研究課題/領域番号 |
21K09440
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56040:産婦人科学関連
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
清野 学 山形大学, 医学部, 講師 (40594320)
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研究分担者 |
永瀬 智 山形大学, 医学部, 教授 (00292326)
太田 剛 山形大学, 医学部, 准教授 (50375341)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | グルタチオン / 卵巣明細胞癌 / パクリタキセル / フェロトーシス / 卵巣癌 / 明細胞癌 / スルファサラジン / 治療抵抗性 / 活性酸素種 |
研究開始時の研究の概要 |
卵巣癌は再発しやすい疾患である。再発卵巣癌の多くは治療抵抗性を獲得することが知られており、治療困難となる。従来から抗がん剤抵抗性の原因の一つとして抗がん剤によって誘導される活性酸素種を抗酸化物質であるグルタチオンが抑制することが報告されているが、グルタチオンを標的とした治療は未だ臨床応用されていない。本研究では、卵巣癌のグルタチオン合成経路を治療標的とした治療戦略を確立させることを目的とする。
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研究実績の概要 |
【研究方法】明細胞癌細胞株 (TOV21G, RMG-1, HAC-2, ES-2)を用い、それぞれの細胞株にpaclitaxelとスルファサラジン(SAS)の単剤またはpaclitaxelとSASを併用投与し、1) 細胞増殖能についてMTSアッセイで検討、2)ROS産生をフローサイトメトリーで検討、3)apoptosis誘導をウェスタンブロットで検討した。4)ferroptosis阻害剤(ferrostatin-1)を用いて細胞増殖能に対する影響をMTSアッセイで検討した。5)GSH代謝経路関連蛋白の発現をウェスタンブロットで検討した。6)paclitaxelとSAS併用による抗腫瘍効果をRMG-1の異種移植モデルで検討した。 【結果】HAC-2を除いたすべての明細胞癌細胞株でpaclitaxelとSASの併用投与はそれぞれの単剤投与と比較して1)細胞増殖能を抑制し、2)ROSの産生が増加し、3)apoptosis誘導を増強した。4)ES-2のみpaclitaxelとSASの併用投与による細胞増殖抑制効果がferrostatin-1で解除された。5)HAC-2では他の細胞株に比較してシスタチオニンガンマリアーゼ(CGL)発現が上昇しており、ES-2では他の細胞株に比較してグルタチオンペルオキシダーゼ(GPx4)の発現が低下していた。6)paclitaxelとSASの併用投与によってそれぞれの単剤投与と比較して抗腫瘍効果の増強を認めた。 【結論】明細胞癌細胞株ではCGLが高発現であるとSASの細胞死誘導効果が低下する。SASとpaclitaxelの併用投与で誘導される細胞死の主たる機序はapoptosisであるが、GPx4が低下しているとferroptosisも誘導されることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究当初の予想通り、多くの明細胞癌細胞株でpaclitaxelとSASの併用投与によりpaclitaxelの効果を増強することが確認できた。さらに個々の細胞株の違いを細かくウェスタンブロットなどで検討することで、グルタチオンペルオキシダーゼ(GPX4)の発現が低下している細胞株(ES-2)ではフェロトーシスを誘導すること、シスタチオンガンマリガーゼ(CGL)が上昇している細胞は、SASの効果が乏しいことが分かった。これらは卵巣明細胞癌では新たな知見であり、現在論文投稿を行っておりおおむね順調と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後はSASでは効果がなかったシスタチオンガンマリガーゼ(CGL)高発現の細胞株に対し有効な治療戦略を開発するため、CGL阻害薬の併用治療などが臨床応用可能かどうか、CGL発現が治療予測マーカーになりうるかなど検討を行っていく予定である。
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