研究実績の概要 |
【目的】上衣腫は小児から若年成人の頭蓋内や脊髄に好発する脳腫瘍である。有効な化学療法はなく、開頭手術により全摘出を目指し、残存腫瘍があれば再発予防として放射線治療を行うことが現時点の標準治療であるが、治療無効例も存在する。新規治療法の開発のために上衣腫の生物学的特徴を明らかにする基礎研究が必要である。Eph受容体は膜貫通型の受容体チロシンキナーゼであり、エフリン(ephrin)と呼ばれる細胞膜に存在するリガンドと結合することによって両方向性の細胞内シグナルを伝達する。 EphA とEphBのサブクラスが 同定されており、様々ながんで悪性形質の維持に関与していると報告されているが、上衣腫についての検討はない。ヒト上衣腫手術検体およびヒト上衣腫から樹立した2種類の培養細胞株を用いた解析、動物実験からEphB4阻害による新規上衣腫治療の可能性を探る。
【方法と結果】上衣腫の手術検体及び2種類の上衣腫細胞株EP1NS, NGT118を使用した。EphB1, B2, B3, B4, B6, ephrin-B2を一次抗体としEnvision+ 法による免疫染色を行った。凍結検体と細胞株を用いたWestern blot, QRT-PCRを行った。凍結検体、細胞株におけるEphB4のmRNA発現は正常脳と比較し高値を示した。腫瘍組織のEphB4の免疫染色結果はWestern blot結果を支持する所見でした。また、NGT118は正常脳、EP1NSと比較しEphB4/ephrin B2が高発現し、EphB4/ephrin B2が誘導するシグナルとしてERK, STAT3の関与が示唆された。
【結論】上衣腫の悪性形質にEphB4, ephrinB2の高発現とERK, STAT3シグナルの関与が考えられた。
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