研究課題/領域番号 |
21K09688
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56060:眼科学関連
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
郭 暁麗 公益財団法人東京都医学総合研究所, 疾患制御研究分野, 主席研究員 (50443114)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 遺伝子治療 / 脊髄炎 / 正常眼圧緑内障モデルマウス / 樹状突起 / 緑内障 / 視神経炎 / 神経栄養因子受容体 / EAE / GLAST欠損マウス / 軸索再生 / 再髄鞘化 |
研究開始時の研究の概要 |
網膜と視神経の神経変性疾患に根本的な治療法は確立されていない。もし神経再生による治療が可能となれば、病気の進行抑制だけでなくその機能回復も期待できる。本研究では、遺伝子治療用ベクターの開発により神経ネットワークの再生を促進させ、視機能を回復させることを目的とする。そのために、透明化組織を用いた立体画像による病理解析や遺伝子改変マウスなどの新たなツールを活用して、神経保護や軸索再生と再髄鞘化療法の可能性に挑戦する。本研究から得られた知見は、様々な神経変性疾患の再生治療に対しても有益な成果となることが期待される。
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研究実績の概要 |
PHP.eB-MAG2.2-iTrkBべクターによるEAEマウスにおける脊髄炎の軽症化はすでに前年度で明らかにした。今年度はTrkBシグナル経路の下流にあるiSH2とERK遺伝子のPHP.eBベクターをそれぞれ作製し(PHP.eB-MAG2.2-iSH2、PHP.eB-MAG2.2-ERK)、脊髄炎への治療効果を検討した。これらのベクターはコントールのベクター(PHP.eB-MAG2.2-GFP)と比べ脊髄炎の重症度は変わらなかった。この結果から、シグナル経路の上流にあるTrkBの重要性が示唆された。また、網膜の展開標本を作製してRBPMS染色を行いその解析からPHP.eB-MAG2.2-iTrkBべクターによるEAEマウスにおける網膜神経節細胞(以下RGC)への保護効果を見出した。 一方、インスリン受容体の活性型分子(以下改変型IR)を設計し、その遺伝子治療によりRGC樹状突起の再生が可能か、正常眼圧緑内障モデル動物を用いて検討した。WBによりインスリンシグナルであるAKTおよびERKのリン酸化を定量したところ、対照群と比べ改変型IRは有意に増加していた。次に、正常眼圧緑内障モデルマウスであるGLAST KOマウスとThy 1-EGFPマウスを交配させたマウスを使用し、正常眼圧緑内障モデルマウスのRGC樹状突起について解析を行った。EGFPで標識されたRGCを共焦点顕微鏡で撮像し、樹状突起をImarisのフィラメントトレース機能を用いて解析しその長さの総和を計算した。GLASTヘテロマウスのRGC樹状突起は野生型と比べ、大きさが小さく、樹状突起の長さは有意に短くなっていた。改変型IRの遺伝子治療により、緑内障モデルマウスにおけるRGC樹状突起の再生が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
消耗品などの供給が回復したためウイルスベクターの作製が軌道に乗ってきた。また新たに雇用したテクニシャンのサポートもありPHP.eB-MAG2.2-iTrkBべクターのほかPHP.eB-MAG2.2-iSH2、PHP.eB-MAG2.2-ERKべクターによる脊髄炎への効果も調べられた。さらにインスリン受容体の活性型分子による樹状突起の再生も認められ、ほぼ計画通りに研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
PHP.eB-MAG2.2-iTrkBべクターの事前投与によるEAEマウス重症度の軽減メカニズムを明らかにしていく。具体的にはTrkBシグナル経路にあるpERKやpAKTなどの発現変動をWestern blotや組織免疫化学法などの手法で調べるほか、cytokine/chemokineなどの炎症性物質やLingo-1、TGF-betaなど再髄鞘化の抑制因子への影響も解明していく。さらに発症後のEAEマウスにPHP.eB-MAG2.2-iTrkBべクターを投与し、脊髄炎への治療効果の有無をclinical scoreや病理学的解析から明らかにする。また網膜神経節細胞死や視機能を調べることにより視神経炎への治療効果も検討する。 一方、インスリン受容体の活性型分子(改変型IR)の遺伝子治療においてはシナプス再生への影響を明らかにする。活性型インスリン受容体の遺伝子治療により、実際にシナプスが再生するのか、また、シナプスが再生したのであれば視機能は回復するのかを検討する。視神経挫滅モデルを用いて軸索再生が促進できるかを調べる。さらに、変性過程に入る時期に改変型IRやAAV2-iTrkBベクター等を投与し、樹状突起の保護や再生の促進が可能かを検討する。
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