研究開始時の研究の概要 |
ロコモティブシンドロームの代表疾患である変形性膝関節症(膝OA)の治療法の開発は重要な課題である. しかし, 疾患の分子レベルの病態の理解はいまだ乏しく, 開発の障壁となっている. 我々は, 膝OAの進行に関係する内側半月板逸脱と相関する骨棘の重要性を示した. さらに, 膝OAの骨棘形成に滑膜炎が関連することを報告した. このように, 膝OA病態の主座である軟骨ではなく骨棘と滑膜を治療ターゲットとして研究を進めることが膝OA治療を発展させると考える. 本研究の目的は, 膝OAの滑膜炎を制御することにより, 骨棘形成およびそれに付随する半月板逸脱の抑制を柱とする膝OAの新たな治療法の開発である.
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研究実績の概要 |
変形性膝関節症(膝OA)の治療法の開発は重要な課題である. しかし, 疾患の分子レベルの病態の理解はいまだ乏しく, 開発の障壁となっている. 近年の早期膝OAの研究にて, 膝OAの発症や進行に内側半月板逸脱(MME)が関連することが報告されている. また, 我々は, MME幅が脛骨内側の軟骨成分と骨成分を合算した骨棘幅と関連することを示した. つまり, MMEを進行させる原因に骨棘形成があると考えられ, 骨棘が治療ターゲットになると考えられる. また, 我々は,基礎研究にて, 膝OAの骨棘形成に滑膜が重要なことを報告しており, 滑膜は骨棘形成の重要な因子である. 以上のことから, 本研究の目的は, 膝OAの滑膜炎を制御することにより, 骨棘形成およびそれに付随する半月板逸脱の抑制を柱とする膝OAの新たな治療法の開発である. 2021年および2022年において, 膝OA各進行期の骨棘形成と滑膜の炎症メディエーターおよび多能性前駆細胞の解析のため, 各病期の手術検体である滑膜および骨棘を採取し, 組織切片および組織からRNAを採取し, 各種炎症性メディエーター(TNF-α, IL-6, IL-1β, TGF-β)の発現の測定をした. また, 同様のマーカーをマウスモデルでも確認するため, 半月板を逸脱させるモデルであるDMM (destabilized medial meniscus) モデルを用いて膝OAを発症させ, 術後2週, 4週, 8週で病理切片の作成, また滑膜および骨棘を採取し, 組織切片および組織からRNAを採取し, 各種炎症性メディエーター(TNF-α, IL-6, IL-1β, TGFβ)の発現の測定を開始した. 加えて, コホート研究においても滑膜炎の強さと骨棘形成の関係性を示し, 滑膜炎の制御が骨棘形成を制御しうる可能性について示した.
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今後の研究の推進方策 |
変形性膝関節症の各病期の手術検体またはマウスから滑膜および骨棘を採取および解析準備は進行しており, 実験精度を向上させデータの解析を行う.①膝OA各進行期の骨棘形成と滑膜の炎症メディエーターおよび多能性前駆細胞の解析, ②炎症性メディエーターと骨棘形成の変化を評価し, 骨棘形成の制御因子の選定, 機能解析, ③多能性前駆細胞と骨棘形成の変化を評価し, 骨棘形成の制御因子の選定, 機能解析.④標的分子による滑膜炎の制御による膝OAの骨棘形成にたいする治療効果の検討.の順に実験を進めていく.
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