研究課題/領域番号 |
21K09655
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56050:耳鼻咽喉科学関連
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
矢野 元 愛媛大学, 医学系研究科, 准教授 (00284414)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | LOXL2 / エクソソーム / リンパ節転移 / PD-L1 / PD-1 系 / lysyl oxidase like 2 / NHE1 / HNSCC / lymph node / adhesion / PD-L1 / 頭頸部扁平上皮がん / 細胞外小胞 / 細胞外基質 |
研究開始時の研究の概要 |
がん転移は多因子が多次元的に関与する複雑系であることから、LOXL2 のみを標的として抗-転移治療として著効を期待することはもとより不可である。LOXL2 によるがん微小環境の改変とともに、他方にて同時進行している腫瘍細胞の運動性を標的とする転移抑制の試みと組み合わせることで、“集学的抗-転移治療”の実現を目指している。 本研究は、このたび機会を得た複数医療施設間での研究コンソーシアムの結成を最大限活用し、より実際的な臨床的意義の実証へと規模・内容を拡大したステップに進む。かつ一方で基礎生物学的解析を併せて行うことで上記の“集学”性の LOXL2 側の拡充を企図している。
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研究実績の概要 |
2022 年度は、LOXL2 と NHE1 の両因子を同時ノックダウンした舌がん細胞において、PD-L1 含量の低下が観察され、それとともにこの細胞のマウスリンパ節転移モデルにおける原発巣形成が顕著に阻害されることの論文報告を企図した。しかしながら査読において採択に至っておらず、現在補足データを取得すべく作業中である。われわれのモデル系がヌードマウスであることから、T 細胞系がその主体とは考えられず、NK 細胞を候補としてその関与の証明を目指している。そもそも移植腫瘍原発巣に NK 細胞が動員されているか否か、免疫組織化学的マーカー染色により検討を行ったところ、現在までのところ有望な組織像が得られており、今後は次々項に示すように、マウス個体から NK 細胞を採取して細胞生物学的検討を行い、この指摘・要請に応える予定である。 この LOXL2 および NHE1 の PD-L1 / PD-1 系への関与については、興味深いポイントがある。すなわち、PD-L1 含量に対しては、NHE1 阻害が一義的に関与するとの報告例がある一方、LOXL2 については直接の関与を示すものがない。またわれわれのデータでも、NHE1 単独ノックダウンで PD-L1 量の減少は観察されるものの、原発巣形成の不全は観察されず、そこに至るには LOXL2 の不在が必須であることがうかがえる。 細胞外小胞における LOXL2 の位置づけについて、興味深い進展が得られている。最近、岡山理科大学獣医学部との連携を得て、種々の年齢のカニクイザル血清エクソソーム画分における LOXL2 含量を査定する機会に恵まれた。加齢とともに細胞外小胞量、LOXL2 量ともに上昇することが観察され、健常な生体では小胞当たりの LOXL2 量は加齢によっては変化せず、病態下において異常な上昇を示すものである可能性がうかがえた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
求めている進捗からはやや遅れている印象である。当初の予定にない発見が含まれるため、もちろん有意義に進んではいるものの、そう感じる理由は論文報告において査読審査をクリアできていないからである。しかしながら、本件をクリアできれば、LOXL2 と NHE1 の同時抑制が治療的に有意義であること、あるいは本研究が主張したい転移抑制における集学的手法の有為性を示すことの一助足ることは明らかであるので、何としても完遂する予定である。 一方で、2022 年度にはもう一点予想外の追い風も得ている。現状報告でも触れたが、それは岡山理科大学獣医学部との連携である。最近、岡山理科大学獣医学部と松山大学薬学部、そして愛媛大学医学部に連携の協定を結ぶ企画があり、細胞外小胞はそのテーマの一つとしてノミネートされている。報告者と岡山理科大学獣医学部 獣医生理学教室の汾陽 光盛 教授がその担当であり、前述のカニクイザル血清における検討は、その連携のプロトタイプとして行われた。今後この連携をも活用し、研究のさらなる進展を得たい。
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今後の研究の推進方策 |
前々項において示した通り、われわれが観察している減少への NK 細胞の関与を明らかにする。現在行っている免疫組織化学的検討により、NK 細胞がどの程度関与しているのかを確認するとともに、改変した腫瘍細胞の場合、それがどのように変化するか、査定する。想定していることは、ノックダウン、それも特に LOXL2 と NHE1 のダブルノックダウンによって、NK 細胞の腫瘍部分への動員が増加したり、あるいは動員そのものは変わらなくとも、貪食等により、腫瘍組織内における腫瘍細胞と NK 細胞の存在比率が変化するといったことが観察されるか否かを査定する。 さらにマウスから NK 細胞を採取し、野生型および改変した腫瘍細胞との共培養を行うことで、腫瘍細胞の PD-L1 含量が変化したことが腫瘍細胞の生存性や生育に及ぼす影響を査定し、マウスモデル系において観察された現象との対応を検討する。 これらの実験を可及的速やかに行ってデータを取得し、再度の投稿、速やかな論文報告を目指す。 これとともに、単なる PD-L1 の減少では効果としては得られない原発巣形成の不全に、LOXL2 の不在がどのように関与するのか、検討する。LOXL2 の作用が細胞外マトリクスの再構成であることから、三次元培養下における PD-L1 / PD-1 系の作用を測定し、それに対する LOXL2 による細胞外マトリクスの改変の効果を査定する。想定していることとしては、単に細胞外マトリクスゲル中で行った培養では PD-L1 / PD-1 系の機能が低く、LOXL2 を作用させた細胞外マトリクスゲル中で行う培養において PD-L1 / PD-1 系の機能が高い、ということがらである。
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