研究課題/領域番号 |
21K09717
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56060:眼科学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
福嶋 葉子 大阪大学, 大学院医学系研究科, 特任准教授(常勤) (70647031)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 糖尿病網膜症 / 血管内皮細胞 / AKT / ノンコーディングRNA / 創薬 / 血管 / 細胞内シグナル伝達 |
研究開始時の研究の概要 |
糖尿病網膜症では、毛細血管閉塞による虚血を契機として産生されるVEGF が、数年かけて血管の瘤状拡張と透過性亢進を誘導することで網膜浮腫や出血が生じる。ところが、遷延した浮腫はVEGF阻害療法に反応せず、視力は回復しない。網膜浮腫の慢性化に至る分子機構は不明である。我々は、VEGFに長期暴露された血管内皮細胞でAKT持続的活性という特異な現象がみられることを見出し、この現象をマウス網膜に誘導したところVEGF 非依存的にヒト網膜症に類似する血管異常と網膜浮腫を惹起することに成功した。本研究では、AKT持続活性を制御するノンコーディングRNAに着目し、網膜症の治療標的としての可能性を検証する。
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研究実績の概要 |
本研究において、これまでに血管内皮増殖因子(VEGF)に長期暴露された内皮細胞では、細胞内シグナル伝達分子であるAKTの持続活性という特異な現象がみられ、AKT持続活性をマウス網膜血管に誘導するとVEGF非依存的に糖尿病網膜症に類似する血管異常が惹起されることを明らかにしてきた。このとき発現が上昇する長鎖ノンコーディングRNA, e-lncRNAに着目し、まず、AKT活性調節機構を明らかにした。ヒト培養内皮細胞において、e-lncRNAはAKTタンパク質のキナーゼドメインに結合して脱リン酸化を阻害する結果、リン酸化の持続に寄与することがわかった。さらに、e-lncRNAの発現上昇はインターロイキン1B(IL1b)発現の上昇を介するものであった。IL1bはオートクライン経路にて、それ自身の発現を増大させた。つまり、IL1b - elncRNA - AKTシグナル伝達経路のループがAKT持続活性を誘導し、VEGF不応となることが示唆された。 本年度は、AKT持続活性の制御を標的とした創薬開発をより確実に達成するために、AKT持続活性を評価する細胞アッセイ系を構築した。この系を用いてAKT持続活性を是正できる市販化合物の探索を進めたところ、ある候補化合物はAKT持続活性マウス網膜の血管異常を解消するばかりでなく、虚血性網膜症マウスモデルでみられる硝子体に突出する異常血管を抑制し正常血管新生を促進することを明らかにした。このとき、当該化合物がVEGF阻害薬と異なる遺伝子発現への効果を有することがわかった。さらなる検証により、血管正常化につながる薬剤になりうると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定どおり、AKT持続活性を評価する細胞アッセイ系を構築し、化合物のスクリーニングを実施した。およそ2000の市販化合物のスクリーニングのうち、AKT持続活性を制御する候補化合物を複数同定した。特に、1つの候補化合物は糖尿病網膜症モデルマウスならびに虚血性網膜症モデルマウスの硝子体に投与したところ、異常血管を解消できる治療薬となる可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
臨床PoCを取得にむけた解析を進める。次年度は、当該化合物の作用について内皮細胞を用いたシグナル経路と遺伝子発現変化の解析および化合物の毒性・安全性を網膜症モデルマウスを用いて評価する。
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