研究課題/領域番号 |
21K09753
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56060:眼科学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
羽藤 晋 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任講師 (70327542)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 角膜上皮 / 涙腺神経切断 / GVHD / 炎症 / ドライアイ / 涙液 / 樹状細胞 / 神経保護 / 角膜 / 創傷治癒 / Semaphorin / 上皮 |
研究開始時の研究の概要 |
Semaphorinは神経末端の成長や炎症を制御する分子の一つであるが、その機能は複雑で未解明な部分も多い。我々はドライアイモデルマウスにおいてSemaphorin 3a(以下Sema3a)阻害剤の点眼により、角膜内三叉神経の進展と角膜上皮創傷治癒を促すことを報告したが、その詳細な機序については未解明である。本研究では、Sema3aの眼表面における役割を、創傷治癒および炎症に注目して、移植片対宿主病(以下GVHD)モデルマウス、アルカリ外傷モデルマウス等を用いて検討する。これらにより、Sema3aの多彩で複雑な機能の解明につなげたい。
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研究実績の概要 |
Semaphorin3a(以下Sema3a)は、神経末端の成長や炎症を制御する分子の一つである。 これまでに我々は、角膜内の病態を測定する評価系の確立、および実験目的に則したモデルマウスの作成方法の確立を行ってきた。すなわち、角膜の生理学的な病態を確認するために、角膜各層局所における観察に優れた生体レーザー共焦点顕微鏡(以下IVCM)による経時的観察や、免疫染色による角膜内の炎症細胞浸潤の同定等を行ってきた。また当該年度は、神経保護と炎症の観点から創傷治癒機序を解明するために、涙腺神経切断ドライアイモデルマウスや、炎症モデルとして移植片対宿主病モデルマウス(以下GVHDモデルマウス)を作製し、Sema3a阻害剤点眼群と対照群のそれぞれのマウスにおける炎症所見の比較検討と、角膜の創傷治癒におけるSema3aの役割の検証を行っている。 昨年度開発したIVCMのwholemount画像によって、涙腺神経切断モデルマウスの角膜上皮びらんがSema3a阻害剤によって抑制されることを確認した。また、摘出した角膜のwholemount免疫染色像から、Sema3a阻害剤によって角膜内β-tubulin陽性神経線維の増加、MHC class II陽性細胞浸潤の抑制を確認した。 一方、GVHDモデルマウスに関しては、Sema3a阻害剤点眼により全身症状が悪化する個体がみられたため、その原因について解析を行っている。wholemount角膜免疫染色における樹状細胞の動態や、頸部リンパ節フローサイトメトリーにおける炎症細胞は、対照群と比較して、明らかな有意差を認めなかった。しかし、症状の個体差が大きく、現在、再試験を行っている。また、投与方法の選択肢を広げ、内服や静脈注射で経過を観察しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
角膜の創傷治癒におけるSema3aの役割を、神経保護と炎症の観点から解明するために、涙腺神経切断モデルマウスと、GVHDモデルマウスを作製した。涙腺神経切断モデルマウスに対し、PBS点眼群、Sema3a阻害剤点眼群、Sham群の3群で涙液量測定・前眼部写真・IVCM、免疫染色での比較検討を実施した。その結果、涙腺神経切断後1週間までは、PBS点眼群、Sema3a阻害剤点眼群とも涙液量が低下し、その後、Sema3a阻害剤点眼群は、PBS点眼群と比較し有意に、かつSham群と同程度まで涙液量が回復した。角膜上皮傷害もSema3a阻害剤点眼群ではPBS点眼群と比較し有意に抑制されていた。角膜wholemount免疫染色では、Sema3a阻害剤点眼群で神経密度が増加しており、上皮びらん領域に角膜神経の線維が集束している所見を認めた。また、涙腺の病理標本を比較した結果、PBS点眼群と比較して、Sema3a阻害剤点眼群で涙腺の萎縮や線維化が抑制されている傾向であった。Sema3a阻害剤には、当初の仮説である、角膜神経の密度増加に伴い、知覚が増加し、涙液量が増加して、角膜上皮が保護されるメカニズムだけでなく、神経切断されて萎縮する涙腺に対して、何らかの保護作用効果があったのではないかと考えられる。このように、当初の仮説だけでなく新たなメカニズムの発見にもつながる結果が得られ、順調に進展している。 GVHDモデルマウスにSema3a阻害剤点眼群を行った結果、GVHDによる全身症状の悪化を認めた。個体差異が大きいもののある程度再現性があり、Sema3a阻害剤が、GVHDの病態において、全身性に何らかの免疫機構に関与していることが考えられる。GVHDにおけるSema3aの新たな役割の解明につながる可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
Sema3aは、神経伸長の阻害作用があるといわれている。我々は角膜においてSema3a阻害剤の点眼により、角膜内神経密度が増加し、角膜知覚が上昇し、涙液量が増加した結果、角膜上皮びらんの出現を抑制するという機序を仮説として考えている。当該年度での角膜wholemount免疫染色の改良と、その結果得られた角膜神経が角膜上皮びらん領域に向かって集束している所見など、仮説を裏付ける結果がまとまりつつあるので、来年度は角膜実質細胞やその他の細胞の免疫染色とIVCMの観察など、より詳細データを追加し、これらの結果をまとめ学会および論文発表を達成したい。また、涙腺神経切断モデルマウスにおいて、Sema3a阻害剤の点眼により涙腺萎縮が抑制される所見を発見したため、今後再実験を行い、新たな機序について解明を進める予定である。 また、来年度のGVHDモデルマウスにおける実験では、角膜内にSema3a阻害剤を含んだペレットを埋没する手技により、Sema3a阻害剤を角膜内で徐放的に作用させ、ペレット周辺におけるIVCMによる樹状細胞の経時的観察や免疫染色等で角膜局所における炎症メカニズムの詳細を解析する予定である。Sema3a阻害剤がGVHDマウスの全身に及ぼす影響に関しては、内服や静脈注射など、点眼とは異なる投与経路で実験を行い、皮膚や腸管など全身に及ぼす影響を確認する予定である。
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