研究課題/領域番号 |
21K09696
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56060:眼科学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
川崎 諭 大阪大学, 大学院医学系研究科, 特任准教授(常勤) (60347458)
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研究分担者 |
馬場 耕一 大阪大学, 大学院医学系研究科, 寄附講座教授 (00436172)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 無虹彩症 / PAX6 / 細胞老化 / p53 / 角膜上皮細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
無虹彩症は先天的に虹彩の無形成ないし低形成、黄斑低形成などを呈し、また後天性にも白内障、角膜輪部疲弊症、緑内障 などを発症する。白内障、角膜輪部疲弊症、緑内障は加齢性疾患であることから、PAX6遺伝子量の減少が細胞老化を促進し、結果として組織老化を招いている可能性がある。我々は ヒトの無虹彩症のin vitro病態モデルとして、PAX6遺伝子の片アリルに機能喪失型変異を導 入したヒトiPS細胞を作製した。本研究では、このin vitro病態モデルを用いて、無虹彩症の角膜上皮と水晶体において組織老化が促進しているかどうかを明らかにする。
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研究実績の概要 |
無虹彩症は先天的異常に加え、後天性にも白内障、角膜輪部疲弊症、緑内障などを発症する。これらは加齢性疾患であることから、PAX6遺伝子量の減少が細胞老化を促進し、結果として組織老化を招いている可能性がある。我々はヒトの無虹彩症のin vitro病態モデルとして、PAX6遺伝子の片アリルに機能喪失型変異を導入したヒトiPS細胞を作製した。 本研究では、この細胞を用いて角膜上皮細胞や水晶体上皮細胞へと高効率に分化誘導し、PAX6遺伝子量と細胞老化との関係についてin vitroの実験系にて検討することを目的とする。我々の仮説の背景にある分子メカニズムについては、p53とPAX6は相互にカウンターバランスの関係にあり、PAX6遺伝子発現量が半減する無虹彩症においては、p53がタンパク発現量レベルあるいは転写活性レベルで亢進し、細胞老化やアポトーシスを誘導するのではないかと推測している。 令和3年度にはB7株iPS細胞(線維芽細胞由来のiPS細胞)をもととしたPAX6+/-細胞およびPAX6-/-細胞を樹立した。この細胞はSEAMを経て角膜上皮細胞に高効率に分化誘導することが可能であった。令和4年度にはこの細胞の遺伝子発現を調べるとともに細胞老化についての評価系の確立を行った。この細胞においてはがん遺伝子MYCとKLF4の発現が亢進しており、細胞サイズの増大や細胞増殖速度の低下といった細胞老化表現型が見られた。がん遺伝子のk-rasによって老化が誘導されることはよく知られており、類似の現象である可能性があると考えられた。またこの細胞においては結膜上皮細胞のマーカーであるケラチン4/13やMUC4遺伝子の発現が高かったが、無虹彩症患者において角膜上皮細胞が疲弊することが知られており、それを反映する結果であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は研究計画時点において、D2株iPS細胞(血液由来のiPS細胞)をもととしたPAX6+/-細胞およびPAX6-/-細胞を樹立していた。当初はこの細胞から比較的効率よく角膜上皮細胞が分化誘導できていたが、KSRロットが変更となり以降は角膜上皮細胞への分化誘導効率が著明に低下して本研究を遂行することが困難となった。そのため、B7株iPS細胞(線維芽細胞由来のiPS細胞)をもととしたPAX6+/-細胞およびPAX6-/-細胞を樹立した。 この細胞を用いてSEAMを経て角膜上皮細胞を分化誘導したところ、かなり高効率に分化誘導することができた。この細胞は細胞サイズが大きく、細胞増殖スペードも遅いため、我々の想定している仮説を裏付けるものと推察される。さらにこの細胞は結膜上皮細胞のマーカーであるケラチン4/13およびMUC4遺伝子を高発現していたが、これらのことから、この細胞は研究計画段階での我々の仮説にそったモデルであると考えられ、研究計画通りに細胞老化について評価していくための妥当なモデル細胞であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
B7iPS細胞をもとに樹立したPAX6+/-細胞を用いてSEAMを経て角膜上皮細胞および水晶体上皮細胞に分化誘導し、野生型とPAX6+/-との間の細胞老化について比較して評価する。細胞老化の評価系としては、SA-beta Galアッセイ(染色およびホモジニアスアッセイ)、Population Doubling 解析、SA-beta Galの活性本態であるGLB-1の免疫染色およびウエスタンブロット、FACSによる細胞周期解析などとする。また角膜上皮細胞や水晶体上皮細胞に分化誘導後に、BleomycinやMitomycinなどのgenotoxic agents、紫外線照射、H2O2処理などを行って老化を促す。また細胞老化に関連する因子、特にp53とpRBおよびそれらの上流因子(MDM2やATM、p16、Bmi-1など)との関係について、PAX6遺伝子の発現量と老化関連因子のタンパク発現量やp53転写活性との関係、PAX6タンパクと老化関連因子との結合の点において検討する。
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