研究課題/領域番号 |
21K09340
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56030:泌尿器科学関連
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研究機関 | 社会医療法人厚生会中部国際医療センター(研究支援センター) (2022) 岐阜大学 (2021) |
研究代表者 |
水谷 晃輔 社会医療法人厚生会中部国際医療センター(研究支援センター), がん研究部, 主任研究員 (80397356)
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研究分担者 |
藤田 泰典 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (30515888)
加藤 卓 藤田医科大学, 医学部, 准教授 (50596202)
川上 恭司郎 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (90589227)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | パーフォリン / 前立腺癌 / リポソーム / エクソソーム / 細胞外小胞 / 遺伝子導入 / 癌免疫 / 遺伝子導入療法 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、進行癌に対する免疫療法の効果が示されているが、癌腫(前立腺癌など)によっては更なる改善が望まれる。本研究ではリンパ球が癌を攻撃する際に分泌するパーフォリンを前立腺癌細胞自体に発現させ癌免疫を増強するという新しい癌治療法の確立を目指す。具体的にはパーフォリン発現用遺伝子を細胞外小胞(エクソソーム)に内包し、さらに前立腺癌特異的抗体をエクソソームに付加して前立腺癌特異的にパーフォリンを発現させるエクソソームを作成し、その抗癌効果をin vitroおよびin vivoで検討する。
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研究実績の概要 |
本研究では、免疫担当細胞であるリンパ球が癌細胞を攻撃するために分泌するパーフォリンをエクソソームを担体として利用することにより、パーフォリンを癌細胞に発現させる新しい治療法の開発を目的とした。パーフォリンを癌の微小環境で増加させリンパ球の癌増殖抑制効果を増加させるため、前立腺癌をモデルとして使用した。PSAは前立腺特異的に発現しており、臨床では腫瘍マーカーとして利用されている。そこでPSAプロモーターによってパーフォリンを発現するPSAパーフォリン発現ベクターを作成しリポソームに内包した。PSAパーフォリン発現内包リポソームは、PSAを発現するドセタキセル耐性前立腺癌細胞株(22Rv1DR)に投与するとパーフォリンを発現し、ヒト末梢血(PBMC)との共培養で有意に22Rv1DRの増殖抑制効果を示した。さらに22Rv1DRのマウスxenograftモデルでも同様の腫瘍抑制効果を示した。腎癌は特異的なマーカーが明らかとなっていたいため、テトラサイクリンでパーフォリン発現するベクターを作成し、腎癌細胞株(Caki-1)に遺伝子導入を行ったところ前立腺癌と同様にPBMCとの共培養で有意な腫瘍増殖抑制効果を認めた。以上からパーフォリンリッチな癌微小環境を誘導することはリンパ球との共存において抗腫瘍効果をもたらすことが示された。次いで、PSAパーフォリンベクターをヒト血液から精製したエクソソームに導入した。PSAパーフォリン発現ベクターエクソソームを前立腺癌細胞に添加すると前立腺癌細胞はパーフォリンを発現したため、PSAパーフォリン発現内包リポソームと同様に有望な抗腫瘍効果をもたらすと予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終的な目標はエクソソームを担体としてパーフォリン発現ベクターを投与することによって、癌細胞特異的なパーフォリン発現を誘導、パーフォリンリッチな癌微小環境を誘導することによって免疫担当細胞による癌細胞の攻撃を増強させることである。これまでの研究によって癌特異的にパーフォリンが発現する方法は、前立腺癌をモデルとしてPSAプロモーターを利用したPSAパーフォリン発現ベクターを作成することによって実現できた。さらにその投与方法を、PSAパーフォリン発現ベクターをリポソームに内包することによって実現した。抗腫瘍効果についてはPSAパーフォリン発現ベクター内包リポソームを前立腺癌培養細胞(22Rv1DR)及び前立腺癌細胞xenograftモデルに投与することによってin vivo、in vitro共にその効果を確認できた。さらに最終目標であるPSAパーフォリン発現ベクター送達のための担体をエクソソームにしたが、培養細胞における検討ではパーフォリンの発現は良好であった。以上から本研究は概ね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、前立腺癌においてパーフォリンリッチな癌微小環境は抗腫瘍効果に好まし影響をもたらすことが確認できた。さらにエクソソームへのPSAパーフォリン発現ベクター導入方法は確率しており、その前立腺癌細胞添加によってリポソーム内包ベクターと同様にパーフォリン発現が可能であることは確認できている。エクソソームは癌組織へのホーミングを得られる可能性があり、ドラッグデリバリーの担体として有望である。癌細胞への効率の良いパーフォリン遺伝子の送達はそのホーミング機能を利用することによって実現できる可能性がある。そのためにはまず癌特異的なエクソソームの精製が不可欠となるが、予備研究において前立腺癌表面に発現するPSMAを利用して前立腺癌特異的なエクソソームの精製に着手している。実際に回収した前立腺癌特異的エクソソームはPSA発現の確認によってその質が担保されることが分かった。そのためこの前立腺癌特異的エクソソームの収率を向上させ、前立腺癌特異的エクソソームにPSAパーフォリン発現ベクターを導入し、その抗腫瘍効果を確認することによってパーフォリンリッチな癌微小環境を治療した新しい癌治療法確立への基礎的なデータ収集を行う。
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