研究課題/領域番号 |
21K09582
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56050:耳鼻咽喉科学関連
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
寺岡 正人 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (40444749)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 音響性聴器障害 / 内耳シナプス / 易障害性 |
研究開始時の研究の概要 |
これまで有毛細胞死やらせん神経節ニューロンの消失が難聴の主な原因であり、騒音下での明瞭度低下の主因であると推定されていたが、近年難聴の病態として「cochlear synaptopathy」という新しい概念が注目されている。本研究では、異なる易障害性をもつ2種類の音響性聴器障害動物モデルを用いて、内耳における易障害性の差異を生理学的検査で証明するとともに、そのメカニズムを分子生物学的、病理組織学的に解明することを目的とする。種による音響暴露に対する障害性の違いを証明し、さらにそのメカニズムを解明することで、新たな難聴の治療や予防につながる可能性がある。
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研究実績の概要 |
これまで有毛細胞死やらせん神経節ニューロンの消失が難聴の主な原因であり、騒音下での語音明瞭度低下の主因であると推定されていたが、近年難聴の病態として「cochlear synaptopathy」という新しい概念が注目されている。本研究では、異なる易障害性をもつ2種類の音響性聴器障害動物モデルを用いて、内耳における易障害性の差異を生理学的検査で証明するとともに、そのメカニズムを分子生物学的、病理組織学的に解明することを目的とする。騒音性難聴モデルはさまざまな研究で用いられているが、騒音の曝露量や曝露時間によって異なる障害がみられることが分かっている。 2021~2023年度は主に騒音環境の整備と聴力評価を中心に行った。具体的には意識下のマウスに騒音暴露室で90~116デシベルSPL、中心の周波数8~32キロヘルツのブロードバンドノイズの音響暴露を2時間加えた。聴力閾値の測定はプロトコールに準じ、暴露前、Day1、Day7、Day14に麻酔(ケタラール腹腔内投与)下でのABRを測定した。針電極を頭頂部、耳介後部と大腿部皮下に挿入し、マイクロホンを介してトーンバースト刺激を与え、10デシベルステップで音圧を変化させ閾値を測定した。ABR閾値は8、16、32キロヘルツの各周波数で求めた。Preliminalyな研究では、100-116dBでの音響暴露に対するABR閾値において、実験動物による易障害性の差異がみられた。また、ABR閾値は100dBおよび110dBの音響暴露では各周波数ともDay14において閾値上昇の改善が見られなかったが、90dBの音響暴露ではDay14において閾値改善を認め、synaptopathyが生じている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
所属研究室では、内耳の研究・診療の豊富な実績を有しており、虚血性内耳障害モデルを基に多くの論文を報告している。とくに実験動物のABR機器を用いた聴力評価については問題なく行うことができる。しかしながら音響性聴器害モデルについては経験がなく、騒音環境の整備や実験動物の管理等の問題で安定した実験データを得られていない。2021年度に購入予定であった騒音曝露装置が世界情勢の影響もあり、納品が大幅に遅れていたが、2022年度に購入し、騒音環境の整備を完了した。また実験動物の見直しが必要であり、C57BL/6マウスとBalb/cマウスを用いて音響暴露に対する易障害性の差異を検証する必要があった。 以上の理由から計画に遅れが見られているが、騒音性モデルマウスの安定した作成ができるようになったため、今後は組織学的な詳細な解析を中心に進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
57BL/6マウスとBalb/cマウスは免疫応答に対する反応性の差異が報告されている。そのため、音響暴露に対する炎症反応にも違いがみられることが予想される。同動物種を用いたPreliminalyな研究では、100-116dBでの音響暴露に対するABR閾値において、易障害性の差異がみられた。さらに暴露音圧の程度による騒音性モデルマウスの安定した作成ができるようになった。今後は組織学的な詳細な解析を中心に進めていく予定である。具体的にはモデルマウスを用いて騒音の曝露量および曝露時間を異なる程度で負荷し、一過性閾値上昇モデルおよび永続性閾値上モデルを作成する。組織学的検討では、まずは有毛細胞の評価として実態顕微鏡下にコルチ器を採取し、得られた標本をrhodamine-phalloidinにて染色を行い、UVフィルターを用いて蛍光顕微鏡下に有毛細胞数をカウントする。また、免疫染色を用いて内耳シナプス数をカウントし、障害による差異を検証する。さらに時間的に余裕があれば、蝸牛組織の分子生物学的検討により、詳細な機序の解明につなげていく。
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