研究課題/領域番号 |
21K09598
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56050:耳鼻咽喉科学関連
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター) |
研究代表者 |
務台 英樹 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), その他部局等, 研究員 (60415891)
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研究分担者 |
奈良 清光 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), 聴覚・平衡覚研究部, 研究員 (40260327)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 難聴 / 原因遺伝子 / ゲノム編集 / 疾患モデル動物 / 網羅的発現遺伝子解析 / スプライシング / モデル動物 / 相互作用分子 |
研究開始時の研究の概要 |
私たちは原因不明の難聴患者家系に対する全エクソーム解析を実施し、新規難聴原因遺伝子SLC12A2 の同定に成功した。本研究の目的は、本遺伝子の蝸牛組織特異的スプライシング制御機構の解明、スプライシングを受ける領域の相互作用分子の探索、動物モデルでの検証を通じ、SLC12A2 が真の難聴原因であることを厳密に証明すると共に、治療標的を同定することである。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、代表者が同定・報告した新規難聴原因SLC12A2のモデルマウスの病態解析を通じて、本遺伝子が真の難聴原因であることを証明することである。 令和4年度は、前年度に引き続き、Slc12a2 exon 21スプライス変異を導入したマウス2系統(Em1, Em2と称する)のうちEm2系統蝸牛における網羅的発現遺伝子解析を実施した。難聴を示すEm2/Em2および聴力正常の野生型ホモ4週齢のマウス各3頭より全蝸牛組織から抽出した高品質total RNAを用い、文部科学省先進ゲノム支援の助成を得てRNA-sequencingを実施し、Em2/Em2蝸牛において発現量が野生型の2倍以上となる142遺伝子、半分以下となる554遺伝子を見出し、Gene Ontology解析も実施した。これらのうち複数の遺伝子産物について、実際にqRT-PCR法を用いて生後1日、12日、および4週齢における発現量を測定しEm2/Em2, Em2/+, および野生型蝸牛間で比較検討した。一部の遺伝子については免疫組織化学解析による検討を開始した。 また、Em2系統と表現型 (ABR閾値) が異なり、導入された変異がEm2とわずかに異なるEm1マウス系統について、Slc12a2発現産物の解析を実施し、スプライシングアッセイ用のベクターを作成し解析を実施した。さらに、以前に作成したヒトゲノムを用いたスプライシングアッセイ用ベクターの結果とも比較した。これにより、exon 21アクセプターサイト上の塩基配列の差異がスプライシングに与える影響を及ぼすことが明らかとなった。脊椎動物100種類における、Slc12a2のexon 21スプライシング領域塩基配列との比較検討も実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の文部科学省 新学術領域研究「先進ゲノム支援」(16H06279 (PAGS))の協力を得て、モデルマウスの蝸牛組織を用いた網羅的遺伝子発現量解析をRNA-seq法により実施できた。Slc12a2を原因とする遺伝性難聴の発症分子病態の一部解明ができたと考えており、当初の計画をはるかに上回る結果を得ている。一方、令和4年度に計画した蝸牛内電位測定は、手技習得の困難さを原因として、意義のある成果が得られなかった。以上により、進捗状況は「おおむね順調」とした。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、Slc12a2 exon 21スプライス変異による蝸牛組織に対して発現量が変動する遺伝子群と過去文献とを比較し、発症分子病態を考察する。顕性遺伝形式DFNA78の原因であるSLC12A2がモデル動物であるマウスでは潜性遺伝形式で難聴を呈する理由、exon 21スプライシング機構の解明により、ヒトとマウスを含む他の脊椎動物間の種差についても考察を加える。令和5年度中に論文を作成・投稿する予定である。 本研究で必要とされる実験手技手法は多岐にわたり、単独研究の限界を痛感している。今後は、研究展開と本遺伝子を原因とする難聴の治療法探索のために、幅広い分野にわたる専門家を集めた共同研究体制の構築を目指す。
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