研究課題/領域番号 |
21K09321
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56020:整形外科学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
生田 国大 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (40732657)
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研究分担者 |
西田 佳弘 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院教授 (50332698)
酒井 智久 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (40821971)
小池 宏 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (80846080)
伊藤 鑑 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (50880308)
藤戸 健雄 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (70976357)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 神経線維腫 / PDXモデル / drug repositioning / 神経線維腫症1型 / 蔓状神経線維腫 |
研究開始時の研究の概要 |
NF1は多発する神経線維腫を特徴とする遺伝性腫瘍症候群である。神経線維腫は疼痛、機能障害、醜状をきたし患者QOLの低下につながるが、保険診療による薬物治療は現状ない。本邦の患者数は4万人であり、神経線維腫に対する薬物治療、予防治療の開発へのニーズは高い。本研究では、NF1患者の神経線維腫に対する実現可能な新規治療法の基盤データの構築を目指す。経年的に増大、増加する全身の神経線維腫に対して、drug repositioning法により既存薬剤から腫瘍抑制効果を有する候補薬剤を同定し、神経線維腫培養細胞における薬効メカニズムの確認とpreclinical modelにおける抗腫瘍効果の評価・検討をおこなう。
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研究実績の概要 |
神経線維腫症1型は遺伝性腫瘍症候群であり、多発性の良性である神経線維腫が疼痛、醜状、機能障害を引き起こすことが特徴である。多彩な形態や性質を有する神経線維腫が全身に発生し、数・大きさが成長とともに経時的に増加する。しかし、悪性腫瘍ではないため研究開発の対象としてはあまり注目されておらず、MEK阻害剤以外の薬物治療が保険診療内では存在しないアンメットニーズの領域となっている。日本には4万人以上の患者が存在し、治療法の開発が非常に求められている。 本研究は、神経線維腫症1型患者に発生する神経線維腫に対する新規治療法の基盤データを構築することを目的とした。2021-2022年度にかけて、神経線維腫の切除術を受けた患者から腫瘍組織を収集し、細胞株の樹立とPDXマウスモデルを作製することに注力した。しかし、良性腫瘍である神経線維腫は増殖速度が遅く生着率が低いため、PDXモデル確立には至っていない。さらに、神経線維腫細胞の継代が安定することが必要であるが、良性であるがゆえに細胞老化や膨大が早期に生じてしまい細胞株の樹立は困難であった。神経線維腫の組織片をトリプシンとコラゲナーゼで処理しているが、神経線維腫はシュワン細胞だけではなく線維芽細胞や肥満細胞など数種の細胞を含んでいるため、シュワン細胞のみを単培養することが難しい。ATCCから購入できるヒト叢状神経線維腫由来の細胞株を購入する方針に切り替え、順次計画していた実験系を今後進めていく。一方、引き続き患者検体からのPDXモデルの作製にも取り組み、近年明らかになってきた組織亜型に応じて「叢状神経線維腫」、「atypical neurofibromatous neoplasia with uncertain biological potential:ANNUBP]といった亜型による腫瘍原性の違いについても明らかにしたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
神経線維腫症1型患者の手術切除検体から細胞培養を継続してきた。培養が生着した後にANNUBPや悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST)と診断され、悪性のポテンシャルを含む腫瘍として対象外であることが続いた。我々の計画書では「良性」としての神経線維腫が研究対象であり、同様に保険承認されたMEK阻害剤についてもANNUBPとMPNSTは適応症としていない。腫瘍が経時的に神経線維腫→atypical neurofibroma→ANNUBPとそのentityが変化していくことが知られている。これら変化にはエピジェネティックな遺伝子変異が関連する。したがって、研究内容を改変し、ANNUBPまでを研究の対象として症例数を確保していく。PDXモデルの確立については、ヌードマウスでの生着が困難であり見込めないため、SCIDマウスでの手技を検討する。細胞培養でも悪性腫瘍と比べて増殖が緩徐であり難渋している。継代数を重ねると老化・膨化してしまい実験の再現性が得られなくなっている。継代数の少ない細胞で実験している制限もあり、in vitro実験は遅れている。アッセイの結果を踏まえて、候補薬剤を同定して購入した細胞株を用いてin vivoへ応用していく。最終年度になるが、各実験の結果をまとめ評価し、論文作成へつなげていく。
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今後の研究の推進方策 |
前述したように、市販されている神経線維腫細胞株を購入して、体系的なin vitro実験を実施できるよう務める。ATCCからは複数の系統が購入可能であり、NF1患者の叢状神経線維腫由来のものを用いる。申請時の目的である、神経線維腫に効果的な既存薬の同定をメインストリームとしながら、良性である神経線維腫と「前がん状態」として認識されているANNUBPやatypical neurofibromaにおける共通点、相違点を探る。これらの細胞実験結果を充実し、リスト化・プロファイル化する。研究進捗として遅れているため、研究助手の一時雇用やデータと統計計算を管理する人員の雇用も視野に入れ、人件費の支払いに研究費を拠出する選択肢も検討される。患者検体の受領は受動的要因となるため、PDX作製に関してはSCIDマウスへの移植を試みて生着率の向上を図る。良性腫瘍の異種移植であり、in vino実験に関してはnf1遺伝子改変マウスを利用する実験系しか成立しない可能性も考えられるが、神経線維腫のPDXマウス樹立は困難という陰性結果も関係者や関連学会において重要な知見と報告できる。組織採取や細胞継代で得られた知見は次年度の学会で発表していくつもりである。
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