研究課題/領域番号 |
21K09561
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56050:耳鼻咽喉科学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
古後 龍之介 九州大学, 大学病院, 助教 (90529885)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | ctDNA / 頭頸部癌 / liquid biopsy |
研究開始時の研究の概要 |
血液中で検出可能な腫瘍由来の変異遺伝子はctDNAと呼ばれ、治療効果や再発のモニタリングに有用と考えられている。頭頸部癌では確立された腫瘍マーカーはなく、新規のバイオマーカーの開発が望まれている。我々は腫瘍マーカーと同様に血液中で検出可能なctDNAに着目した。症例特異的な遺伝子変異を次世代シーケンサーを用いて同定し、この変異遺伝子をctDNA候補遺伝子とし、digital PCRを用いて、血液中で検出、定量する。本研究ではctDNAモニタリングが、治療効果や再発の予測に有用かどうかを検討する。また、臨床応用を目指し、ctDNAの候補遺伝子の選定に最適な手法を検討する。
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研究実績の概要 |
最終年度の令和5年度は新たに5例の頭頸部癌の腫瘍組織、PBMC、血漿検体を採取した。このうち、3例は腺癌であり、内訳は唾液線導管癌が2例、RET遺伝子変異陽性甲状腺髄様癌が1例であった。唾液線導管癌は1例はHER2陽性(3+)、もう1例はHER2陰性であった。令和4年度に作成した血漿中HER2検出用primer-probeを用いて、血漿中のHER2をddPCRで定量した。血漿中のHER2は検出可能であったが、HER2 copy数の変化は病勢、治療効果を反映していなかった。血漿中のHER2は腫瘍細胞以外の正常細胞からも分泌されているものと思われ、腫瘍特異的な変異遺伝子を検出する方法が、治療のモニタリングには有用なことが示唆された。甲状腺髄様癌症例は血漿中のRET遺伝子変異を検出するprimer-probeを作成し、血漿中で検出した。本症例は多発骨転移例であり、選択的RET阻害剤であるセルペルカチニブの投与を開始した。セルペルカチニブ投与後、多発骨転移はSDを維持しているが、カルシトニン、CEAといった既存の腫瘍マーカーの低下と連動し、血漿中のRET遺伝子変異は速やかに検出不能となった。骨転移による疼痛も消失しており、血漿中のRET遺伝子変異のdynamicsは臨床効果を極めて鋭敏に反映していた。 また、令和3年度、4年度に収集を開始した血漿検体も継続して、収集し、cfDNAを抽出、保存しており、今後速やかに解析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最終年度は令和3年度、4年度に収集を開始した症例の血漿検体を継続して収集した。また、頭頸部領域の腺癌を含む頭頸部癌症例も新たに5例追加し、ctDNAの解析を行った。現在、total 57例(途中追跡不能症例も含む)の血漿検体を各症例複数採取しており、腫瘍組織の変異解析の追加、ctDNAの検出を行う予定である。症例数としては当初の目標症例の40-50症例をクリアしており、本研究は順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
腫瘍組織の変異解析を終了していない症例(20症例)について順次解析を進める。また、生存症例の血漿検体も3-4ヶ月に1回程度継続して採取する予定である。症例が蓄積するにつれて、これまで血漿中のctDNAを検出できた症例のうち4症例について臨床所見を正確にモニタリングできなかった。これらの症例については他の変異遺伝子をctDNA候補遺伝子として検出してみる等、追加実験を行い、原因の検索が必要である。複数のctDNAをモニタリングすることでこの問題は解決できる可能性がある。さらに、モニタリングに適したctDNAの特徴が分かる可能性がある。 また、今後化学放射線療法の治療開始前もしくは治療開始後早期に化学放射線療法の局所制御の成功率が予測できないかどうかを検討する予定である。治療開始前のctDNAプロファイルの解析、治療開始後のctDNA dynamicsを解析することで本問題を解決できるのではないかと考えている。
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