研究課題/領域番号 |
21K09681
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56060:眼科学関連
|
研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
蕪城 俊克 自治医科大学, 医学部, 教授 (00280941)
|
研究分担者 |
相原 一 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (80222462)
裏出 良博 第一薬科大学, 薬学部, 教授 (10201360)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
|
キーワード | プロスタグランジンD2 / ぶどう膜炎 / 加齢黄斑変性 / 拮抗薬 / 脈絡膜新生血管 / プロスタグランジンD2 / 実験的自己免疫性ぶどう膜炎 / サイトカイン / 生理活性脂質 |
研究開始時の研究の概要 |
プロスタグランジン(PG)D2は、脳においては睡眠や神経炎症に重要な働きを持つ。眼疾患では特に炎症性網脈絡膜疾患への関与が推測されるが、PGD2は極めて失活しやすいため研究が難しく、これまで研究は進んでいない。 本研究では、PGD2の合成酵素および受容体に注目し、PGD2の関与が推測される2つの炎症性網脈絡膜疾患、すなわち加齢黄斑変性とぶどう膜炎の動物モデルを用いて、自然免疫系の活性化および網膜内での炎症の惹起機構におけるPGD2の関与を明らかにし、病因の解明やその治療に貢献する新規治療標的の可能性を検討することを目的とする。
|
研究実績の概要 |
本研究ではぶどう膜炎や加齢黄斑変性といった眼炎症疾患におけるProstaglandin D2(PGD2)の関与を解明することを目的としている。今年度は、PGD2受容体の1つであるDP2受容体のノックアウトマウス(DP2KO)および2種類のDP2アンタゴニスト(CAY10471とOC000459)を用いて、加齢黄斑変性の動物モデルであるマウスレーザー誘発脈絡膜新生血管(マウスCNV)モデルにおけるPGD2の役割を検討した。 マウスCNVモデルの作成は、C57BL6マウスに麻酔後、散瞳下でダイオードレーザーを(50μm, 50msec,150mW)で視神経乳頭周囲に4~8発網膜光凝固を行った。1週間後に眼球摘出し、網膜をflat mountにしてCNVの大きさを測定した。 8週齢、52週齢マウスどちらにおいても、DP2KOマウスはWTマウスに比べCNVサイズが減少していた。また56週齢の高齢マウスの方がCNVサイズの減少率が大きかった。2種類のDP2アンタゴニスト(CAY10471とOC000459)どちらを投与しても、CNVサイズが有意に減少した。DP2アンタゴニスト(OC000459)の投与量を減らすと、CNVサイズの減少効果は容量依存的に減弱した。またレーザースポット部位に遊走するマクロファージの数を、F4/80抗体による免疫染色で検討したところ、DP2KOマウスでは有意に減少していた。以上の結果から、マウスCNVモデルにおいてDP2の阻害により、マクロファージの病変局所への遊走が抑制され、CNVサイズを小さくすることが明らかとなった。 今後は、PGD2がCNV形成に働いている機序を明らかにするために、レーザー部位におけるVEGF、MCP1などのサイトカインの発現解析、およびヒト培養網膜色素上皮細胞株であるARPE-19細胞を用いて、PGD2に対する反応を検討する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラットEAUモデルでのH型、L型合成酵素の阻害薬投与することにより、ぶどう膜炎に対するPGD2の関与を検討した。HPGDS阻害薬(HQL-79)0.2mg/day、LPGDS阻害薬(AT-56) 0.2mg/day、Control (0.5%メチルセルロース)をそれぞれをそれぞれDay7より連日皮下注射した。AT-56、HQL-79、を投与した時のEAUスコアを測定した。その結果、溶媒と比べ、EAUスコアはピーク時(day11~13)では有意差はなかったものの、day15以降のEAUスコアは有意に低下していた。この結果はPGD2以外にも様々な炎症機序(例えばロイコトリエンB4)がEAUの発症に関与するためであると予想される。眼炎症時と非眼炎症時の尿中PGDM、PGEMをLC-MS/MSで測定した。眼炎症時は非炎症時に比べ、尿中PGDMが増加していたが、対照のPGEMは変動しておらず、眼炎症時にはPGD2が産生されていると考えられた。 次に、マウスレーザー誘発脈絡膜新生血管(マウスCNV)モデルにおけるPGD2の役割を検討した。8週齢、52週齢マウスどちらにおいても、DP2KOマウスはWTマウスに比べCNVサイズが減少していた。DP2アンタゴニスト(CAY10471とOC000459)投与でも、CNVサイズが有意に減少した。DP2アンタゴニスト(OC000459)の投与量を減らすと、CNVサイズの減少効果は容量依存的に減弱した。レーザースポット部位に遊走するマクロファージの数を、F4/80抗体による免疫染色で検討したところ、DP2KOマウスでは有意に減少していた。以上の結果から、マウスCNVモデルにおいてDP2の阻害により、マクロファージの病変局所への遊走が抑制され、CNVサイズを小さくすることが明らかとなった。
|
今後の研究の推進方策 |
ラットEAUモデルではPGD2の合成阻害で炎症のピークは抑制できなかったものの、炎症の消退が促進していた。また、尿中代謝物の検討では、眼炎症時にはPGD2が産生していることが考えられた。ぶどう膜炎においてPGD2の産生が関与していることが示唆された。 またマウスレーザー誘導脈絡膜新生血管(CNV)モデルをもちいて、加齢黄斑変性におけるPGD2の関与に関しても検討した。DP2KOマウスではWTマウスに比べCNVサイズが減少していた。また2種類のDP2アンタゴニスト(CAY10471とOC000459)どちらを投与しても、CNVサイズが有意に減少した。レーザースポット部位に遊走するマクロファージの数を、F4/80抗体による免疫染色で検討したところ、DP2KOマウスでは有意に減少していた。以上の結果から、マウスCNVモデルにおいてDP2の阻害により、マクロファージの病変局所への遊走が抑制され、CNVサイズを小さくすると考えられた。 今後は、PGD2がCNV形成に働いている機序を明らかにするために、レーザー部位におけるVEGF、MCP1などのサイトカインの発現解析、およびヒト培養網膜色素上皮細胞株であるARPE-19細胞を用いて、PGD2に対する反応を検討する予定である。
|