研究課題/領域番号 |
21K09684
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56060:眼科学関連
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
三浦 雅博 東京医科大学, 医学部, 教授 (60199958)
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研究分担者 |
安野 嘉晃 筑波大学, 医学医療系, 教授 (10344871)
巻田 修一 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (50533345)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 光干渉断層計 / 黄斑部疾患 / 偏光解析 / メラニン / 脈絡膜 / 網膜色素上皮 / 偏光解消性 / Vokt-Koyanagi-Harada病 / 網膜色紙上皮 |
研究開始時の研究の概要 |
網膜色素上皮メラニンと脈絡膜メラニンは視機能の維持に重要な役割を持っており、黄斑疾患の発症機序における重要なバイオマーカーと考えられている。しかし生体人眼における網脈絡膜メラニン定量計測手法は確立しておらず、眼科臨床では未だ主観的判断に基づいて診断しているのが現状である。本研究では、1回の無侵襲撮影によって、多角的情報(脈絡膜メラニン密度、網膜色素上皮メラニン分布、血流異常、通常のOCT画像)を同時取得可能である多機能光干渉断層計を用いることで、従来の手法では不可能であった網脈絡膜メラニン3次元定量解析を含む、黄斑疾患の包括的3次元多角的画像解析技術を確立する。
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研究実績の概要 |
本研究の主要課題である「脈絡膜メラニン密度3次元定量解析」について大きな進展があった。偏光感受型光干渉断層計(OCT)を使って、偏光解消性を計測することにより、網脈絡膜内のメラニン分布を計測することが可能になる。しかし偏光解消性の計測には、少なくとも2チャンネル以上の干渉計測を実施する必要があり、1チャンネルの干渉計測のみを実施する通常のOCTでは計測が不可能であった。そこで偏光感受型OCTから得られた偏光解消性画像(DOPU: degree of polarization uniformity)を教師画像として、通常のOCT画像を深層学習によって処理することを試みた。その結果、通常のOCT画像から偏光解消性画像(DOPU)に類似した画像を算出することに成功した。(S Makita, M Miura,et al. Biomed Opt Express 14,1522-1544, 2023)。これは本研究課題で実施してきた「脈絡膜メラニン密度3次元定量解析」を市販されている通常のOCT機器でも実施可能なことを示しており、本研究課題の臨床応用に向けた大きな進歩である。 さらに偏光感受型OCT計測の副産物として、重要な臨床所見が得られた。強膜の複屈折はOCT画像にartifactを生じることが知られている。そこで強度近視の市販OCT画像を解析した結果、従来から強膜内血管だと報告されてきた所見の30%が複屈折に由来するartifactであることを報告した(M Miura, et al. Sci Rep 12,19713,2022)。これは本研究課題で使用している偏光感受型OCTの新たな臨床有用性を示すものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主要課題である「脈絡膜メラニン密度3次元定量解析」について、脈絡膜実質のメラニン3次元分布を自動解析する手法を確立した。まず日本人正常眼における脈絡膜メラニン分布の3次元解析を報告した。さらにVokt-Koyanagi-Harada病における脈絡膜メラニン障害の臨床解析を報告した。その結果、脈絡膜メラニン密度3次元定量解析によって、脈絡膜メラニン障害が高精度に判別でき、発症過程も解析可能であることが判った。 さらに本来、偏光感受型OCTが必要な偏光解消性画像を、深層学習を用いて、通常のOCT画像から疑似的に算出することに成功した。これは本研究課題で実施してきた「脈絡膜メラニン密度3次元定量解析」を市販されている通常のOCT機器でも実施可能なことを示しており、本研究課題の臨床応用に向けた大きな進歩である。 さらに偏光感受型OCT計測の副産物として、従来から強膜内血管だと報告されてきた所見の30%が複屈折に由来するartifactであることを報告した。これは本研究課題で使用している偏光感受型OCTの新たな臨床有用性を示すものである。
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今後の研究の推進方策 |
多機能OCTによる疾患眼および正常眼の計測を進め、計測データに関する詳細な解析を進める。これにより下記の課題について検討を進める。 1. 複屈折による視神経乳頭OCT画像への影響。視神経乳頭周囲には強膜コラーゲン線維という構造複屈折の原因となる組織が存在する。この構造複屈折は干渉計測に影響をおよぼすため、視神経乳頭OCT画像におけるartifactとなる可能性がある。そこで偏光感受型OCTのデータを基に、複屈折の影響を検討する。この研究成果は2023年度中の学会発表および英文誌投稿を予定する。 2. 加齢黄斑変性における、網膜色素上皮細胞変化ついて臨床研究を実施する。具体的には網膜色素上皮メラニンの3次元構造解析と自家蛍光画像を組み合わせた多角的画像解析によって、網膜色素上皮変化に関連する病態生理を検討する。 3. 「脈絡膜メラニン密度3次元定量解析」の臨床応用のためには、メラニン密度を通常のOCT画像でも計測可能にすることが重要である。そこで通常のOCT画像から算出可能な指標(減衰係数、synthesized DOPU, scatter density estimator)と偏光解消性画像(DOPU)を比較することにより、通常のOCTでメラニン密度計測が可能かどうか検討する。
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