研究課題/領域番号 |
21K09766
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56070:形成外科学関連
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
北口 陽平 岡山大学, 大学病院, 助教 (40897188)
|
研究分担者 |
森脇 健司 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (50707213)
岩井 良輔 岡山理科大学, フロンティア理工学研究所, 講師 (60611481)
太田 智之 岡山大学, 大学病院, 助教 (90869140)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
|
キーワード | 筋容積損失 / 筋肉再生医療 / 組織工学 / 再生医療 / 自己凝集化 / 三次元培養 / スキャフォールドフリー / 筋再生 / 培養筋組織 |
研究開始時の研究の概要 |
けがや手術などで筋肉が大きな損傷を受けた場合、うまく再生が行われず筋力の低下を起こし、日常生活への支障を生じる場合があります。この問題を解決するために培養した筋肉細胞を損傷した筋肉に移植する試みがなされています。しかし大きくて形のある培養組織を作るためには足場素材と呼ばれる人工物が必要で、これは移植後に異物反応を引き起こし体にうまくなじまない可能性が心配されています。私たちは足場素材を使わずに大きな培養組織を作成する技術の研究を行っており、この技術を用いて異物を含まない培養筋肉を作り出し動物の筋肉損傷した部分へ移植することで有用性を確かめるのがこの研究の目的になります。
|
研究実績の概要 |
本研究では独自の細胞自己凝集化技術(cell self-aggregation technique; CAT)を筋芽細胞に適応することにより足場素材を用いずに板状~バンド状の厚みを有した培養筋組織を作成し、筋再生の可能性を検討することを目的としている。 マウス筋芽細胞株(C2C12)を用いバンド状の凝集塊を作成する方法論の開発を行った。シリコーン製の培養枠を作成し内部にCATコーティングを施したのちに筋芽細胞を播種すると、接着、剥離、凝集が生じシリコーン枠の大きさにより10~20mm長のバンド状凝集塊を作成することができた。この凝集塊は生体由来コラーゲン膜上で培養を行うex vivo実験系によりコラーゲン膜への接着および筋管細胞への分化が可能であることが示唆されている。軟骨細胞や脂肪由来幹細胞などの他の細胞種でも同様にバンド状の凝集塊を作成することができるが、これらの凝集塊は構成する細胞種によって形状の維持しやすさが異なることが分かった。軟骨細胞では形状を維持したまま培養を継続することができるが筋芽細胞の場合はバンド状に凝集した後数時間で組織の収縮力により破綻することが分かった。このことから筋芽細胞バンドは作成後数時間以内に生体に移植する必要があると考えられた。また移植対象とするマウス筋容積損失(volumetric muscle loss; VML)モデルを作成するために免疫不全マウスを用い前脛骨筋の切除量の検討を行っている。切除量20%、50%、80%マウスを作製しており、今後組織学的および生理学的な解析を行う。解析結果に応じて適切な切除量のVMLモデルに筋芽細胞バンドを移植する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CAT法を用いることでマウス筋芽細胞C2C12をある程度大きさを制御してバンド状に凝集させる技術を開発した。このバンド状凝集塊は単独で培養を行うと組織の収縮力により数時間でちぎれてしまうが、血管内皮細胞や間葉系幹細胞と培養を行うことでことこれを軽減できることが示唆された。またその他の細胞種においても同様のバンド状凝集塊を作成することができ、軟骨細胞などの強固な細胞外基質を産生するような場合には形状を維持したまま培養環境下で組織化を行うことが可能であった。ここまでのバンド状凝集塊の作成方法や細胞種ごとの特性の違いについての知見を英語論文として報告している。(T Ota, et al., Fabrication of scaffold-free mesenchyme tissue bands by cell self-aggregation technique for potential use in tissue regeneration, Biomed. Mater. 17, 2022) 上記で作製した筋芽細胞バンドを移植するために免疫不全マウスを用いて前脛骨筋のVMLモデルの作成に着手している。適正な筋肉の切除量を検討するため各切除量ごとにサンプルを作成し切除後1か月および2か月で評価を行う予定としている。 以上よりR4年度に予定していた②板状筋組織の解析については組織解析やバンド状組織の特性についてある程度の知見が得られている。免疫組織学的解析については今後追加していく予定である。③板状筋組織のVMLモデルラットへの移植、組織解析は動物種をマウスに変更しVMLモデルの作成に取り組んでいる段階であり、今後適切なモデル作成後に移植実験へと移行する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
R4年度まででCATを用いてC2C12のバンド状凝集塊の作成方法を開発し、この組織の特性についての知見を得ることができた。またマウスを用いたVMLモデルの開発も進めており、適正な筋切除量を決定した後には筋芽細胞バンドの移植を行い、筋組織の再生の程度やメカニズムの解析を行う予定である。 また一方でより成熟した培養筋組織を作成するための試みも引き続き行う予定であり、3Dプリンターやシリコーン形成を応用することで専用の培養器作成を行う。また筋芽細胞に血管内皮細胞や神経細胞を混合することでより生態を模した高機能型の培養筋組織の作製にも取り組む。このような複合的な組織体をVMLモデルに移植することにより血管新生、神経再生を伴う効率的な筋組織の再生が得られることを期待する。 出来上がった筋組織および移植後の組織は、HE染色や各種免疫染色(Hoeschst、Phalloidin、Pax7、Tublin β Ⅲ、von Willebrand factorなど)を行い、筋組織の配向性や衛星細胞の分布、筋管細胞、神経、血管の形成、移植組織の生着、壊死、筋組織の量などの評価を行う。移植により得られた知見を培養筋組織作成にフィードバックすることでより効果的な筋再生を目指す。
|