研究課題/領域番号 |
21K09078
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55060:救急医学関連
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研究機関 | 大阪公立大学 (2022) 大阪市立大学 (2021) |
研究代表者 |
加来 奈津子 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 特任講師 (10899355)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 新型コロナウイルス感染症(COVID-19) / mRNAワクチン / エピトープ / SARS-CoV-2 / 受容体結合ドメイン(RBD) / 結合親和性 / 中和抗体 / ペプチドマイクロアレイ / COVID-19 / ペプチドアレイ |
研究開始時の研究の概要 |
SARS-CoV-2感染症の臨床症状は,無症状からCOVID-19重症肺炎,死亡に至るまで幅広く,重症化移行は急速で予測困難である.重症COVID-19患者血清はSARS-CoV-2抗体価が高くウイルス中和活性も高いとされるが,自然発生的抗体はポリクロ ーナルで患者毎に多様なため,これらポリクローナル抗体のエピトープの多様性が個人におけるウイルス感染防御の有効性を決定していると考えられる.本研究では,1,000以上の検体において,独自のペプチドアレイにより検出した患者血清ポリクローナル抗体の多様なエピトープから,高い中和活性を持つ抗体が標的とするエピトープを高解像度に同定する.
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研究実績の概要 |
本研究では前年度までに、Pfizer-BioNTech COVID-19 mRNAワクチン接種者とCOVID-19患者のエピトーププロファイルを、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARSCoV-2)の受容体結合ドメイン(RBD)のペプチド(15mer)を固相化したマイクロアレイを用いて明らかにした。SARS-CoV-2 RBDを標的とするワクチンに誘導される抗体は、自然感染抗体よりもRBD全体に広く分布すること、自然感染血清と比較して、ワクチン血清で観察された比較的低い中和抗体力価は、ワクチンによる液性免疫の効率の低いエピトープ成熟に起因する可能性があること、変異パネルを用いたアッセイでは、ワクチン血清のエピトープ多様性は、急速に進化するウイルスが中和抗体を回避する余地を少なくし、ワクチン免疫に利点を与える可能性があることを示した。 エピトープ成熟は、中和抗体と抗原であるSARS-CoV-2との結合親和性で表されるが、当該年度はここへ焦点を当て解析を進めたところ、結合親和性は自然感染後あるいはワクチン接種後、時間経過に伴って上昇し、ウイルス中和活性と相関することを明らかとした。一方で臨床検査で汎用される装置で測定された抗体価は、この結合親和性とよく相関するものと、それほど強く相関しないものとがあり、検査対象者の背景や検査装置による影響についての懸念を示した。さらに、ワクチン接種後のエピトープ成熟過程において、年齢によって大きな差異があることを見出し、加齢に伴う免疫応答不全の可能性を示唆した。 さらに自然感染後のワクチン接種はワクチン接種のみと比較してより高いウイルス中和抗体を獲得できること、この能力にも年齢差が存在することを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定としていた本研究課題の核心は、COVID-19自然感染患者を対象としたSARS-CoV-2中和抗体の標的エピトープの多様性解析である。解析対象をワクチン接種者にも広げて研究を進めた結果、中和抗体が認識する受容体結合ドメイン(RBD)内のエピトープの多様性が、自然感染患者とワクチン接種者で大きく異なること、自然感染患者においてエピトープの多様性は少ないものの、ワクチン接種者よりも中和抗体価が高いこと、ワクチン接種者のエピトープは多様性に優れ、変異株に対してのロバストネスが高いことが示唆され、すでにこれらについては2021年12月にMicrobiology Spectrum誌(doi: 10.1128/Spectrum.00965-21)で報告済みである。 さらにエピトープ成熟についての研究を深め、自然感染、ワクチン接種者ともに経時的に結合親和性が上昇し、これはウイルス中和活性と相関することを2023年3月にThe Journal of Infectious Diseases誌(https://doi.org/10.1093/infdis/jiac492)に報告した。 また、自然感染後のワクチン接種は、ワクチン接種のみと比較してより強固なウイルス中和能を獲得できること、この効果は年齢層によって異なることを2023年1月にはFront Immunol誌(https://doi.org/10.3389/fimmu.2023.1087473)へ報告した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果より、中和抗体価はエピトープのみが決定するのではなく、抗体の成熟、つまり抗原である受容体結合ドメイン(RBD)に対する結合親和性といった因子も関与することが示されているため、引き続き自然感染患者およびワクチン接種者を対象としたRBDとの結合親和性についての解析を進めていく。抗体の成熟は時間の経過とともに起こるが、抗体価および中和抗体価についても同様の経時的な変化が観察されていること、年齢によってその免疫応答の差異が観測されているため、今後のワクチン接種戦略に寄与する研究を行う。 エピトープに関しては、PBMCの入手が可能となったことに伴う、BCRレパトワの解析を行い、さらに詳細なエピトープ差異についての研究を進める。
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