研究課題/領域番号 |
21K09557
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56050:耳鼻咽喉科学関連
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
堤 剛 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (90302851)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 耳石眼反射 / 重力認知 / 頸眼反射 / 平衡障害 / リハビリテーション / 遠隔診療 / 高齢化社会 / 転倒 / 眼位 / 三次元解析 |
研究開始時の研究の概要 |
高齢者や慢性めまい症例のふらつきに伴うQOL改善や、転倒・骨折にかかわる医療費の削減、認知症への進行予防を目的とする。頭位傾斜や視覚刺激外乱を負荷した際の眼位を三次元解析により数値化し、ふらつきの認知のパラメータとして確立する。高齢者や慢性めまいにおけるふらつきと転倒リスクの定量評価と、高リスク例への転倒予防リハビリテーションスキーム開発のための指標の確立を行う。厳密な生理学的検討のため、マウスにおける眼位の三次元計測システムの改良と各種刺激負荷システムを構築し、野生型および内耳障害モデルマウスでの病態解明と、ヒトでの研究へのフィードバックを行う。
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研究実績の概要 |
頭部傾斜の際の耳石器由来の静的前庭動眼反射に加え、頸部側屈に伴う静的頸眼反射が存在することを定量的計測により世界で初めて証明、論文化した。 ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を利用したビデオ眼振計を新規開発し、クラス2の医療機器認証を取得した。また遠隔診療やデータ共有のためのサーバシステムを整備し、診療所での検査データを専門医が解析するシステムを準備している。さらにこのシステムに新たな検査を実装するためとしてビデオヘッドインパルス検査(vHIT)を実装し、現行の200Hzでの検査機器との比較検証を実症例を対象に進めている。加えて、自覚的視性垂直位検査(SVV:自覚的重力認知機能を定量化する検査)と耳石眼反射検査(Ocular Counter-Rolling:耳石眼反射を定量化する検査)の開発・検証を進めている。前庭リハビリテーションの実装についても、前庭動眼反射のトレーニングを一部作成した。今後リハビリテーション種目の拡大と併行して実症例での検証実験を開始する予定である。さらに、近年慢性めまいによるQOL低下と経済損失の大きさから注目され数年前に国際診断基準が策定された持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)について、本機器を用いた他覚所見からの診断法の確立について想起し、現在予備実験を進めている。 重力認知機能を他覚的に定量化するための手法として、健常被験者を対象に回転刺激負荷後およびコリオリ刺激(等角速度回旋座標系上での直線移動)負荷下での耳石眼反射の計測手法を新たに開発し、その特性評価を進めている。 マウスを対象とした基礎研究では、温度刺激検査や傾斜刺激下の耳石眼反射(我々が新たに開発)を含む前庭機能検査システムを整備し、Pendred症候群のモデルマウスであるSlc26a4 KOマウスの前庭機能特性評価を行い論文投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID-19のパンデミックにより実症例を対象とした研究は引き続き制約を受けたが、逆に健常被験者を対象とした研究とマウスを対象とした研究については大幅に進展させることができた。滞っていた機器供給も少しずつ回復し、実験設備の拡充も徐々に行えて来ている。 頭部傾斜の際の耳石器由来の静的前庭動眼反射に加え、頸部側屈に伴う静的頸眼反射が存在することを定量的計測により世界で初めて証明、論文化した。 ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を利用したビデオ眼振計を新規開発し、クラス2の医療機器認証を取得、市販を開始した。また遠隔診療やデータ共有のためのサーバシステムを整備し、診療所での検査データを専門医が解析するシステムを準備している。さらにこのシステムに新たな検査を実装するためビデオヘッドインパルス検査(vHIT)のプログラムの比較検証を実症例を対象に進めている。前庭リハビリテーションの実装についても、前庭動眼反射のトレーニングプログラムを作成・実装した。PPPDの実症例における本機器を用いた新たな眼球運動検査による他覚的診断法の確立についても、予備実験を進めている。 重力認知機能を他覚的に定量化するための手法として、我々の開発したHMDビデオ眼振計をmodifyし、自動回転台と組み合わせてシステム化し、健常被験者を対象に回転刺激負荷後およびコリオリ刺激(等角速度回旋座標系上での直線移動)負荷下での耳石眼反射の計測手法を新たに開発し、その特性評価をおこない論文化の最中である。 マウスを対象とした基礎研究では、温度刺激検査やVsEP(振動刺激下の耳石機能を脳幹の電位として記録)、傾斜刺激下の耳石眼反射(我々が新たに開発)を含む前庭機能検査システムを整備し、Pendred症候群のモデルマウスであるSlc26a4 KOマウスの前庭機能特性評価を行い論文投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
我々の解発した安価なHMDビデオ眼振計システムは新たな検査を容易に装用できる形となっており、重力認知機能計測のための新たな検査項目としてビデオヘッドインパルス検査(vHIT)のプログラムを実装し、現在検証実験を進めている。自覚的視性垂直位検査(SVV)と耳石眼反射検査(Ocular Counter-Rolling)の開発・検証も進める。さらに前庭リハビリテーションのシステムもここに実装することを想定して現在開発を進めている。 本機器は今後新たに種々の検査を実装するプラットフォームとして開発したが、現時点ではビデオ眼振計としてクラス2の医療機器認証を得ている。遠隔診療とデータ共有のためのサーバも整備が完了している。今回のCOVID-19のパンデミックで遠隔診療の需要が急速に増大しているのに加え、発作時にファーストタッチとなる診療所での所見の記録と専門施設でのデータ解析は診療精度の向上には必須である。また超高齢社会における転倒予防等のための前庭リハビリテーションは病院や診療所で行うのは時間的・経済的制約から難しく、自宅でのリハビリ施行とそのデータの遠隔管理システムの構築も喫緊の課題である。さらに、慢性めまいによるQOL低下と経済損失から近年注目されているPPPDについても、他覚的検査所見からの診断の可能性を想起し予備実験を進めている。本機器はこれらをすべて解決しうる画期的なシステムであり、実症例を対象とした研究を加速すべきと考えている。 マウスを対象とした基礎研究については、今後加齢性前庭障害の特性評価とリハビリテーションの手法の開発・検証のため、前庭有毛細胞障害モデルであるTmc2 KOマウスや、加齢性内耳障害/シナプトパチーモデルであるGluD1 KOマウスを対象とした前庭機能の特性解析に加え、野生型マウスを用いた破壊実験も進める予定である。
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