研究課題
基盤研究(C)
中耳貯留液中には血清中に存在しない自己抗体や、自己抗体の産生に関与している様々なサイトカインが存在していると考える。中耳貯留液中に特異的なバイオマーカーは存在するのか? 、中耳貯留液から分かるANCA関連血管炎性中耳炎と通常の成人滲出性中耳炎の病態の違いは?という問いのもと、治療の過程で患者より採取した中耳貯留液を用いて自己抗体やサイトカインの解析を行う。中耳の病態解明によって、中耳貯留液を用いた早期診断法の確立と診断薬の開発につなげる。
ANCA(Anti-neutrophil cytoplasmic antibody)関連血管炎性中耳炎(OMAAV:Otitis media with ANCA associated vasculitis)は、難治性中耳炎と骨導閾値上昇を呈する自己免疫の関与する疾患である。その経過中、頭痛や脳神経障害が出現し、肥厚性硬膜炎を合併する症例が存在する。OMAAVに合併した肥厚性硬膜炎の臨床的特徴、画像所見の特徴について検討した。症例は28例(男性12例、女性16例、年齢32-84歳、平均62歳)で、MPO-ANCA陽性15例(53.6%)、PR3-ANCA陽性4例(14.3%)、両陰性9例(31.4%)であった。初発症状は難聴を全例に認め、頭痛の有無について記載のあった20例中18例で頭痛を認めた。合併した脳神経障害は、内耳神経28例(全例に難聴、25例に骨導閾値上昇あり)、次いで顔面神経11例、外転神経4例、三叉神経3例であった。肺病変は4例、腎病変を合併した症例は認めなかった。造影MRI検査の所見と記載より把握しえた硬膜肥厚部位は、中頭蓋窩9例、側頭葉硬膜8例、小脳テント8例、後頭蓋窩5例、内耳道硬膜4例、前頭蓋窩2例、前頭葉3例、大脳鎌3例(部位の重複あり)であった。組織検査は14例に対して施行し、生検部位は乳突洞10例、硬膜4例であった。乳突洞生検では、肉芽腫を8例、壊死を2例、血管炎の所見を2例に認めた。硬膜生検では1例で肉芽腫性炎症の所見を認め、1例でIgG4陽性形質細胞浸潤、2例は非特異的な炎症細胞浸潤であった。このような臨床的特徴をふまえ、OMAAVに続発する肥厚性硬膜炎を疑った場合は速やかな造影MRIによる検査と診断、治療開始が望まれる。
3: やや遅れている
中耳貯留液は採取量が微量であるため、先行して行ったサイトカインや、ANCAの解析によってほとんどの検体を使用したため当初予定していた好中球細胞外トラップの解析まで行うことはできなかった。
微量な検体量で検査を行うことができる中耳貯留液の質量分析を行うことによって、疾患特異的なマーカーを同定する。これまで得られた解析データと臨床データとの関連性を検討していく。
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