研究課題
基盤研究(C)
選択的エストロゲン受容体調節薬であるタモキシフェンは、閉経前ホルモン受容体陽性乳癌に対する術後内分泌療法薬として使用される一方で、妊孕性の低下や子宮体癌発症リスクの増加といった薬物有害反応を引き起こす。本研究は、マウスモデルを用いた解析により、短ー中・長期間のタモキシフェン暴露が子宮内膜にもたらす細胞変化の分子機構を調べ、妊娠や生殖サイクル、子宮環境への影響を検証する。
乳がん患者に使用されるタモキシフェンが子宮機能に与える影響について、マウスモデルでの解析に取り組んだ。雌マウスへの1ヶ月間の暴露は、その後の休薬期間を挟んでも妊娠率の低下を引き起こし、子宮内膜の器質的変化を生じさせた。暴露個体では初回妊娠時の排卵数、着床数の減少が認められ、妊娠中の血中プロゲステロン濃度には影響を与えないものの、胎盤の形成異常(流産部位)の増加や、分娩の遅延傾向も認められた。これらのことから、タモキシフェン暴露は妊娠の様々な段階に影響を及ぼし、妊孕性を低下させることが明らかになった。子宮上皮における腺形成能の亢進は、子宮体癌の発症リスクを増大させる要因になると考えられた。
タモキシフェンは5年間の投与で乳癌の再発を有意に抑えるが、10年間の使用でさらに効果が高まることが報告されている。タモキシフェンが長期間使用される頻度が増えるに従い、弊害としての妊孕性低下や子宮における発がんリスク増加の機序解明は重要である。本研究は実験的処置から、タモキシフェン暴露がマウスにおいても妊孕性低下や子宮の器質的変化を生じることを明らかにした。子宮腺形成に関わるシグナル亢進が子宮体癌の発症に重要である点については、代表者らが過去に報告しており、本研究と合わせて、子宮腺形成に関わるシグナル亢進と子宮間質異常が、タモキシフェン暴露が発がんに深く関与する理由ではないかと考える。
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