研究課題/領域番号 |
21K09028
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55060:救急医学関連
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
高野 博充 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (70410313)
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研究分担者 |
服部 友紀 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (90363936)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | EDH / 敗血症 / 肺動脈 / LPS / 内皮依存性過分極 / ARDS / EDHF / 循環 / 内皮依存性弛緩 |
研究開始時の研究の概要 |
敗血症などに合併して進行する急性呼吸窮迫症候群(ARDS)では、大量の炎症細胞やメディエーターが肺血管内皮細胞を傷害し、両側性肺水腫と肺血管抵抗の上昇を引き起こして肺高血圧を起こし呼吸不全に至る。肺血管抵抗上昇のメカニズムが不明で有効な治療法がない。血管抵抗の調節には、血管内皮細胞由来の一酸化窒素、プロスタサイクリン、血管内皮由来過分極因子(EDHF) が関与する。小径の血管ではEDHFの役割が重要であることかARDS病態では肺動脈EDHFが障害されていると考えられるので、本研究ではARDS病態下の肺血管抵抗上昇のメカニズムを肺細動脈でのEDHFに着目して解明する。
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研究実績の概要 |
ラットの肺動脈の膜電位測定方法の確立および内皮依存性過分極の観測を行った。氷冷したHEPES下でSDラットの肺動脈第3分枝から第6分枝を2 mmの長さに切り出した標本の膜電位測定を行った。1 μM アセチルコリン(ACh)により、nitro-L arginine(LNA)で抑制されない過分極反応(EDH)を示した。酸素を通気するとEDH反応が出ない標本もあったが、酸素を通気しないHEPESでは安定してEDH反応が得られた。このEDH反応は1 μM TRAM-34(中間コンダクタンスカルシウム活性化カリウムチャネル(IK)抑制剤)により消失した。また同じ条件でワイヤミオグラフによる張力測定を行ったところ、1 μM phenylephrine(phe)存在下に投与したAChによりニトロアルギニン非感受性の弛緩反応を安定して得ることができた。この弛緩反応もTRAM-34により消失したので、EDHによる弛緩であると考えられた。次にエンドトキシンモデルラットをSDラット尾静脈からLPSを5mg/Kg静注することにより作成し、LPS投与前(control)、投与3時間後(3HR)、翌日(DAY1)、三日後(DAY3)に肺動脈の血管反応を観察した。1μM pheは3HR以外の群では持続的な収縮を起こしたが、LPS投与群ではこの収縮は有意に減弱していた。DAY1では、LNAおよびphe存在下、1μM ACh投与による弛緩は減弱していた。この標本からはAChによる過分極反応も観察されなかった。DAY3ではこのLNA非感受性弛緩反応は増大し、TRAM-34(1 μM)によりほとんど抑制された。以上の結果から、肺動脈の収縮はLPSにより抑制されること、内皮からのNOによる弛緩反応がLPS暴露翌日には抑制されるが以後回復すること、これらは内皮依存性過分極を介するメカニズムであることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度まで安定したEDH反応が取れなかったが、標本作成中に標本を氷冷下に保つこと、標本への酸素の曝露量を減らすことにより安定した反応をとることができるようになった。また、モデル動物の系統を変えたところ、より安定した反応を得られるようになった。過分極反応を安定して測定できるようになったので、血管弛緩のメカニズムがEDHを介していることを確認できるようになった。昨年度試みたスライス標本では隣り合う気管支の運動の影響がノイズになったが、ワイヤミオグラフ法の適用によりその問題も解決された。
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今後の研究の推進方策 |
肺動脈張力のNOを介しない抑制性の調節機構がLPS曝露後3日目まで抑制されることが確認された。この弛緩反応の変化が内皮依存性過分極を介するのかいなかを膜電位測定法によりあきらかにする。また、前年までにあきらかとなったNO性の弛緩反応の増大について、過分極経路およびその細胞内伝達経路にも影響がないかどうか確認する予定である。
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