研究課題
基盤研究(C)
CD74はMHCクラスII(MHC-II)に会合するインバリアント鎖として知られているが、腫瘍細胞におけるMHC-IIの発現や抗原提示に果たす役割は不明な点が多い。一方、細胞表面にCD74を高発現する腫瘍が報告されており、サイトカイン受容体として機能することで腫瘍の増殖や進展に関与すると考えられている。本研究では、頭頸部癌におけるCD74の発現を検討し、腫瘍細胞におけるMHC-IIの発現や抗原提示に関するCD74の役割を明らかにする。さらに、CD74を介した腫瘍増殖・進展メカニズムや腫瘍微小環境に及ぼす影響を明らかにし、新規免疫療法や抗体療法、分子標的治療の標的となり得るかを検討する。
各種頭頸部悪性腫瘍細胞株の細胞表面におけるCD74発現をフローサイトメトリーにて解析した。その結果、上咽頭癌(NPC)と節外性NK/T細胞リンパ腫、鼻型(ENKL)の細胞株でCD74が強発現していた。NPCとENKLの患者組織におけるCD74発現を免疫組織化学にて調べたところ、腫瘍細胞にCD74の発現が認められた。また、NPCにおけるCD74発現はEBウイルス感染と関連があった。マクロファージ遊走阻止因子(MIF)と細胞表面上のCD74の結合により腫瘍細胞の増殖・浸潤が促進するとの報告がある。そのため、細胞株培養上清中のMIF発現をELISAにて測定したところ、NPCとENKLの細胞株がMIFを産生していることが明らかとなった。さらに、両疾患患者血清中のMIF値をELISAにて測定した結果、血清中にMIFの発現を認め、その値は健常人血清と比較して有意に高かった。次に、免疫不全マウスにNPCとENKL細胞株を皮下移植してxenograftモデルを作製したところ、腫瘍細胞にCD74の発現を認めるとともに、マウス血清中にMIFの発現が認められた。過去の報告において、CD74がCD70の細胞内輸送に関与する可能性が指摘されている。そのため、NPCとENKLにおけるCD70の発現を調べたところ、両疾患において腫瘍細胞にCD70の発現が認められた。以上より、NPCとENKLでCD74とMIFの発現を認め、CD74-MIF経路が腫瘍増殖や浸潤に何らかの役割を果たしている可能性が示唆された。また、CD74がCD70の発現に関連している可能性が示唆された。今後は、CD74-MIF経路の役割やCD74とCD70の関連を詳細に解析するとともに、CD74を標的とした抗体療法などの抗腫瘍効果を検討することで、NPCとENKLに対する新規治療法開発を目指した研究を継続していく予定である。
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