研究課題
基盤研究(C)
子宮内膜、妊娠により子宮内膜が変化した脱落膜および全身を循環している血液における免疫を司る細胞の機能分担と機能発現、特に排卵後から妊娠初期にかけて子宮内膜で増加するNK細胞に着目し、NK細胞におけるNatural Cytotoxicity Receptorを中心とした各種受容体発現の変化、NK細胞によるサイトカイン産生の妊娠の成立および維持に関する役割および生理現象の詳細を明らかにする。さらに妊娠成立時の子宮内膜に対する精液の役割を検討するとともに、精液と子宮内膜との相性を検討し、体外受精・胚移植を用いた精液による免疫異常に対する新規治療法開発を目指す。
子宮内膜におけるNK細胞表面に発現する活性性受容体であるCD16およびNKp46と他の活性性あるいは抑制性受容体との共発現を測定し、その生理学的意義、不妊症(着床不全)・不育症への関与を解明すること、さらには免疫担当細胞の妊娠の成立および維持に関する役割を明らかにすることを目的として、検討を行った。すなわち、子宮内膜組織を着床不全患者、不育症患者より、脱落膜組織を流産手術時の余剰脱落膜より採取した。採取組織を単細胞レベルまで粉砕し、NK細胞浮遊液を作成のうえ、子宮内膜NK細胞表面抗原(NK細胞のマーカーであるCD56、活性性受容体としてCD16、NKp46、NKG2C、NKG2D、抑制性受容体としてCD158a、NKG2A)発現およびサイトカイン産生(IFN-γ、TNF-α、IL-4、IL-10)をフローサイトメトリーにて測定した。①脱落膜における検討:流産例のうち絨毛染色体検査が正常群では、絨毛染色体異常群に比して、NKp46+NK細胞、NKp46brightNK細胞が有意に低値であった。NKp46+NK細胞のカットオフ値は86.5%(感度83.3%、特異度100%)、NKp46brightNK細胞のカットオフ値は70.9%(感度66.7%、特異度90.9%)であった。NKp46発現低値群では、NK1/NK2比(IFN-γ/IL-4比およびTNF-α/IL-10比)が有意に高値であった。②子宮内膜における検討:妊娠成立の有無で検討すると、Kp46+NK細胞のカットオフ値は 75.2%(感度50.0%、特異度77.8%)、NKp46brightNK細胞のカットオフ値は93.6%(感度64.3%、特異度72.2%)であった。以上より脱落膜および子宮内膜のNKp46発現により、染色体正常流産の有無、妊娠成立の有無を予測できる可能性を示した。
3: やや遅れている
子宮内膜および脱落膜のNK細胞からその後の妊娠予後を測定できる点では順調に進行した。また子宮内膜を用いたNK細胞における活性性および抑制性受容体共発現測定およびサイトカイン産生は行えた。さらに精液による子宮内膜各種受容体による細胞分離後のサイトカイン産生も測定してはいるが、まだ十分ではない、翌年度も継続して検討を行い、十分な結果を出したい。
今後は現在行っているNK細胞における活性性受容体および抑制性受容体の共発現およびサイトカイン産生についての測定を継続するとともに、NK細胞をさらに各種受容体発現により細分化し、それらの機能発現を明らかにしていきたい。
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