研究課題/領域番号 |
21K09026
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55060:救急医学関連
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
本澤 大志 横浜市立大学, 医学部, 助教 (90899147)
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研究分担者 |
西井 基継 横浜市立大学, 医学部, 講師 (20383573)
谷口 隼人 横浜市立大学, 附属市民総合医療センター, 講師 (40833306)
田村 智彦 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (50285144)
小川 史洋 横浜市立大学, 附属病院, 助教 (80383610)
竹内 一郎 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (90327346)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
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キーワード | ARDS / 肺胞洗浄液 / RNA sequence / RNA / 気管支肺胞洗浄液 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の新規性として、Single-cell RNA sequenceを用いてARDSの病態解析を試みるという点が挙げられる。 ARDSという病態すら明らかにされていない疾患の、肺障害を直接表すBALF検体を用いてSingle-cell RNA sequence解析を行う初めての試みである。
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研究実績の概要 |
急性呼吸窮迫症候群(Acute Respiratory Distress Syndrome: ARDS)は、致死的な臨床経過を呈し、救急集中治療診療において最も治療に難渋する代表的な疾患である。しかし、”未だにこの病態異質性は十分に理解されていない”。そこの臨床的課題を解決すべく、先行的に新型コロナウイルス感染症によるARDS患者及び非感染患者の肺胞洗浄液細胞におけるトランスクリプトーム情報を臨床情報と共に解析し、病態異質性の探索を行った。 得られた肺胞洗浄液に含まれる細胞からRNAの抽出を行い、全トランスクリプトーム情報の主成分分析により、ARDS患者をいくつかのクラスターに分類することができた。病態Aは、これまでの免疫応答亢進を主体とした病態である。即ち、気道線毛クリアランス機能の亢進を活用したウイルス感染とその拡散及びRHO-GTPase経路活性化による血管内皮バリア機能低下を介した免疫細胞の肺胞腔内への移動による免疫応答の亢進が、結果的にウイルスは排除するものの気道肺胞障害、ムチン産生亢進及び線維化による間質肥厚を促進し、物理的ガス交換障害を生じたことが考えられた。一方で、非典型的な病態Bとしては、感染ウイルスに対する気道線毛クリアランス機能の低下による肺胞への感染拡大と減弱した免疫応答により、ウイルス複製亢進に伴う過剰な異常タンパク産生亢進による小胞体ストレスと肺胞腔内溶血による遊離ヘムに対する免疫細胞を介した排除機構の低下を生じた。結果的にⅡ型優位の肺胞上皮細胞障害或いは脱落によるサーファクタント減少による肺胞虚脱からガス交換障害が生じたことが推察された。この分類と臨床情報との関連はさらに研究を重ねていく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
全トランスクリプトーム情報の主成分分析によりARDS患者を非感染患者から分別でき、さらにARDS患者をいくつかのクラスターに分類することができた。各クラスターの特徴を明らかとすべく、生物学的情報分析を行った結果、二つの異なる病態の存在を明らかとした。 病態Aは、これまでの免疫応答亢進を主体とした病態である。即ち、気道線毛クリアランス機能の亢進を活用したウイルス感染とその拡散及びRHO-GTPase経路活性化による血管内皮バリア機能低下を介した免疫細胞の肺胞腔内への移動による免疫応答の亢進が、結果的にウイルスは排除するものの気道肺胞障害、ムチン産生亢進及び線維化による間質肥厚を促進し、物理的ガス交換障害を生じたことが考えられた。一方で、非典型的な病態Bとしては、感染ウイルスに対する気道線毛クリアランス機能の低下による肺胞への感染拡大と減弱した免疫応答により、ウイルス複製亢進に伴う過剰な異常タンパク産生亢進による小胞体ストレスと肺胞腔内溶血による遊離ヘムに対する免疫細胞を介した排除機構の低下を生じた。結果的にⅡ型優位の肺胞上皮細胞障害或いは脱落によるサーファクタント減少による肺胞虚脱からガス交換障害が生じたことが推察された。 これらの結果と臨床情報の関連性を解析した結果、病態AとB間で年齢、性別、発症からBAL施行までの期間、血液検査所見(白血球数、リンパ球数、C反応性タンパク、D-ダイマー及び乳酸脱水素酵素等)、治療法(免疫抑制療法の使用率等)、人工肺使用率及び入院中死亡率に差を認めなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、現在までに得られた肺胞洗浄液に含まれる細胞の全トランスクリプトーム情報を元に、single cell RNA sequenceを用いた、細胞個別のトランスクリプトーム解析や、末梢血タンパクのプロテオーム解析により異質な病態を反映する生物学的マーカーを同定し、ARDSにおける病態の本質をとらえることで個別化治療の基盤構築を目指す。プロテオーム解析については、感染検体・非感染検体に関わらず統一されたプロトコルを用いて解析する。横浜市立大学福浦キャンパスP3レベル実験室でメタノール添加により病原微生物を不活化した後、解析まで-80℃で凍結保存し、MS分析のため等容量の8M尿素溶液を加えて変性させる。検体に対してプロテアーゼ消化を行い、液体クロマトグラフィーと質量分析計を用いてデータを取得したのち、その情報をデータライブラリーと照合することで、発現しているタンパク質を網羅的に解析する。
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