研究課題/領域番号 |
21K09299
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56020:整形外科学関連
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
北川 教弘 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (30294284)
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研究分担者 |
岡 千緒 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (30263445)
別所 康全 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (70261253)
山下 照仁 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 准教授 (90302893)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 骨代謝 / 破骨細胞 / シグナル伝達 / 免疫学 / 糖鎖 |
研究開始時の研究の概要 |
破骨細胞は生体骨組織における唯一の骨吸収細胞である。破骨細胞の成り立ちを理解することは、骨粗しょう症を始めとする骨疾患治療法の開発に重要である。本研究では破骨細胞におけるSiglec-15-DAP12複合体-転写因子NFATc1を軸としたシグナル伝達経路の重要性や働きを明らかにすることを目的とし、破骨細胞に特徴的な細胞融合や骨吸収活性の獲得に働く分子メカニズムの一端が解明されることを期待している。
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研究実績の概要 |
本研究は骨吸収活性を有する破骨細胞の形成に必要なSiglec-15-DAP12複合体と転写因子NFATc1関連を分子レベルで明らかにし、Siglec-15を標的とする治療法開発への貢献を目的としている。当該年度本目的について様々な角度から研究を遂行したが、Siglec-15-DAP12複合体に結合するタンパク質群の探索および同定についてプレリミナリーな知見を得ることに成功した。 Siglec-15とDAP12のキメラ分子であるrevSSDKAはSiglec-15-DAP12複合体を1分子で模倣し、本分子の強制発現はSiglec-15遺伝子発現抑制したDAP12遺伝子欠損RAW264細胞の破骨細胞の分化を効率よく回復する。そこでrevSSDKAと結合し、その細胞質内領域のITAMに存在するチロシン残基をフェニルアラニンに置換した変異体revSSDKA-2YFでは結合しないタンパク質の探索を行った。両タンパク質のC末端に精製用タグを付加したタンパク質を、Siglec-15遺伝子を発現抑制したDAP12遺伝子欠損RAW264細胞で強制発現し、RANKL含有培地で48時間分化誘導した。これら細胞を過バナジン酸で処理した後に調製した全タンパク質抽出液から組換えタンパク質をアフィニティー精製し共精製されたタンパク質群を質量分析法により解析した。その結果、revSSDKAのチロシン残基特異的に結合するタンパク質群として55種のタンパク質を同定した。このタンパク質群にはITAMのチロシン残基リン酸化依存的に結合することが報告されているSykが含まれており、本手法がSiglec-15-DAP12複合体に結合するタンパク質のスクリーニングに適していることを示唆する結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Siglec-15-DAP12複合体はその細胞質内領域にタンパク質キナーゼなどの酵素活性を有しない。またDAP12のITAMを介したシグナル経路はRANKL-RANKLやvitronectinなどの細胞外マトリックス-インテグリンを介したシグナル経路により活性化される。これらシグナル経路とSiglec-15-DAP12複合体のITAMを介した共シグナル経路活性化の分子間相互作用は不明である。この点を明らかにすることは本研究課題の核心となる問い「成熟破骨細胞形成において、DAP12を介したITAMシグナル経路はどのような分子メカニズムにより制御されるのか?」を解明する上で重要である。当該年度の研究結果は、revSSDKAとその変異体をベイトとしたアフィニティー精製・質量分析法を組み合わせた方法がSiglec-15-DAP12複合体と会合するタンパク質の同定について妥当な研究手法であることを示すものである。 これに対して1)同定されたタンパク質が55種と多く絞り込む必要があること、2)Siglec-15がリガンドを認識するV-setドメインに結合するタンパク質群の探索が未だ行えていないこと、さらに3)Siglec-15-DAP12複合体に結合するタンパク質が破骨細胞分化に及ぼす影響を未だ評価できていないこと、などの点が未解明である。特に2)はSiglec-15-DAP12複合体を介したITAMシグナル経路の活性化には不可欠である。以上の点が未解明であることから、「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度はSiglec-15-DAP12複合体と結合するタンパク質をITAMのチロシン残基に着目してスクリーニングを行った。これを踏まえて本年度はSiglec-15がシアル酸化糖鎖を認識するために必要なV-setドメインと会合するタンパク質の探索を試みる。 Siglec-15遺伝子発現抑制したDAP12遺伝子欠損RAW264細胞に、キメラ分子revSSDKAとそのV-setドメインを欠失した変異体をそれぞれ強制発現し、RANKL含有培地で48時間分化誘導後の細胞を用意する。これら細胞に細胞質内には移行しない架橋剤DTSSPで細胞を処理したのち、細胞抽出液を調製する。これら細胞抽出液から組換えタンパク質をアフィニティー精製し共精製されるタンパク質群を質量分析法により同定する。得られたタンパク質群の存在比をrevSSDKAとその変異体間で比較し、V-setドメイン依存的に結合するタンパク質群を選別する。当該年度に得られたITAM内チロシン残基依存的に結合する55種のタンパク質群は、スクリーニングにおける陽性コントロールとなり得るとともに、Siglec-15-DAP12複合体活性化機序を考察する一助となると考えられる。本解析の問題点としてV-setドメイン依存的に結合するタンパク質が多数得られる可能性が想定される。この問題については糖鎖のシアル酸を除去するシアリダーゼが多核破骨細胞の形成を阻害することに着目し、revSSDKAを強制発現した細胞を、シアリダーゼ処理群・無処理群の2群間の比較を追加することで、1)V-setドメイン依存的、かつ2)細胞外シアル酸化糖鎖依存的、に結合するタンパク質群の同定を試みる。
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