研究課題/領域番号 |
21K09178
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56010:脳神経外科学関連
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
渡邉 英昭 愛媛大学, 医学系研究科, 准教授 (30322275)
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研究分担者 |
井上 明宏 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (20593403)
國枝 武治 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (60609931)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | glioblastoma / glioma stem-like cell / osteopontine / 低酸素環境 / glioblastome / osteopontin |
研究開始時の研究の概要 |
神経膠芽腫は手術で摘出しても摘出部辺縁から再発することが多く、予後不良の脳腫瘍である。治療成績改善には腫瘍再発を抑制することが重要であるが、再発機序については不明点も多い。近年、再発にはglioma stem-like cell(GSC)が関与しているとされており、我々は、これまでに膠芽腫の辺縁部にinvaion nichが存在し、同部位にCD44を高発現するGSCが潜在していることを明らかにした。 今回の研究では、CD44と特異的結合を示すosteopontin(OPN)に着目し、OPNの発現と機能を解析することで、GSCの破綻を誘導する膠芽腫に対する革新的な分子標的治療法の開発を目的とする。
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研究実績の概要 |
膠芽腫における腫瘍幹細胞(Cancer stem cell:CSC)の存在は、膠芽腫摘出腔辺縁の局所再発における主要な要因と考えられる。これまでに我々は、腫瘍周辺におけるCSCの発現と作用を調べるため、膠芽腫組織を中心部と辺縁部に分け、各部位で発現している幹細胞マーカーを解析し、画像との対比、予後との関係、及び新規治療の可能性について検討を行ってきた。具体的には、当院で手術を施行した膠芽腫患者で、ナビゲーション下に腫瘍中心部と辺縁部を同定、各部位から組織を採取し、各種幹細胞マーカー及び関連分子の発現を解析すると共に、当院にて樹立したグリオーマ幹細胞様(GSL)細胞を用いて浸潤能や増殖能などの機能解析を行った。結果、画像上、浸潤型の腫瘍では、CD44が中心部と比較して辺縁部でより多く発現しており、早期に再発を来たし予後不良であった。一方、境界鮮明型の腫瘍では辺縁部でのCD44の発現が低下する一方で、VEGFの発現量が多く、高い増殖能を示した。また、樹立したGSL細胞はCD44の発現が高く、同細胞は高い浸潤能を有しており、CD44をknockdownすることでそれらの活性は抑制された。一方、CD44をknockdownしたGSL細胞をマウス脳内に移植すると、腫瘍の浸潤のみならず増殖も抑制され、マウスは長期間生存した。加えて、これらの作用にはHIF-1およびHIF-2が関与していることが明らかとなった。以上より、腫瘍摘出腔辺縁部にCD44高発現のCSCが多く存在する症例では、同細胞群が高い浸潤性、早期再発に関与していると思われ、腫瘍辺縁部に残存したCD44発現腫瘍幹細胞の制御機構、特に低酸素環境をいかに是正するかを検討することが、膠芽腫における新たな治療戦略の確立に繋がると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膠芽腫患者では、腫瘍摘出腔辺縁部にCD44高発現のCSCが多く存在する症例があり、同細胞群が高い浸潤性、早期再発に関与していると共に、腫瘍辺縁部に残存したCD44発現腫瘍幹細胞の制御機構には周辺の酸素環境が関わっていることを明らかにした。今後は、その詳細を解明することで、酸素環境の調整に重点を置いた新たな治療戦略の確立を模索する予定である。なお、上記は、R3年度、R4年度に計画していた事項であり、研究は概ね順調に経過していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの結果を踏まえると、我々の推論通り腫瘍辺縁部に残存したCD44発現GSLの制御機構、特に摘出腔周囲の酸素環境を制御することが、膠芽腫に対する新たな治療戦略の確立に繋がっていく可能性が高いと推測され、今後も引き続いて摘出腔辺縁のCD44発現GSLを標的とし、酸素環境に応じた特性の変化を検討していく予定である。
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