研究課題
基盤研究(C)
がんの再発や転移の原因として、がん幹細胞の存在が注目されている。がん幹細胞は、自己複製能と通常のがん細胞への分化能を備え、治療に抵抗性を示す。申請者は、免疫チェックポイントICOSLGが悪性脳腫瘍の生命予後に影響を及ぼすことを明らかにした。本研究は、がん幹細胞がICOSLGを発現する分子メカニズムを明らかにする。そして、その発現の抑制が、転移性脳腫瘍の治療に有効であるかを検証する。
がん遠隔転移の機序はいまだ不明な点が多く、脳転移を抑制する薬剤はない。また、脳は脳血液関門により薬剤が到達しにくいため、抗がん剤は不応性である。現在、転移性脳腫瘍に対する治療は、手術切除と放射線治療が標準的治療であり、患者の予後は悪い。がんの発生かつ治療抵抗性の根源として、がん幹細胞の存在が提唱されている。そのため、がん幹細胞を標的とした治療薬の開発が世界中で行われている。脳転移巣には脳指向性を有するがん幹細胞が存在する。がん細胞が脳転移を起こすには、間葉系に転換するなどの過程が必要である。自己複製能と分化能を有するがん幹細胞は、表現型を自由自在に変化させることで、転移に必要な能力を獲得していると考えられる。そして、脳転移巣には脳転移開始細胞が濃縮されていると予想される。本研究では、ニューロスフェア・アッセイを用いて、転移性脳腫瘍の切除組織から、がん幹細胞を樹立した(7症例)。そして、扁平上皮癌、小細胞癌および腺癌由来のがん幹細胞において、制御性T細胞調節因子であるICOSLGが細胞膜に分布することを認めた。そこで、病理組織標本におけるICOSLGの発現と分布を調べた。ICOSLGは扁平上皮癌、小細胞癌および腺癌の脳転移巣のCD44陽性細胞で発現していた。肺の原発巣から転移する過程において間葉系に転換したがん幹細胞は、制御性T細胞調節因子であるICOSLGを高発現することにより免疫機構から逃避していると考えられた。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 6件) 産業財産権 (3件) (うち外国 2件)
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