研究課題/領域番号 |
21K09407
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56030:泌尿器科学関連
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
藤本 清秀 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (50264867)
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研究分担者 |
堀 俊太 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (30623681)
藤井 智美 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (50623477)
三宅 牧人 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (80601400)
中井 靖 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (90445065)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 後腹膜肉腫 / 免疫チェックポイント阻害薬 / 同種性異所性肉腫モデル / 術前補助療法 / 周術期補助療法 / precision medicine / マウスモデル |
研究開始時の研究の概要 |
後腹膜腔に発生する肉腫は、外科摘除が治療の基本であるが、腹部主要臓器や大血管に隣接・浸潤することから、周囲組織を含めた広範摘除が望ましく、術後局所再発も高率で、根治率を向上のため顕微鏡的完全切除を目指した集学的治療が必要である。しかし、抗癌化学療法や放射線治療による周術期補助療法には限界があり、近年、免疫チェックポイント阻害剤 (ICI) が切除不能軟部肉腫の分野にも台頭し、有望な治療オプションとなりつつある。本研究では、CTLA-4・PD-1/PD-L1 標的 ICI、分子標的薬、化学療法を駆使し、理想的な術前補助治療の構築を介した precision medicine の確立を目指す。
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研究実績の概要 |
軟部組織肉腫、なかでも後腹膜腔に発生する後腹膜肉腫は特に希少であり、その上100種類前後の組織型が存在する。根治的治療は基本的に外科的切除術であり、切除不能例などには化学療法であるadriamycin、ifosfamide、eribulin、pazopanibや放射線照射などで治療される。しかし、それらの治療奏効率は決して高いとは言えない。近年、軟部組織肉腫に対する免疫療法によって全生存期間を延長させたという臨床研究が報告されており、特に免疫チェックポイント阻害薬を用いた治療は関心を集めている。しかし、希少癌ゆえに新規治療への研究はほかの癌腫に比べ遅れているのが現状であり、免疫チェックポイント阻害薬を用いた新たな治療戦略が急務と考える。 これまで我々は後腹膜肉腫の切除標本について免疫チェックポイント分子であるPD-1とそのリガンドであるPD-L1,PD-L2の発現が予後予測因子として関連しているか検証してきた。後腹膜肉腫の組織型として脱分化型脂肪肉腫、未分化多形肉腫、平滑筋脂肪肉腫、そしてその他の肉腫について計51例の術後予後とそれぞれの分子との関連を解析した。この研究で、後腹膜肉腫におけるPD-1、PD-L1、PD-L2の発現は予後因子としての新たな視点を与えた。メラノーマや腎癌など様々な癌腫で免疫チェックポイント阻害薬が基礎研究、臨床研究で奏功が示されており、軟部組織肉腫においても治療効果が期待されている。例えば、軟部肉腫と骨肉腫の患者に対して施行された抗PD-1抗体のpembrolizumabやnivolumab、抗CTLA-4抗体のipilimumabを使用した臨床研究が報告されており、免疫チェックポイント阻害薬の肉腫に対する治療効果が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自験例の後腹膜肉腫患者73例のうち51 例が術後に再発し、再発症例における 生存期間中央値が 39 ヶ月、5年生存率 42% であった。そこで術前治療(免疫チェックポイント阻害薬)により局所再発を抑制、もしくは増生を抑制できないかを in vitro, in vivoで実験を行うことにした。 免疫欠損マウスは使用せず、C3H マウスから樹立した肉腫細胞株 NCTC2472 を用いてsyngenic model を作成することとした。C3Hマウスの皮下にNCTC2472を注入し、同種性異所性肉腫モデルを構築することとした。皮下腫瘍の増生を確認し、ある程度増大したところで、外科的切除した後、一部の腫瘍では再発することを確認した。現在、モデル安定性、再現性を確認するために同様の動物実験を複数回行っている。 NCTC2472 を用いたsyngenic model の再現性を確認したが、術前化学療法や術前補助療法のモデルとして使用できるほどの安定した実験系の確立には至らなかった。そのため別の肉腫マウスcell lineであるMCA 205に変更して、同様に実験モデルとしての再現性を検証したところ、腫瘍生着率、タイミングなどにおいて今後の研究に適している可能性を示した。同時に、マウス肉腫細胞株やヒト肉腫細胞株を対象として、PD-1、PD-L1などの免疫チェックポイント分子の発現を、逆転写リアルタイム PCR,Western blot法、免疫細胞染色を行い検討を進めている。逆転写リアルタイム PCR では、PD-L1の発現が報告されている泌尿器科系悪性腫瘍(腎細胞癌や膀胱癌)と比較するとマウス肉腫細胞株はそれらよりはやや低いものの免疫チェックポイント分子の発現は確認できた。Western blot 法、免疫細胞染色、免疫組織染色でも同様にマウス肉腫細胞株にPD-L1の発現をみとめた。
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今後の研究の推進方策 |
細胞株(MCA205)でのマウス肉腫局所再発モデル作成の再現性を確認できれば、化学療法(アドリアマイシン、ボトリエント)と免疫チェックポイント阻害薬の単剤投与群や併用群の比較を行い術前補助療法としてどの治療が適切か検討したいと考えている。また、ここに放射線治療の比較、併用なども行うことができればと考えている。 今後は、ヒト肉腫細胞株を用いた免疫不全マウスの異種性異所性皮下腫瘍モデルも検討している。免疫不全マウスのため免疫療法の有効性を検討することはできないが、術前補助療法として化学療法や放射線療法の比較実験を行い、局所再発抑制を中心とする解析を行うことも検討している。安定した局所再発モデルの作成ができれば免疫チェックポイント阻害薬を用いた術前補助療法による局所再発のin vivo実験を進めていきたい。
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