研究課題/領域番号 |
21K09203
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56020:整形外科学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
福井 友章 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (50437688)
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研究分担者 |
大江 啓介 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (20514623)
新倉 隆宏 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (40448171)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 骨粗鬆症 / 炭酸ガス / ラット / ロコモティブシンドローム / 脆弱性骨折 / 筋委縮 |
研究開始時の研究の概要 |
超高齢社会に突入した我が国において、健康寿命の延伸は国家的課題である。その実現のためには、加齢に伴い運動・移動能力が低下した状態であるロコモティブシンドロームの治療・予防が重要である。我々はこれまでに炭酸ガス経皮吸収療法が生体に及ぼす影響について様々な研究を行い、骨折治癒促進、骨再生、骨吸収抑制、筋萎縮予防などの効果を有することを見出してきた。これらは、ロコモティブシンドロームの主な要因である骨粗鬆症・脆弱性骨折・筋萎縮・骨萎縮にも関連するものである。これらを踏まえ、本研究では、炭酸ガス経皮吸収を用いた、骨粗鬆症・脆弱性骨折・廃用に対する新たな治療法を開発することを目的とする。
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研究実績の概要 |
本研究の目的の一つである、卵巣摘出(OVX)ラット骨粗鬆症モデルを用いて、炭酸ガス経皮吸収システムにより骨粗鬆症の病態が改善するかについての検討を行った。炭酸ガス経皮吸収群、対照群の二群に分け、炭酸ガス群に対してはOVX術後翌日からの炭酸ガス投与を行った。マイクロCTを用いて大腿骨遠位部の骨量などのパラメータを比較したが、両群間に有意差を認めず、今回行った実験系では骨粗鬆症に対する炭酸ガス経皮吸収療法の効果は認められなかった。 並行して精巣摘出(ORX)ラット骨粗鬆症モデルを用いた検討も行った。ORX翌日から炭酸ガス経皮吸収を8週間行った炭酸ガス経皮吸収群、ORX後特に介入をしなかった群、ORXを施行していない同一週齢群の間で、大腿骨のマイクロCT、組織学的骨形態計測、力学的評価を行った。ORX骨粗鬆症モデルの作成は問題なく行えていたが、前述の評価において、炭酸ガス経皮吸収療法の明らかな骨粗鬆症予防効果は認めなかった。 また、炭酸ガス経皮吸収の至適治療時間についての検討を継続している。ラット大腿骨骨折モデルを作成し、従来の20分治療に加え、60分治療の群を作成し、骨折治癒過程をX線学的・組織学的に検討している。現時点では十分なサンプル数を集積できておらず、今後データをまとめていく予定である。 当初の予定ではOVX、ORXの骨粗鬆症モデルラットに大腿骨骨折を作成し、炭酸ガス経皮吸収療法による骨折治癒促進効果を検討する予定であったが、上記のように同モデルの骨粗鬆症に対する炭酸ガス経皮吸収療法の効果が明らかでなかったことを受け、先にラット後肢懸垂筋委縮・骨萎縮モデルに対する炭酸ガス経皮吸収療法の効果の検討を開始している。現在、組織学的腓腹筋面積評価、マイクロCT・組織切片による骨形態評価にて炭酸ガス療法による筋委縮・骨萎縮の予防効果を認めており、令和5年開催の学会へ演題応募済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、まずOVXモデルとORXモデルの二つの骨粗鬆症モデルに対する炭酸ガス経皮吸収療法の骨粗鬆症予防・治療効果を検討した上で、その次に同骨粗鬆症モデルにおける大腿骨骨折に対し炭酸ガス経皮吸収療法を行い、その骨折治療効果の検討を行う予定としていた。しかし、上記したようにこれらの骨粗鬆症モデルにおいて、炭酸ガス経皮吸収療法の効果がみられなかったことから、別の骨粗鬆症モデルでの検討を先に行うべきではないかと考えた。そこで、令和6年度に行う予定としていたラット後肢懸垂による骨萎縮・筋委縮モデルを用いた、炭酸ガス経皮吸収療法の治療効果の検討を開始している。現時点で炭酸ガス療法の効果を示すデータが得られており、令和5年度中にデータをまとめることを見込んでいる。 研究を実行する順番は予定していたものと違ってはいるが、研究全体としての進行状況としてはおおむね順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
前述の通り、後肢懸垂モデルにおける炭酸ガス経皮吸収療法の骨萎縮・筋委縮予防効果に関する検討を継続していく。前述した評価にて効果の検討を行うことと並行し、筋や骨をサンプルとしてreal-time RT-PCRを用いた遺伝子学的検討を行い、炭酸ガス経皮吸収療法が与える影響のメカニズムについての検討も行っていく予定である。 OVXモデル、ORXモデルにおいて、炭酸ガス治療が骨粗鬆症を予防する効果は示されなかったが、それぞれの骨粗鬆症モデルの作成には成功している。これらに後肢懸垂モデルを加えた3種の骨粗鬆症モデルを用いて、骨粗鬆症を背景とする脆弱性骨折モデルにおける炭酸ガス経皮吸収療法の効果の検討を将来的には行っていきたい。 いずれのテーマについても研究結果が出そろい次第、国内学会および国際学会にてその成果を発表するとともに、英文論文として投稿する予定としている。
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