研究課題/領域番号 |
21K09735
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56060:眼科学関連
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研究機関 | 沖縄科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
西脇 優子 沖縄科学技術大学院大学, 神経発生ユニット, グループリーダー (20360620)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | Drp1 / 細胞死 / チトクロムC / ミトコンドリア / BNip1 / 視細胞変性 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、小胞輸送の異常により視細胞変性を起こすゼブラフィッシュ変異体をモデルに、小胞輸送を制御するSNARE蛋白の一つであるBNip1によって誘導される視細胞死のメカニズムの全容を明らかにすることを目的とする。小胞輸送の過度な活性化に反応して細胞死を誘導するBNip1が、ミトコンドリア分裂を制御するDrp1のアポトーシス誘導能をどの様に活性化して細胞死を起こすのか、BNip1の局在する小胞体とDrp1が働くミトコンドリアの接触部位形成に着目して解析を行う。
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研究実績の概要 |
β-SNAP変異体の視細胞死は、細胞死誘導を担うBH3ドメインを持ったSNARE蛋白質であるBNip1を介している。これまでに、Drp1を抑制するためには、Drp1変異体を導入するだけでは母性由来のDrp1がβ-SNAP変異体で視細胞死が起きる時期まで残っているため、抑制には不十分であり、モルフォリノで母性由来のものを含めて抑制することで、β-SNAP変異体の視細胞死が抑制されることを確認している。 また、Drp1がミトコンドリアへ局在するのに必要なアダプター分子であるMFFをモルフォリノによりノックダウンすることで、β-SNAP変異体の視細胞死が抑制される。従って、Drp1がミトコンドリアへ局在することが視細胞死誘導に必須であることが確認された。 β-SNAP変異体が視細胞死を起こす過程でのチトクロムCの局在を調べたところ、細胞死が顕著に見られる受精後72時間にはミトコンドリアから流出していることが確認された。従って、β-SNAP変異体の視細胞死において、Drp1が、ミトコンドリアからのチトクロムCの流出に関与していることが示唆された。 通常、チトクロムCを内包するミトコンドリアの内膜の袋状構造のゲートはOPA1によって閉じられている。小胞体からミトコンドリアへのカルシウムの流入が起きると、OPA1はOMA1により分解され、その結果、クリステのゲートが開くことが報告されている。そこで、OPA1の全長配列を用いて強制発現を行い、袋状構造の開放を抑えた場合に、細胞死は抑えられるのか検証した。視細胞特異的に発現させるgnat2プロモーターと熱刺激により発現させるhspプロモーターを使って、OPA1の全長を用いて強制発現を行ったが、どちらの場合も視細胞死は抑制されなかった。今後、OMA1の標的配列に変異を入れOPA1の分解を抑制したコンストラクトを作製して同様の検証を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
β-SNAP変異体の視細胞死では、チトクロムCがミトコンドリアから細胞質へ放出されていた。このことは、Drp1がチトクロムCの放出に関わっていることを示唆している。チトクロムCを内包するミトコンドリアの内膜のクリステの袋状構造のゲートはOPA1によって閉じられている。小胞体からミトコンドリアへのカルシウムの流入が起きると、OPA1はOMA1により分解され、その結果、クリステのゲートが開くことが報告されている。OPA1の全長配列を用いて強制発現を行い、クリステの袋状構造の開放を抑えた場合に、ミトコンドリアからチトクロムCの放出が抑えられるか、細胞死は抑えられるのかを検証した。しかし、gnat2プロモーターで視細胞特異的な発現を誘導した場合も、hspプロモーターを使った強制発現を行った場合も、視細胞死は抑制されなかった。強制発現したOPA1がOMA1に分解されて抑制が出来ていない可能性があるため、今後、OMA1の標的配列に変異を入れたOPA1を作製して同様の検証を行う予定である。 β-SNAP変異体へ、カルシウムセンサーであるGCaMP7aを導入し、Rx:Gal4もしくはCrx:Gal4のドライバーと組み合わせた系統を確立した。Rxプロモーターによる発現は、細胞死が起きる時期より前からGCaMP7aのシグナルを観察することが出来たが、網膜全体で発現するため、beta-SNAP変異体の視細胞で特異的に上がるシグナルを検出することは出来なかった。一方、Crxプロモーターは、受精後2日目にはまだ一部の視細胞でしか発現が見られず、細胞死前の変化を見ることは出来なかったが、視細胞死が起きる受精後3日目には、視細胞が分布する外顆粒層から外れて丸くなっている細胞でシグナルが上昇しているのが確認された。この様な細胞の移動と変化は、live-imagingで初めて捉えることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
我々はDrp1をモルフォリノでノックダウンすることで、β-SNAP変異体の視細胞死が抑制されることを観察している。β-SNAP変異体の視細胞死では、チトクロムCがミトコンドリアから細胞質へ放出されていた。このことは、Drp1がチトクロムCの放出に関わっていることを示唆している。では、チトクロムCが放出されるまでのステップで、Dpr1の分布がどの様に変わっているのか、経時観察を行う必要がある。 BNip1の細胞内局在を観察するため、Tg[hsp:EGFP-BNip1a]を作製し、ミトコンドリア可視化系統と組み合わせたβ-SNAP系統を作出したが、個体を用いた観察では、視細胞が細胞死を起こす時期に視細胞での分布を検出するのに十分なシグナル強度と分解能を得ることが出来なかった。シグナル自体は検出出来たので、眼球を器官培養することで、高倍率のレンズを用いての観察を試みる必要がある。 また、Drp1がミトコンドリア外膜へ局在するためには、アダプターとなる膜貫通型分子であるMIEF、MFFなどと結合する必要がある。多量体形成時に結合するとされているMFFのノックダウンをモルフォリノで行ったところ、β-SNAP変異体の視細胞死が抑制される傾向にあった。今後、MFFのノックダウンでDrp1の挙動がどの様に変わるかを観察することにより、Dpr1がβ-SNAP変異体視細胞の細胞死において、どの様にミトコンドリアの状態を変化させることにより、細胞死誘導に関与しているのか、明らかにする。
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