研究課題
基盤研究(C)
中耳貯留液中には血清中に存在しない自己抗体や、自己抗体の産生に関与している様々なサイトカインが存在していると考える。中耳貯留液中に特異的なバイオマーカーは存在するのか? 、中耳貯留液から分かるANCA関連血管炎性中耳炎と通常の成人滲出性中耳炎の病態の違いは?という問いのもと、治療の過程で患者より採取した中耳貯留液を用いて自己抗体やサイトカインの解析を行う。中耳の病態解明によって、中耳貯留液を用いた早期診断法の確立と診断薬の開発につなげる。
ANCA (anti-neutrophil cytoplasmic antibody)関連血管炎性中耳炎 (Otitis media with ANCA associated vasculitis: OMAAV)は、自己免疫を機序とする難治性中耳炎である。主にproteinase3 (PR3)、myeloperoxidase(MPO)が主要抗原となり、病態と関わっていることが分かっているが、疾患発症のメカニズムや、中耳おける病態は未だ不明な点が多い。本研究では、中耳貯留液中の炎症局所で産生されるサイトカインの解析によって、治療標的となりうるサイトカイン について検討した。OMAAV患者及びコントロールとして通常の成人滲出性中耳炎患者より回収した中耳貯留液中のサイトカイン濃度について比較検討した。中耳貯留液中のIL-1β、IL-2、IL-6、IL-12、IL-17、IFN-γ、TNF-αについてBio-Plex Human cytokine assayを用いて解析した。対象はOMAAV群17例(年齢中央値70歳、女性比率65%、血清PR3-ANCA陽性5例、MPO-ANCA陽12例)、control群として成人滲出性中耳炎13例(年齢中央値71歳、女性比率54%)であった。中耳貯留液の性状はOMAAV群で(serous 15例/mucoid 2例)、control群で(serous 10例/mucoid 3例)であった。中耳貯留液中のサイトカイン濃度を両群で比較すると、IL-6がOMAAV群において有意に高値であった(OMAAV:中央値50.9 ng/ml、control:中央値3.6ng/ml、p=0.03)。その他のサイトカインは両群で有意差を認めなかった。また、OMAAV群の中で、MPO-ANCA陽性群と、PR3-ANCA陽性群に分けて比較すると、MPO-ANCA陽性群でTNF-αが高い傾向にあった(MPO:中央値0.7ng/ml、PR3:中央値0.2ng/ml、p=0.04)。OMAAVの中耳貯留液中には高濃度のIL-6発現を認めた。IL-6標的薬はOMAAVに対する治療選択肢となりうる可能性がある。
3: やや遅れている
現時点で、論文作成にまで至っていない点において当初の計画よりも遅れている。
研究と現時点で得られた結果を論文にまとめ、海外ジャーナルへ投稿する。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
嚥下医学
巻: 11巻 ページ: 2186-3199
Auris Nasus Larynx
巻: 48 号: 1 ページ: 2-14
10.1016/j.anl.2020.07.004
Otolaryngology Case Reports
巻: 21 ページ: 100345-100345
10.1016/j.xocr.2021.100345
JOHNS
巻: 37 ページ: 1041-1045