研究課題/領域番号 |
21K09641
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56050:耳鼻咽喉科学関連
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研究機関 | 大阪医科薬科大学 |
研究代表者 |
河田 了 大阪医科薬科大学, 医学部, 教授 (40224787)
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研究分担者 |
栗栖 義賢 大阪医科薬科大学, 医学部, 准教授 (30319529)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 耳下腺癌 / 悪性度 / PD-L1 / HER2 / アンドロゲンリセプター / バイオマーカー / 個別化治療 / 異常遺伝子 |
研究開始時の研究の概要 |
耳下腺癌は症例数が少なく、かつ病理組織や悪性度が多彩である。申請者は過去21年間に耳下腺癌約210例の治療例を経験して詳細な臨床データを蓄積してきた。進行癌や高悪性癌の予後は不良であり、低/中悪性癌においても手術の際の顔面神経の温存の可否が問題になる。そのため大きな予後因子である悪性度診断が治療にあたって重要であるが、確立された悪性度マーカーがなく、新規バイオマーカーや異常遺伝子の検討が期待される。これらの検討は分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬の開発につながっていく。外科的切除が主な治療である本疾患に対して、予後不良かつ機能的温存が強く求められる耳下腺癌に対する個別化治療を目指したい。
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研究実績の概要 |
2022年末までに耳下腺癌250例を集積した。病理組織型の内訳は、粘表皮癌68例、多形腺腫由来癌33例、腺様嚢胞癌30例、唾液腺導管癌28例、分泌癌17例、腺房細胞癌17例、基底細胞腺癌12例、上皮筋上皮癌12例、扁平上皮癌9例、腺癌NOS 6例、筋上皮癌が5例、その他が13例であった。組織学的悪性度では、低/中悪性が142例(56.8%)、高悪性が108例(43.2%)であった。 耳下腺癌におけるPD-L1の発現を検討した。PD-L1陽性は66例(38.8%)であったが、T分類、N分類、Stage分類では陽性率に有意差はなかった。病理学的悪性度でみたとき、高悪性のほうが低/中悪性と比較して有意に高い陽性率であった。病理組織学的には扁平上皮癌、唾液腺導管癌、多形腺腫由来癌、粘表皮癌、筋上皮癌、リンパ上皮癌で高い陽性率を示した。PD-L1の発現の有無で疾患特異的生存率に有意差を認めなかった。 またHER、AR、EGFRの発現率を検討した。HER2陽性は25例(15.1%)、AR陽性は27例(15.9%)、EGFR陽性は130例(76.7%)であった。HER2とAR陽性は多形腺腫由来癌と唾液腺導管癌に多かった。EGFRは分泌癌と腺房細胞癌以外で高い陽性率を示した。HER2では男性、高悪性、進行癌、T4、N+、ARでは男性、高悪性、進行癌、EGFRでは高齢、高悪性、進行癌、T4に高頻度であった。HER2陽性例とAR陽性例では陰性例に比べて有意に予後が悪かった。一方、EGFR陽性例では、予後に有意差はなかった。 耳下腺癌では、特に高悪性例では術後の局所再発や遠隔転移も少なくない。HER2やAR陽性例では、分子標的治療の適応になる可能性があり新規治療として期待される。抗HER2抗体が他薬剤との併用によって有効性を示す報告や抗アンドロゲン療法がAR陽性唾液腺導管癌に対して有効であったという報告がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に研究を遂行している。耳下腺癌症例も年間15~20症例あり、順調に検討症例数を増やしている。日頃臨床データも詳細に記録しているので、研究結果の検証に役立っている。
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今後の研究の推進方策 |
現在も耳下腺癌症例を集積中であり、年間約15~20例の新規症例ある。これらを用いて、さらにPD-L1、HER2、ARの検討を推進していく。臨床的にもHER2陽性再発耳下腺癌に対して抗HER2療法も開始している。また組織学的診断や悪性度診断に対する融合遺伝子の検討も開始している。具体的には腺房細胞癌と診断されていた症例を対象にETV6-NTRK3融合遺伝子分析を施行し、分泌癌と腺房細胞癌に再分類をし、それぞれ臨床的特徴について検討している。また粘表皮癌におけるCRTC1-MAML2融合遺伝子の発現をみて悪性度マーカーになるかについて検討している。また、高悪性の組織型は概ね粘表皮癌、多形腺腫由来癌、腺様嚢胞癌、唾液腺導管癌の4型であり、それぞれの臨床的特性について研究を開始した。予後が未だ不良であり高悪性型について、新規の個別化治療を目指している。
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