研究課題/領域番号 |
21K09477
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56040:産婦人科学関連
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
土屋 裕義 自治医科大学, 医学部, 講師 (80508755)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | バソプレッシン受容体 / オキシトシン受容体 / 早産 / 分娩 / AAV / RNAi / プロスタグランジン受容体 / アデノ随伴ウイルス |
研究開始時の研究の概要 |
近年、社会環境の変化による早産のリスクが増加している。現在の早産の第一選択薬はリトドリンであるが、高頻度の有害作用と早期の有効性消失が問題となる。申請者は新たなターゲットとしてバソプレッシンV1a受容体を提起する。最近、申請者らはバソプレッシンV1a受容体欠損マウスで分娩遅延を見出した。これはV1a受容体の遮断薬が早産治療薬となり得ることを示す。本研究ではV1a受容体の収縮メカニズムの解析を端緒に、早産に有効な薬物ターゲットの探索を行う。解析は細胞を用いた探索系と、マウス個体を用いて遺伝子制御を行う実験系を並行して行う。本研究によって得られる知見は、多彩な早産治療薬の開発につながる。
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研究実績の概要 |
今回の研究では分娩機能解析として恒常的な全身性の遺伝子欠損マウスではなく、アデノ随伴ウイルス(AAV)感染とRNAi技術を組み合わせて後天的な遺伝子欠損を起こしたマウスを用いて、分娩機能を観察しようとしている。 前年度までの解析からセロタイプの選定を終え、実際にマウスに感染させるAAV種を決定した。しかしながら、これまで肝臓などでは報告があるが、当該AAV種のマウスの生殖組織への導入を試みた報告はなかった。したがって、まず目的の配列(オキシトシン受容体)の組み込んでいないAAVを感染させ、生殖組織に分布するかどうかを解析した。その結果、positive controlである肝臓では適当な実験系の構築によって、AAV感染のマーカーであるGFPの蛍光が強く観察された。一方で、生殖組織では自家蛍光によるバックグラウンドが高く、GFPの蛍光ではAAVの感染した細胞と特定できない状態であった。そこで、その問題を解消すべく、抗体によりGFPタンパク質を間接的に検出する方法を検討した。しかしながら、今回のAAVに組み込まれているhrGFPは一般的なオワンクラゲ由来のGFPではなく、人工的に作られたタンパク質であるため検出可能な抗体が市販されていなかった。現在、抗体での検出を諦め、感染細胞内のhrGFPの遺伝子配列を核酸として検出する方法に切り替え実験を進めている。 また、分娩に影響を及ぼす薬物の探索を行っているが、その解析においてレトロゾールに遅延(妊娠期間の延長)をもたらす作用があることが分かった。レトロゾールはエストロゲンの合成酵素阻害薬である。さらに、レトロゾールによって遅延した出産で誕生した新生仔をその後8週齢になるまで成長を追跡したが、対照群と成長に差は見られなかった。現在はレトロゾールで観察された遅延を端緒として、関連する物質で同様な解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね当初の予定通りに進んでいる。新型コロナウイルスの影響もほとんど無くなり、通常の研究環境に戻りつつある。実験においても、想定の範囲内で遂行されている。自身の新型コロナウイルス罹患のため、一時実験を停止し、予定した解析を進めることができなかったときもあったが、それ以外は順調である。しかしながら、物価高騰の影響で試薬価格が上がってしまい必要な実験を終える前に研究資金が枯渇してしまうことを危惧する。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、予定している解析を進めていく。今年度はAAV感染による子宮のオキシトシン受容体の発現低下を誘導し、分娩制御を行う実験を予定している。そのためにはまず、AAVの子宮への導入を明らかにする事が必要である。また、これまでの解析から出産を遅らせることができる薬物の候補が見つかっているため、その類縁物質を同様に解析し、その結果を集積することでそれらがどのようなメカニズムで働くかについて解析を進めていく。 こうした研究で得られた知見を適宜学会で発表するとともに、新たな情報を獲得し今後の研究の方向性を見出していく。
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