研究課題/領域番号 |
21K09100
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56010:脳神経外科学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
杉生 憲志 岡山大学, 大学病院, 准教授 (40325105)
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研究分担者 |
黒住 和彦 浜松医科大学, 医学部, 教授 (20509608)
畝田 篤仁 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (20865927)
藤井 謙太郎 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (40799318)
石田 穣治 岡山大学, 大学病院, 助教 (90771949)
大谷 理浩 岡山大学, 大学病院, 助教 (60902989)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | グリオーマ / germline / PIK3R1 / 神経膠腫 / 微小環境 |
研究開始時の研究の概要 |
グリオーマは予後不良な脳腫瘍である。近年、体細胞遺伝子変異の解析が進んでいるが、germline(生殖細胞系列)バリアントについては不明な点が多い。免疫チェックポイント阻害剤をはじめとする免疫療法の有効性を決定する要素として、腫瘍の免疫微小環境が注目されているが、体内の全細胞に存在するgermlineバリアントは免疫微小環境に影響する可能性がある。しかし、germlineバリアントとグリオーマの予後や免疫微小環境との関連については未だ不明である。本研究では、新規germlineバリアントであるPIK3R1 Met326Ileがグリオーマの発生率、予後、免疫微小環境に与える影響について解析する。
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研究実績の概要 |
グリオーマは予後不良な脳腫瘍であり, その中で最も悪性度の高いグリオブラストーマの5年生存率はわずか10%である. 近年, 腫瘍細胞でのみ生じるsomatic(体細胞)遺伝子変異の解析が進んでいるが, 患者が生まれながらに持ち, 体内のすべての細胞で生じるgermline(生殖細胞系列)バリアントについては未だ不明な点が多い. 本邦で開発され, ノーベル賞にも輝いた免疫チェックポイント阻害剤をはじめとする様々な免疫療法が実臨床に応用されているが, グリオーマに対しては有効性を示せていない. 免疫療法の有効性を決定する要素の一つとして, 腫瘍の免疫微小環境が注目されているが, 体内の全細胞に存在するgermlineバリアントは, 腫瘍細胞のみならず免疫微小環境にも強い影響を与える可能性がある. しかし, germlineバリアントと, グリオーマの予後や免疫微小環境との関連に着目して解析を行ったという報告はこれまでにほとんどない. 本研究では, TCGAのゲノム配列データを用いて, PIK3R1 Met326Ile germline変異がグリオーマの発生率, 予後, さらには免疫微小環境に与える影響について解析を行う. PIK3R1 M326Ileのホモ変異型 (PIK3R1 M326Ile Homo MT)は, 予後が悪い傾向はあるが, 3群解析で有意差はつかず(Homo MT vs WT + Hetero MTで比較すると有意差あり), BLACK OR AFRICAN AMERICANで有意に多いことがわかった. また, 人種ごとに解析した場合も, PIK3R1 M326IleのHomo MTは, 予後が悪い傾向はあることがわかった. 人種ごとに健常人とGBMで比較すると, PIK3R1 M326Ile変異は, 疾患発症リスクには関与しないといいうことがわかった. ホモ変異型 (PIK3R1 M326Ile Homo MT)では, MTAPやIFNの変異が多く, PIK3R1 M326Ile変異が免疫微小環境に影響を与える可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GATK HaplotypeCallerを行ったところ, 野生型 (PIK3R1 M326Ile WT)が193例, ヘテロ変異型 (PIK3R1 M326Ile Hetero MT)が92例, ホモ変異型 (PIK3R1 M326Ile Homo MT)が8例であった. 3群間でのサバイバル解析を行うと, Median Overall Survivalは, 野生型 (PIK3R1 M326Ile WT)で13.11ヶ月 (95%信頼区間11.89 - 17.05), ヘテロ変異型 (PIK3R1 M326Ile Hetero MT)で14.72ヶ月 (95%信頼区間11.89 - 17.05), ホモ変異型 (PIK3R1 M326Ile Homo MT)で6.64ヶ月(95%信頼区間2.56 - NA)であり, ホモ変異型 (PIK3R1 M326Ile Homo MT)で予後が悪い傾向を認めたが, 有意差は認めなかった (Logrank Test P-value = 0.0681). 野生型 (PIK3R1 M326Ile WT) + ヘテロ変異型 (PIK3R1 M326Ile Hetero MT) とホモ変異型 (PIK3R1 M326Ile Homo MT)の2群間でサバイバル解析を行うと, Median Overall Survivalは, 野生型 (PIK3R1 M326Ile WT) + ヘテロ変異型 (PIK3R1 M326Ile Hetero MT)で13.34ヶ月 (95%信頼区間12.32 - 14.91)であり, ホモ変異型 (PIK3R1 M326Ile Homo MT)の6.64ヶ月(95%信頼区間2.56 - NA)と比較して, 有意差を認めた (Logrank Test P-value = 0.0281).
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今後の研究の推進方策 |
本研究の結果をまとめると, PIK3R1 M326Ileのホモ変異型 (PIK3R1 M326Ile Homo MT)は, 予後が悪い傾向はあるが, 3群解析で有意差はつかず(Homo MT vs WT + Hetero MTで比較すると有意差あり), BLACK OR AFRICAN AMERICANで有意に多いことがわかった. また, 人種ごとに解析した場合も, PIK3R1 M326IleのHomo MTは, 予後が悪い傾向があることがわかった. 人種ごとに健常人とGBMで比較すると, PIK3R1 M326Ile変異は, 疾患発症リスクには関与しないということがわかった. ホモ変異型 (PIK3R1 M326Ile Homo MT)では, MTAPやIFNの変異が多く, PIK3R1 M326Ile変異が免疫微小環境に影響を与える可能性が示唆された. 自施設の症例では, PIK3R1 M326Ileは, 有意差をもって予後不良であったが, 今回有意差は認めなかった. 要因として, 人種の影響や, 症例数が少なかったことなどが考えられる. 今後のプランとして, TCGA-LGGでも解析を行う予定である. TCGA-GBMで, Homo MTは予後不良の傾向があった. Homo MTで発現が変動している遺伝子(mRNA)を抽出し, パスウェイ解析 (GSEAやmetascapeなど), Cybersortなどのデジタルサイトメトリーを行う予定である.
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