策 |
今までの実績、経験を活かして、当初の研究計画に沿って、研究を進める。また、並行して行なって来た臨床研究では手術麻酔終了直後からオピオイド誘発痛覚過敏が観察されたことから、培養細胞やマウスでも痛覚過敏の時間推移を観察する。SH-SY5Y細胞とD193N変異SH-SY5Y細胞を培養し,刺激実験を行う。また、野生型マウス と変異BiPノックインマウスに種々の薬剤を投与してオピオイド痛覚過敏形成を検討する。痛覚検査後に吸入麻酔下にこれらのマウスから脳、脊髄を採取する。 下行性疼痛抑制系経路において MOP発現神経細胞が集積する中脳水道周囲灰白質を含む脳幹部のKDEL受容体、小胞体分子シャペロンBiP、チロシンリン酸化Src、 チロシンリン酸化GSK3βの発現をウエスタンブロットで検討する。またMOP発現神経細胞におけるこれらの分子の細胞内局在を二重免疫蛍光染色で確認する。さ らに神経細胞とミクログリア、アストロサイトなどにおける神経炎症についても組織学的に検討する。一部の個体から得た脳、脊髄からはDNA、RNAを抽出し、次 世代シークエンサー技術による遺伝子解析を行う。
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