研究課題/領域番号 |
21K09107
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56010:脳神経外科学関連
|
研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
片野 広之 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 准教授 (30295612)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | 頸動脈狭窄症 / 頸動脈プラーク / 石灰化プラーク / ゲノム / エピゲノム / 頚動脈狭窄症 / 頚動脈プラーク / クロマチン |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、とくに複雑な影響を及ぼす可能性のあるエピゲノムによる頚動脈粥腫安定化・不安定化の調節、相互作用をさらに多角的に究明するため、ATAC-Seq, ChIP-Seq, Hi-C法を用い、アガツトンカルシウムスコアによる分類を基準としてヒト頚動脈で探求する。血管新生、動脈硬化、石灰化生成関連因子のエピゲノムの状態の相違を分析し、粥腫安定化をもたらすメカニズム、分子間相互のクロストークをさらに究明することで、症候化をもたらす不安定粥腫への進展を防ぎ、粥腫安定性の維持・制御へと役立てる。
|
研究実績の概要 |
これまでに明らかにしてきた網羅的検索による血管新生抑制遺伝子のmRNA, タンパク発現増強、ゲノムの配列異常(SNV)、エピゲノムのDNAメチル化異常やmicroRNAによる頚動脈粥腫安定化機構研究を発展させ、本研究では、とくに複雑な影響を及ぼす可能性のあるエピゲノムによる頚動脈粥腫安定化・不安定化の調節、相互作用をさらに多角的に究明するため、ATAC-Seq, ChIP-Seq, Hi-C法を用い、アガツトンカルシウムスコアによる分類を基準としてヒト頚動脈で探求することを計画したが、令和3年度は、ヒト頚動脈粥腫として頚動脈内膜剥離術によって摘出した標本(-80℃凍結)を用い、石灰化含有度の評価は術前MDCTAで計測したカルシウムスコアおよびHE染色組織標本で行い、高石灰化と低石灰化粥腫群に分類した。超音波破砕で細胞を回収後、非イオン性活性剤で核を単離し、得られたクロマチンをTn5トランスポゼースにより、NGSシーケンスアダプタを標識しつつ断片化、ライブラリー調整後、PCRで増幅しNGSで解析し、MACSでpeakcallを検出、annotation付加し、Viewerで可視化後シーケンスリードによりクロマチン・アクセシビリティが高い領域、すなわち遺伝子の転写が活発に行われていると推測されるユークロマチン領域を検出するATAC-Seqを行い、オープンクロマチン領域にみられる塩基配列を網羅的に解析し、クロマチン・アクセシビリティの高・低石灰化粥腫群での差異を明らかにすることを計画し、まずvalidation studyを行った。慎重を期すため、令和4年度には異なる複数の検体で二度に渡ってvalidationを反復した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度には異なる複数の検体で二度に渡ってvalidationを反復したが、いずれもATAC反応が弱くバックグラウンドも高いため、ATAC-Seq本試験への移行を断念した。しかし、エピゲノムの別制御として高感度RNA-SeqであるSMART (Switching Mechanism At 5’ End of RNA Template)-Seq v4 (Ultra Low Input)を行い、Bioinformatics Data MiningによりlncRNA発現の差異を調べたところ、全発現転写産物は229647, 60715遺伝子であった。フィルターで低品質・低発現のもの(154,280 transcripts, 38,980 genes)を除外し、この中から両群のlog2CPM発現の平均の差異が|log2>1かつp<0.05 であるlncRNAを抽出すると高石灰化プラーク群では15遺伝子、低石灰化プラーク群で33遺伝子が抽出された。前者はcell proliferation, invasionを抑制する機能を示すlncRNAが多く抽出されたのに対し、後者では促進する傾向の遺伝子が多く抽出された。従って、本研究全体としては概ね順調に進捗している。
|
今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、頚動脈内膜剥離術で摘出した頚動脈粥腫をホルムアルデヒドで固定し、超音波破砕によりクロマチンを断片化した後、制限酵素でゲノム切断してDNAリガーゼで近接領域を結合する。ペアエンドシーケンスにより連結断片の両端の読み取りから、もともと近接していた配列を同定する。このゲノム近接性を測定することで結合部位間でコンフィグを関連づけ、さらに染色体グループに分類し染色体スケールでscaffoldに並び替え、配列情報を補完するゲノム高次構造情報を得る。コンタクトマップを作成し、TAD(Topography associated domain)を検出し、高・低石灰化粥腫群でのTAD変化と周辺遺伝子発現の変化の差異を明らかにする。最終年度として、これまでのmRNA, microRNA, DNAメチル化、DNA変異および令和4年度のlncRNAの結果と合わせて、安定化・不安定化に関する分子間の総合連関を総括する。
|