研究課題/領域番号 |
21K09046
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55060:救急医学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
酒井 智彦 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (50456985)
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研究分担者 |
島崎 淳也 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (40528767)
中尾 俊一郎 大阪大学, 医学部附属病院, 特任助教(常勤) (80834150)
松原 庸博 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (70747154)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 健康情報共有ツール / 医療情報 / 既往歴 / 救急活動記録 / 避難所開設 / 救急タグ / NFC版救急タグ / 新型コロナウイルス感染症 / 健康情報 / 救急 / 災害 / 避難所 |
研究開始時の研究の概要 |
我々は「既往歴、内服歴、アレルギー歴等を記したものを携帯できる形」で所持する「救急タグ」を開発し、さらに、非接触で瞬時に情報確認ができるように改良してきた。救急隊員は、傷病者に対し、観察・応急処置を行いながら、適切な医療機関に搬送するが、情報収集については救急タグを用いて迅速に行うことによって(時間的)「接触」を減らすことが可能と考えられる。 本研究では、非接触の救急タグを自治体が導入を推進できるようにするため、1)救急現場における情報不足の現状の実態調査、2)避難所における救急タグの有用性の評価を行い、コロナ禍における救急・災害現場における情報共有ツールの社会実装の根拠を示していく。
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研究実績の概要 |
研究1)救急搬送時の傷病者の病歴把握の実態に関する研究として、豊中市消防局の協力を得て、アレルギー歴、内服情報について明確に記録できるように救急隊活動記録の様式を一部修正していただき、管内の救急活動記録の2022年分を収集した。健康情報共有ツールの普及が救急搬送の円滑化(病歴把握がスムーズに行える)することを示すためには、評価項目となる「既往歴・内服薬・アレルギー情報」について「あり、なし、聴取できず」とコード化して記録を行うことが必要であることを明らかにした。 健康情報共有ツールがあるとき、ないときにおける救急隊の情報収集時間に関するシミュレーションを行った。サンプルが36事例と少なかったため、情報収集時間に有意差を認めなかったが、健康情報共有ツールがある方が救急隊の情報収集時間が短縮傾向にあることを示した。 近距離無線通信(near field communication: NFC)システムを用いることで健康情報共有ツールの多言語化が可能であることがわかり、2023年5月に開催されたG7広島サミットのメディアセンターに訪れる方々にピンバッジ方のタグを配付し、医療サービスの一端を担うと共に、大規模イベント時の医療体制における多言語対応についてアンケート調査を行った。 研究2)避難所開設時における健康情報共有ツール情報の有用性に関する研究として、健康情報共有ツールに登録された情報を避難所の受付でNFCのシステムを用いてスキャンし、集計するアプリケーションを開発した。2023年11月に大阪市東淀川区内で開催された避難所開設訓練において、避難所開設時の健康情報共有ツールのスキャンによる受付シミュレーションを実施し、従来の手書きによる受付よりも有用で便利であったというアンケート結果を得た。同趣旨は第28回日本災害医学会総会・学術集会において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究1)救急搬送時の傷病者の病歴把握の実態に関する研究については、豊中市消防局との協力体制により、救急活動記録の後ろ向き調査のデータ提供の解析も終え、前向き調査についても2022年の一年分の集計ができている。前向き調査の解析を行うステップであり、当初の予定通り概ね順調である。追加で行っている健康情報共有ツールがあるとき、ないときにおける救急隊の情報収集時間に関するシミュレーションについては、コロナ禍であり、救急隊の協力を得ることが困難であったため、救急救命士養成課程の学生に協力をいただくようにしたが、1校の協力だけでは、サンプル数が少なく、有意差を示すことができなかったため、追加で2校の協力を調整中での追加を予定であり、研究機関の延長を申請させていただいた。 研究2)避難所開設時における健康情報共有ツールの有用性に関する研究については、避難所開設訓練がコロナ禍を理由に中止となる地域があり、東淀川区内において十分な周知ができなかった。2023年中に協力を得られた地域が一つにとどまってしまったが、有用なアンケート調査を行うことができた。NFC版救急タグのシステム開発について、研究班の意見を速やかにアプリに反映できる体制が整ったため避難所での集計管理システムの開発に向けて体制を整備できている。PC版での集計および実地検証の体制について、令和5年度にずれ込んでしまったことは研究遂行に予期していなかった遅れであり、引き続き、ブラッシュアップのための検証、修正期間として令和6年度にずれ込んでしまった。
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今後の研究の推進方策 |
研究1)救急搬送時の傷病者の病歴把握の実態に関する研究については、令和4年度、令和5年度の研究結果を広く報告し、健康情報共有ツールの普及の効果検証が行えるような体制を消防本部(局)に提案していく。効果検証が行える体制となれば、消防本部(局)も多忙な救急活動において、救急隊がスムーズに活動出来ること、傷病者となり得る市民が救急隊のサービスを十分に受けることにつながるため健康情報共有ツールを導入することにつながると考えられる。 また、健康情報共有ツールがあるとき、ないときの状況設定シミュレーションについて、追加検証を行い、健康情報共有ツールが地域に導入された場合の救急隊の情報収集時間が短縮できる可能性を示し、より地域に健康情報共有ツールを浸透させる根拠を示していく予定である。 さらに、NFC版を作成する過程で多言語対応が可能であることが示されたため、今後は外国人労働者が多く働く地域で、雇用主の企業等とも意見交換をかさね、我が国に労働力を提供してくださる方々に対して、健康異常時のサポートを行いやすい体制についてご本人が健康情報共有ツールを持つこと、地域がその情報を活用するシステムについて検討して行く予定である。 研究2)避難所開設時における救急タグ情報の有用性に関する研究については、東淀川区に加え、大阪府豊能町をはじめ広い地域で避難所訓練に参加することで、NFC版救急タグを用いた避難所での集計管理システムの評価、検証を引き続き継続し、実用性のあるシステムとして運用可能な方策を検討する。また、大阪大学内で避難所について調査研究している人間科学研究科と意見交換し、災害時により被災された方のサポートとなるような健康情報共有ツールを用いた避難所の受付、情報共有システムの開発に取り組み、避難所開設に求められるニーズの調査や必要項目について検討し社会に提案していく予定である。
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