研究実績の概要 |
本邦では不妊患者が急増しており、その要因として高齢不妊が挙げられる。高齢不妊では残存卵胞の減少と老化による卵子の質の低下が同時におこるため、難治性の不妊となる。しかし、老化による卵子の質の改善法は未だ確立されておらず、また卵子老化の程度を非侵襲的に個別評価する方法も存在しない。従って高齢不妊患者では自己の卵子を用いた妊娠は困難であり、卵子提供による体外受精胚移植(IVF-ET)以外に確実な治療法はない。しかし、本邦では倫理的観点などから提供卵子は普及しておらず、自己の卵子を得て妊娠できるような新たな治療法の開発が急務である。近年老化とオートファジー、オートファジーと卵子の質の関連性が示された。そこで本研究では高齢不妊における卵子の質の低下とオートファジー活性レベルの低下の関与と、その分子機構を明らかにしつつ卵子の老化の評価法と老化卵子の質の改善法を開発することを目的として以下の研究項目を計画する。まず、老化によるオートファジー活性低下と卵子の質の低下の分子機構の解明として、オートファジー関連遺伝子(Atg5, Beclin1, p62, LC3b)の発現変化とp62のリン酸化を測定した。また、高齢および若齢マウス卵子におけるミトコンドリアのROS産生量を測定し、老化とオートファジーの関連性について評価した。また、本年度は非侵襲的な方法で卵子の老化を評価する方法の開発項目として、高齢および若齢マウスの排卵卵子周囲の卵丘細胞をヒアルロニダーゼ処理にて採取し、オートファジー関連遺伝子(Atg5, Beclin1, p62, LC3b)の発現量を定量的RT-PCR法にて測定し、非侵襲的に老化を評価できるかを調べた。また、ヒト卵丘細胞におけるオートファジー関連遺伝子 Atg5, Beclin1, p62, LC3bの発現量で卵子の老化を評価可能であるか検討している。
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