研究課題/領域番号 |
21K09272
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56020:整形外科学関連
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
大橋 正幸 新潟大学, 医歯学系, 助教 (70706720)
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研究分担者 |
馬場 洋 新潟大学, 医歯学系, 教授 (00262436)
大橋 宣子 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (70706712)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 脊髄損傷後疼痛 / カルシウムチャネル / オメガーコノトキシン / 脊髄損傷 / 疼痛 / 脊髄保護療法 / 電位依存性カルシウムチャネル / アロディニア / 活性酸素 |
研究開始時の研究の概要 |
脊髄損傷後の疼痛は、運動麻痺と同様に生活の質を著しく低下させる重篤な病態であり、代表的な難治性疼痛の一つである。本研究では脊髄損傷後の疼痛の機序解明と新規治療法の確立を目的に、N型電位依存性カルシウムチャネル(N型VGCC)の役割に焦点を絞って検討する。分子生物学的、生化学的実験に加えて、神経ネットワークを保ちながらカルシウムイメージングや電気生理学的実験を行い、生きた細胞レベルで、リアルタイムに神経機能の変化を解析する点に特色がある。さらに、N型VGCC阻害剤はすでに臨床使用されている薬剤であり、本研究で有用性が示されれば、適応拡大により早期に臨床応用可能な研究成果となることも期待できる。
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研究実績の概要 |
脊髄損傷患者の多くは脊髄損傷後疼痛を合併しているが、難治性であり有効な治療薬がない。従来より脊髄レベルでの電位依存性Ca2+チャネル (VGCC)の関与が報告されているが、その詳細な機序は未だ不明である。さらに欧米ではN型VGCC遮断薬であるω-conotoxin MVIIAは難治性疼痛に対して臨床使用されているが、脊髄損傷後疼痛に対する有効性は検討されていない。本研究の目的は脊髄損傷後疼痛におけるMVIIAの鎮痛効果およびその機序を検討し、脊髄レベルでのN型VGCCの関与を明らかにすることである。 脊髄損傷後疼痛モデル (SCI)ラット(T10椎弓切除、100kdyで作成した不全損傷モデル)を用いた。行動学実験ではMVIIAのくも膜下投与を行いvon Frey testによる痛み閾値を記録した。次にin vitroパッチクランプ電気生理学実験を行い、脊髄後角の微小興奮性シナプス後電流 (mEPSC)および後根刺激による単シナプス性EPSCを記録し、MVIIAに対する反応を検討した。さらに、in vivoパッチクランプ電気生理学実験により、自発発火の頻度、疼痛刺激への反応も検討した。 行動学実験ではMVIIA投与により痛み閾値の改善を認めた (p < 0.01)。in vitroパッチクランプでは、MVIIA投与によりmEPSCsの振幅に変化を認めなかったが、頻度は有意に減少した (p < 0.01)。またMVIIAはAδおよびC線維刺激による単シナプス性EPSCを有意に抑制した (p < 0.01)。in vivoパッチクランプでは、MVIIA投与群で自発発火の減少、疼痛刺激に対する反応性低下を認めた。以上より、脊髄損傷後疼痛に対しMVIIAは脊髄レベルで鎮痛効果を発揮し、その機序として脊髄後角の興奮性シナプス前終末に存在するN型VGCCを阻害することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度はコロナ禍により研究室利用への制限や、他施設との共同実験の遅れが続き、実験データ取得に当初の予定より時間を要したが、昨年度は順調に実験も遂行でき、研究全体としては研究機関内に予定していた実験自体はほぼ終了している。今年度は残りの実験に加えて学会発表、英語論文作成へと進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はさらに研究室間の往来が行いやすくなっており、特に他施設と共同で行っている実験が順調に進んでいる。今まで以上に密に連携をとり、効率よく実験・解析・解釈を遂行していく予定である。
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